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kiriの【R18】BL小説置き場

愛と、エロと、心理描写重視の大人BL。基本、ハピエン。男同士の性描写を含む恋愛話ですので、18才未満(高校生含)は、閲覧しないようにお願いします!尚、趣味の個人ブログですので、誹謗・中傷はお断り。こちらで判断次第削除します。

俺たちのままで 28

俺たちのままで

昼過ぎになって、実家を出た。

「帰りにスーパー行くわ」

隼が車を運転しながら言う。

「飯、食いに行ってもいいけど」
「いや、部屋でゆっくりしたい」
「そうか。じゃ、俺も一緒に行く」
「じゃ、Mスーパーまで行こう」

*

大型スーパーに着き、カートを押して二人で入る。

「何食いたい?」
「う~ん……」
「無いのかよ」
「じゃ、鉄板焼きで」

目の前に肉が見えて、そう答えた。

「この高いヤツ買っていい?」
「何でも買え」

ひひ……と変な笑いを零しながら、隼が牛肉を選ぶ。

普段、食費は隼が出してくれているが、たまに一緒に買い物に行く時だけは俺にこうやって甘えてくる。

隼が何かを強請るなんてことはないからか、俺はそんなことが嬉しい。

誕生日やクリスマスなんかも、何も欲しがらない。
……というか、当日はほぼすれ違いだ。

どれだけ稼ごうが、隼はあまり興味を示さない。
そこは男としてのプライドがあるのだろうけど……。

俺は、お前のために売れようと思ったんだ。
走り出してしまえばメンバーのことも、スタッフのことも、そこにくっ付いてきて、地を蹴る足に力が入った。

「酒、酒~」

今度はさっさと酒のコーナーへと歩いて行くから、その後をカートを押しながら付いていく。

「これ、これ」

ま~た嬉しそうな顔しやがって……可愛いな、このヤロウ。

「まとめて、あるだけ買えよ」

良い酒といっても、スーパーに陳列してあるのは酒屋の専門店にあるようなのじゃない。

「いやいや、あったらつい飲んじまうからな。たまに飲むからいいんだよ」

昔からそうだ。
良い物を欲しがるが、無駄な買い物はしない。

レジで金を払って、今度は俺が運転席に乗る。



途中で大きな公園が見えて、車を止めた。

「ちょっと公園寄っていいか?」
「え、なんで?」
「次の依頼曲のイメージ創りで時々行くようになったんだ」
「ふ~ん」

パーキングが無いので公園の横の広いスペースに路駐して降り、二人でベンチに座った。

「昔より人少なくないか?」
「まぁ、暑いからな」

小さな子供たちが遊んでいる姿が向こうの方に見える。

「いいな……こういうのも」

ボソッと隼が呟く。

「ん?」
「公園なんて、大人になっちまうと来ることないからな」
「小さい時は、お前に引きずられてきたぞ」
「家だと、お前はピアノばっか弾いてたろ。俺は外で遊びたかったんだよ」

そうだな……。
俺はいつも自分の世界に浸り込むようなガキだった。

「ピアノが終わったと思ったら、他の楽器。俺が一緒に居るのにだぜ?」

不満そうな顔で、幼い頃のことを言ってくる。

「だから、構って構ってはやとになったのか」
「……あほか」

フッと笑みを零してから、そうかもな……と呟く。

昨日見た幼い頃の動画を思い出していたら、隼が横で吹き出す。

「何だ?」
「昨日の動画」
「あぁ、俺も今、同じこと思い出してた」

二人で前を向いたまま笑う。

「お前も、他のヤツと遊べばいいのに」
「だよなー。今思うと」

でも俺達は、何故か毎日のように一緒に居た。

「お前なんか、俺がいなきゃ音楽オタクまっしぐらだ」
「本当だな」

隼が居なかったら外に出ることも少なく、俺は相当偏った人間になっていただろうと思う。
幼い頃、きょうだいの中で一番親父に似ていると母に言われたことがある。
それは容姿という意味じゃなく、入り込んでしまう部分のことだろう。

「理由なんか分かんねぇけど、お前と一緒に居たかったんだろうな……俺」

隼が俯いて話すが、幼い頃の自分を思い出しているのか、横顔は微笑んでいる。

お前は楽器にばかり触れている変な子供の俺の傍で、文句を言いながら。
俺も、文句を言って邪魔をするお前を面倒だと思いながら。

「俺が面倒臭がると、泣きべそかいてたよな」
「……嘘つけ」

嘘じゃないんだよ。
お前のその泣きべそで、俺はいつも一緒に公園に行った。

指を怪我するような遊びはするなと注意をされていても、それでも行った。
まぁ、末っ子の強みか何なのか、そこまで厳しくはなかったけど。

「そういや、思い出と言えば、悪役ばっかやらされてたっけ」

ボソリと言えば、隼が笑う。

「そりゃ、ヒーローやりたいじゃん。カッコイイもん」
「交代という選択も無かったな」
「お前、どっちでも良かったんだろーが。戦隊モノにも興味ねぇ、変なガキだったくせに」

まぁ、確かに。

そういうテレビも観ないガキだった。
クラスの奴らが話をしていても、あまり意味が分からなかったし。
なのに、お前にやらされる悪役を観るためだけに、テレビをつけた……。

だって、悪役やらないと泣きべそかくんだよ……お前。

やっぱり俺は、あの頃からお前には甘かったんだよなぁ……。

心でだけそう呟いて、くくっと小さく笑った。


「ガキの頃は、お前と一緒に居ることに何一つ疑問なんかなかった。一緒に学校に行って、一緒に帰って、遊んで……次の日も同じ」

隼の言葉に、勇次も当時を思い出す。

「喧嘩して、腹立って。迎えに行かないでいると、お前は休む」
「そこは迎えに来いよ」
「大抵はお前の我儘に俺がキレてたんだろうが」

俺が本気で怒ると、首を縮めて目をギュッと閉じていた隼が甦る。

「お前、怒ると人格変わるもんな」

酷い言い様だ。

「俺が人格変わるまで怒ってたのはお前くらいなもんだ」

他のヤツに、そこまで本気で腹を立てたような記憶はない。

「メンバーに、鬼だって言われてんじゃん」
「仕事は仕事だろ」

和気藹々でやって行けるようなレベルじゃなかったんだよ。

先にデビューが決まっていてのスタート。
その意味を芯から把握できていなかったメンバーたちは、テクニック云々よりもハングリー精神が欠けていた。
下手すれば、全てが流れる。

それがいつの間にか、バンドをしている連中が目指す本当の意味でのプロになった。

メンバー集めから始まって……あっという間に時間が経っていた。

その間に変化した、隼との関係。

あの焦れる気持ち。
互いに距離をはかりながら、純粋な幼馴染のままではもういられなくなっていたことにも目を瞑り続けた。

普段はそう考えることも無くなってきた色んな思いが、頭を駆け巡る。

音楽以外のことではあまり心が大きく動かない……そんな俺に、色んな感情を叩き込むようにしてきたのは、紛れもなく隼だ。


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俺たちのままで 27

俺たちのままで

和兄とのやり取りが終わった後、琴乃が今度は香苗を呼び出す。

「慎之介がデカいっ。あーもぉ~~可愛いかったのにっ。勇次みたいなっちゃって」

香苗は甥の慎之介を可愛がっていたから、大きくなったことにショックを受けている。

「そりゃ、成長するよ」
「はー、何かショック」

隼は「勇次みたいになった」と残念がる香苗の言葉がツボに入り、ゲラゲラと笑う。

香苗の息子も顔を出して来た。
末っ子の女の子はまだ赤ん坊から脱出したくらいで、クルクルの巻き毛が凄く可愛い。

「巻き毛が可愛いな」
「俺も巻き毛だぞ」

勇次が嬉しそうな顔だ……。

「お前のは、なんか違う」
「俺も伸ばしてロングにしたら、こうなるんじゃないか?」

ロン毛で巻き毛の勇次……。
想像して萎えそうになった。

「お前のは、多分上に伸びるから無理だな」

「勇次の頭はキノコか」

琴乃のツッコミに、隼がまた声を出して笑っていると勇次が香苗に呼ばれた。

今度チビたちを連れて日本に帰るから、自分もライヴに出してくれと言っている。

「オッケー」

琴乃が横で「軽っ」と、笑う。

『何も大きなステージじゃなくてもいいのよ。ライヴハウスとか、小さなハコでさ』
「何でだよ。でっかいハコで弾けよ」
「そーだよ、姉さん。兄貴も同じ時期に帰ってきたら、四人でステージ立てるかもなのに」
「お、それいいな」

きょうだい四人で、同じステージか。

スゲーよな。

皆、音楽で飯を食ってるプロフェッショナルなんだ。

琴乃が同じステージに立った時の客の喜びは凄かったと聞く。
大いに盛り上がり、雑誌でも取り上げられたらしい。

普段クラシックに馴染みの無い人達も、それを切っ掛けにコンサートに行ってみたという声がSNSでもたくさん上がっていた。

話しの続きを聞いていると、イギリスに行った時、和兄に客演を打診しようとしたがスケジュールが合わなくて断念したらしい。

「慎之介も、久しぶりにチェロ弾いてみる?」

琴乃に言われて、慎之介が首をブルブルと振る。

「無理無理!! お金取るステージになんか、到底出せるシロモノじゃなし」
「祖父ちゃんに特訓してもらえば?」
「なんでそうなるんだよ。俺、もう全然触ってないのに」

慎之介が「助けて」と小声で言ってくる。

あぁ、音楽の話で盛り上がると止まらないんだよ……この家族。
俺は慣れてるけど慎之介は今じゃ違う世界にいて、いきなりそこにブッ込まれても戸惑うよな。

「はーちゃん、ちょっと勉強教えて」
「いいけど」
「じゃ、勇ちゃんの部屋行こう」

腕を掴まれて、連れ去られるように勇次の部屋へ連れて行かれた。


「はー、ヤバかった」
「何も逃げなくても」
「音楽の話になると、止まらなくなんじゃん」
「知ってるのか」
「母さんが、笑いながら気をつけろって」

ほんと笑い事じゃないんだよと、俯く。

「俺、マジでS大行きたいの。だから祖父ちゃんの特訓受けてる暇なんか無い」

真面目な顔になって見上げてくる。

そうだよな。
受験は進路を決める一大事だ。

「そういや、バンドのメンバーの従弟もS大受けるはずだから、どっちも受かったら同じ学年だな」
「理工?」
「いや、建築。ま、どっちも倍率高いからな」
「合格して、何がなんでも上坂ゼミ!」

強気だなぁ……。

「頑張れ」

*

目が覚めて、違和感……。

首を上げると、その衝動で頭にズキリと衝撃が来る。

「…………っ」

顔をしかめて記憶を呼び覚まし、確か勇次の実家に泊まったことを思い出した。

自分の隣に寝ている勇次に、いつものように足を絡ませてくっ付く。

「……ん?」

目を覚ました勇次……と思っていた男は、慎之介だった。

「わっ!!」

驚いてすぐに離れると、慎之介は頭をボリボリと掻いて大きな欠伸。

「なんでお前が一緒に寝てんだ?」
「……え?」

首を傾げてから目を瞬かせ、こっちを見た。

「知らない。俺の方が先に寝てたんだけど」



…………あぁ。

そういえばこの部屋で勉強した後、俺はリビングに降りて行き、そのまま皆で酒を飲み始めたんだったっけ。
慎之介は、風呂に入って寝るとかなんとか言ってたような……。

酔って記憶が曖昧だ。
こんなことは滅多にないのに、飲み過ぎてしまった。


じゃ、勇次は?


起き上がって部屋を見ると、床に転がっていた。

*

勇次を叩き起こし、シャワーを借り、コーヒーを淹れる。

コーヒーを飲んでいる内に、だんだんとスッキリとしてきた。

「おはよう」

そこへ勇次の父親が起きてきた。

「隼、コーヒー淹れてくれ。それとパンも」
「いいよ。じゃ、俺らも食ってくわ」

パンとコーヒーを用意して目の前に置けば、息子と並んで座って黙々と食べている。

寝ぐせのついたままの、真っ白な髪。

勇次も年を重ねたらこんな風に、髪が真っ白になるのかな。

なるよな……。
それが自然に年を重ねるということだ。

その隣に、変わらずに居たい。

「はやとは、夏休み中か」
「学校は夏休みだけど、俺達教師は毎日行ってるよ」

今日から夏季休暇だけどね。


夏休みに何をするんだと問われ、説明すれば目を丸くする。

「そんなに忙しいのか」
「うん」
「しかし……ヤンチャだった隼が先生とはな」
「それ、よく言われる」

ははっ……と笑って、優しい目で頷かれた。

「あ、俺も!」

そこへ慎之介がシャワーから出てきた。

「パンとコーヒーしかないぞ」
「何でもいい。腹減った~」



勇次を真ん中に、おじさんと慎之介が両脇。

なんだか年代別の勇次だと思えて、小さく笑いが漏れる。

「なに?」

慎之介が気づいて問うてくる。

「いや、血が受け継がれてんだな~と」
「あ、ココ。ココに父さんがいたら、ズラーッと並ぶ」

後ろから手を伸ばして、おじさんと勇次の間に手を入れるから想像してしまって、コーヒーを吹き出しそうになった。


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俺たちのままで 26

俺たちのままで

「ちょっと、俺の存在忘れてない?」

向かいでおばさんと話しをしていた慎之介が拗ねたように声をかけてきた。

「お前、今おばさんと話してたろ」

「S大の上坂教授って、どんな人?」

慎之介が目を輝かせて聞いてきた。

「変人かな」
「あ、何となくイメージ通り」
「俺はゼミも上坂教授だったから」
「うわっ。俺もそのゼミ入りたいっ」
「その前に合格しろよ」
「浪人しても入るよ」

S大は学部によるが、内外に有名な教授が居ることで人気がある。
その中でも上坂教授は本もたくさん出していて、直に学びたい生徒が集まってくるのだ。
俺も、その一人だった。

人気なだけに研究に対する予算もあり、贅沢な環境だったと振り返った今思う。

慎之介の矢継ぎ早の質問責めに答えながら、当時が甦ってくる。

レポートや課題、徹夜、学会の準備……。
特に論文に関しては、徹底して上坂流を学んだ。

近い内に、また本屋で教授の本を買いに行こう。
多分、内野も買ってる。
同時に、あのコウタの真っ直ぐな目も思い出す。

「大学に合格しても上坂ゼミの倍率は高いぞ」
「だよなぁ……」

コテンと額をテーブル当てて突っ伏す。

「けど、お前実家遠くないか?」
「うん。だから合格したらここに住む」
「……マジか」
「マジ。勇ちゃんの部屋にね」

ここからでも近いとは言えないが、充分通学範囲内だ。
なのに俺は、親父と顔を合わせるのが嫌だという理由で一人暮らし。

あの頃の俺は、理解してくれない親父を悪者にして、それを盾に我儘を通した。

自分のことで頭がいっぱいだったんだよなぁ……。

親だって子供を育てなから親になって行くのだという言葉があるが、教育という現場に居れるとそれは強く感じる。

「だから、はーちゃんも時々はココに顔出してよ」
「合格する気満々か」

隼が笑えば、ニッとして肩を竦める。

うわ……ニッとする顔が、やっぱり勇次っぽい。
ついつい顔をジッと見てしまう。

「勇次に似てると思ってんでしょー」

琴乃が横から笑う。

「勇ちゃんじゃなくて、親父だって」

慎之介も笑う。

「いやいや、根源はあそこに居るんだぞ」

勇次の母親が顎で、おじさんの方をさした。
が、何かに没頭して気がつきもしない。

「見てよ……。自分の世界に浸りきって、周りが見えない持田家の男たち」

おばさんが、おじさんと勇次の方を交互に見る。

「そういえば、母さんが父さんのこと同じように言ってた」

慎之介が言えば、皆がフッと笑った。

*

勇次の家のリビングで、団らんともいうべきひと時。

「慎之介、パパ」

横でパソコンを弄っていた琴乃の声に画面を覗くと、慎之介の父であり、勇次の兄が写っていた。

「あ、父さん」

慎之介が琴乃と席を代わり、画面をのぞき込む。

『元気か?』
「うん。父さんも?」
『あぁ、元気だ。冬に一度、日本に帰るって言ったろ? 久しぶりに美味いもんでも食いに行こう』
「やった」

久しぶりの親子の会話なのかと思っていたら、時々はスカイプ経由で話をしているらしいことが会話で伝わってきた。

「受験終わったら、そっち行こうかな」
『あぁ、来い。功史朗も、琉美も喜ぶ』
「俺のこと、忘れてないかなー」
『お前はお兄ちゃんだ。忘れるもんか』

幼い頃に離婚して離ればなれで、違う国に暮していても、親子の絆のようなモノを感じる。

『皆、居るのか?』

五分程話をした後に、和兄がそう聞いてきた。

「居るよ。勇ちゃんも、はーちゃんも」

隼が横からぬっと顔を出すように画面をのぞき込む。

「和兄。久しぶり」
『はやとか? 大人になったなぁ……』

目を丸くして驚く顔は、昔とあまり変わらない。
けど、目尻にはシワが見える。

甘い目のマスクは、年と共に魅力を増すタイプだよな。

……十年後の勇次が想像できる。

『やんちゃして、もうビービー泣かないか』
「泣いてねーし」

『勇次と仲良くしてるか?』

……だから。
何でそんなこと、皆の前で訊くかな。

「……まぁ」
『あいつ、今も楽器ばかり弄ってんだろ?』
「それが仕事だし」
『そこに居るのか?』
「居るよ。ゆーじ!!」

勇次を呼んでも、ヘッドフォンをしていて気づきもしない。

立ち上がってヘッドフォンを取ると、驚いた顔で後振り返る。

「和兄」
「え?」

いいから、と腕を掴んで立ち上がらせて連れて行く。

「あ、兄貴」
『おー、勇次。久しぶり』

兄弟で会話をしているのを見ながら、顔が綻んでくる。
やっぱり勇次は弟なんだな……と思って。

もう四十代になる和兄から見れば、勇次はやっぱりまだ若造って感じがする。
まぁ、俺もだけど。

一回りも違う和兄は凄く大きくて、何でもできて、カッコ良くて、優しくて、よく抱っこしくれて……とにかく、大好きだったんだよな。
末っ子の勇次を可愛がっていたし、何より幼い勇次に色んな楽器を触らせて影響を与えた人だ。

「今度行くわ。隼連れて」

勝手に連れて行くとか言ってるし……。


次におばさんに代わり、おじさんも強引に連れてこられて、家族で離れた国に居る長男と繋がっている。
持田の家から離れてしまった慎之介も、一緒に。

その中に自分が居ることに、隼はジワリ……と幸せな気持ちが湧き出てくる。

「どした?」

勇次が顔を覗き込んでくるから、思わず体を退いた。

「近いっ」
「何でだよ。いつもと一緒だろ」
「……ここ、お前の実家」

小声で言っても、首を傾げる。

「皆、知ってるのに?」
「そういう問題じゃない」
「照れてんのか?」
「あほか」

小声でボソボソと二人で話をしていると、視線を感じた。

「イチャついてる」

慎之介と琴乃がニヤニヤとしてこっちを見ていた。


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俺たちのままで 25

俺たちのままで

隼が勇次の家に行くと、おばさんが出てきた。

「いらっしゃい。遅かったわね」
「母さんと飯食ってて」
「やっぱり」
「これ、イチゴ」
「あ。大阪の伯母さんからの?」

そういえば、昔はよく持ってきたっけ。

「隼……大人になったねぇ」

しみじみと言われて、首を傾げる。

「今更?」

ちょこちょこ会ってんのに?と思ったが、おばさんはそのままリビングへ向かう。


扉を開けた瞬間、皆が一斉にこっちを見る。

え……何?

「勇次が悶えて気持ち悪いんだけど」

琴姉が苦笑いしながらそう言った。

勇次が悶えてる?

眉をしかめて部屋を見渡せば、ソファーの一番奥でクッションに顔を埋めていた。

何やってんだ?

「はやと」

後ろから声がしてギクリ……。
勇次はそこにいるのに、声が同じだからだ。
隼はゆっくりと振り返る。

「俺、慎之介」

……うっそ。

「久しぶり~、はーちゃん」
「……久しぶり」
「え、何? その反応」
「いや……勇次が若返ったのかと思って」
「勇ちゃんの真似してみたの成功」
「声がそっくりだ」
「うん、電話越しだともっと似てるって言われる」

顔の造りがどうこうではなく、声と全体的な雰囲気や髪の感じが勇次に似てる。

「お前、俺よりデカくなってないか?」

目線が少しだけ上にある。

「あー、百八十は超えた」
「恐るべし。持田の遺伝子」
「あはは」



「隼」

部屋の隅からまた似た声がしてみると、勇次の親父さんだ。

「おじさん、居たんだ」

滅多にいないから、驚いてしまった。

「学校の先生、頑張ってるのか?」
「あ、うん」
「ストレス溜まるだろ?」

え……おじさんがそんな質問?

「そりゃ溜まる」
「うちの楽団にも、元教師がいるんだ」
「うん」

次の言葉を待ったが、無し。

出たよ……。
いつもの調子に可笑しくなった。

挨拶もなく会話が始まり、終わった。
今更「久しぶり」というのも何だし……と思っていると、慎之介が大学の話を聞かせてくれと言ってきた。

「はやとっ」

なのに、今度は向こうから勇次がこっちに来いと手招きする。

「何だよ」
「いーから、来いって」

慎之介に「ちょっと待て」と声をかけて勇次の傍に行くと、ノートパソコンを指さす。

何かと思うと、小さい頃の自分が映っていた。

「うわ、何見てんだよ」
「慎之介の小さい頃のを探してたら、お前が出てきて」

映像の中の自分は酷く小さくて、隣に一緒に居る勇次と同学年には到底見えない。

ノートに音符を書いている勇次の横で絵本を読みながら、体重をかけてもたれかかっている自分。
見ていると、俺に構えとばかりに集中している勇次の邪魔をし始めた。

邪魔をしているのにビクともしない勇次の背中から乗っかって、肩越しにノートを覗き込んでいる。

「まだ?」
「もうちょっと」
「はやくー」
「うん」

うげ……。
何かもう、見てられない。

「やめろよ、もう」
「もうちょっと」

さっきの小っこい勇次と同じセリフに、ちょっと笑えた。

画面の中の自分は、勇次にくっ付きまくってる。
その勇次はこんな時から飄々としていて、動じてない。

その内、体重をかけすぎて、勇次が前のめりに潰れてしまった。
デカいと言ったって、子供だ。

……勇次、可愛いじゃん。
今じゃ、そうそう潰れたりしないもんな。

俺に潰されてるのに、小さい勇次が笑ってる。
そして俺も笑ってる。
撮ってるおばさんらしき人の笑い声も入ってる。

画面の中の勇次は可愛いが、横に居る大人になった勇次は……ニヤニヤして気持ち悪い。

「お前、キモい」
「コピーして帰るわ」
「は? なんで」

ニヒヒと変な笑い顔で、パソコンにUSBをさした。

「はーちゃん。勇ちゃんとは毎日一緒じゃん。俺の相手してよ」

慎之介に言われて、勇次を睨んでからテーブルに座る。

「はい、隼の家からもらったイチゴ」

「わ、出た!! 高級イチゴ!」

琴乃が隣に座って、一つ摘まんだ。

「こーいうのって、自分で食べるためには買わないもんね」
「甘っ」
「デカいな」

皆でワイワイとイチゴを食べているのに、勇次はヘッドフォンをつけてリズムに乗りながら何かをしている。
それを家族の誰もが突っ込まない。

おじさんも、向こうの小さなテーブルの方で真剣な顔で何かを書いていた。

あぁ……勇次の家族だ。

小さな頃から、持田家はこんな感じだった。

各自、自分の世界を持っていて、何かに集中し始めると放置。


その中に幼い頃から時々は身を置いて、今も変わりなく過ごしている。

自分がゲイだと気付いた後、この家で過ごすのが少し辛かった時期があったのに。

これからもこうやって、持田家の中に居ることが出来ますように……。

祈るように心で思い、指輪に触れる。

「その指輪、恒川デザインだったよね」

琴乃が気付いて訊いてきた。

「そうだよ」
「硬質でカッコイイ。やっぱ男のデザインだね」

手ごと掴まれて、ジッと眺める。

「頑丈そう」
「うん。一番頑丈なのをって頼んだから」

何それ?と、琴乃が目を剥いた。

「女だったら、そーいう頼み方しないわよ」

そうか……なるほど。

「今、イタリアだっけ?」
「うん」

あぁ、そういえば……。

隼が携帯を取って、前に篠原が送ってきた画像を探して見せる。

「わ、カッコイイ」

画像の中の恒川は、頭にバンダナを巻いて首にタオル、そしてツナギを着て何かの作業をしている。
その姿はいつもの中性的な雰囲気を払拭して、男っぽい。

向こうのアートスクールの生徒が合同で作品を創っている最中の動画らしく、篠原が撮って送ってきた。

だんだんアップになってきて、真剣な表情をとらえている。
額に浮かぶ汗と、長くて真っ黒な睫毛がアンバランスで目を惹く。

篠原さん、どんだけ好きなんだよ……と送られて来た時に、ツッコミんだ。

「上品で儚げなイメージだったけど、勇ましくてカッコイイ。仕事してる男って、キュンキュンくるわ」

いや、これは多分仕事じゃないけど……と心で思ったが、多分本当の仕事の時もこんな感じなんだろう。

「日本に帰ってきたら、琴姉も何かつくってもらえば?」
「そうね」

フフッと微笑んで、またイチゴを摘んだ。



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俺たちのままで 24

俺たちのままで

「慎之介。S大の理工って浪人率高いらしいけど、どうなの?」

琴乃の問いに、A判定をもらってるのだと答える。

「じゃ、現役合格ラインってことか」
「ま、頑張るよ。てかさ、はーちゃんまだ? 俺、話聞きたいのに」
「実家で飯食ってんだろ」

その時、慎之介の携帯が鳴った。

「彼女?」
「残念ながら、男のダチ」

電話に出て、親しげに話し始める。
長くなりそうなのだろう、手を上げてリビングから出て行った。

「若いなぁ」

琴乃がその後ろ姿を眺めて、しみじみという。

「あんただってまだ若いでしょ」
「母さんから見ればね」
「大きくなってビックリしたぞ」

父が今更なことを言うが、いつものことで誰も突っ込まない。

「父さんが最後に慎之介に会ったの、いつ?」
「……小学校か?」
「何で俺に訊くんだよ」

勇次が眉をしかめても、父はう~ん……と考えている。

なんせ、一年中楽団と共にあっちこっち移動してる人だ。
家族と居るより楽団員と一緒に過ごす時間の方がずっと長い。

「慎之介の小さい時のビデオあったわよね。ほら、イギリスに居た和に送るのに撮ったのが」

母がリビングのソファー前にあるノートPCを弄り出した。

そういえば、家は写真よりビデオを良く撮っていた。
レッスンの演奏を録って後で確認するためと、離れて暮らすことの多かった家族に送るには動画の方が喜ぶからだろう。

「琴乃。どれだったっけ?」
「もー、自分のパソコンでしょ。ほんと、整理するのが苦手なんだからっ」

琴乃がブツブツ言いながら、探し当てたようだ。

「え、これ……隼だ。やだ……泣いてる。可愛い~」

その声で、勇次が飛ぶようにソファー前に行った。

「慎之介の探してたのに、遡りすぎちゃった」

止めようとする琴乃の手を退け、パソコンごと自分の方に向けた。


「ちょっとー、何よ」

母と琴乃が文句を言うが、勇次は気にとめずにパソコンの画面に見入る。

そこには隼が香苗にほっぺたをブチュッと吸われていて、ビービー泣いている姿が写っていた。

「ゆーじぃ~~」

泣きながら自分を呼んでいる。

香苗が泣いている隼を抱き上げて、しつこくほっぺにスリスリ……。
隼が物凄く嫌がって身を捩っているのを、俺が手を引っ張って助けようとしている。
……が、中学生くらいの姉に敵う訳もない自分達がそこに居た。

「香姉……鬼畜」

横にいる琴乃がボソリ。
香苗は隼が嫌がってるのに、ニヤニヤと笑いながら抱いて降ろさない。

「琴乃だって、同じようなことやってたくせに」
「いや、私は姉さんほど鬼畜じゃないわよ。それに、あんたより隼の方が反応するんだもん」

そういえば、前も同じようなこと言ってたような……。

「あはは、この勇次見て?」

母が笑うから画面を見れば、香苗から隼を助けようと足元でピョンピョン跳ねている自分が居た。

「こういうの見ると、勇次も可愛いわね」

そうだろう。
俺も自分で思う。
画面の中の俺は、泣いている隼を助けようと必死で可愛いじゃないか。

次に画面が変わり、兄と自分がギターで遊んでいる場面に変わる。

「ほら、ここ押さえてこっちの指で弾くんだ」

兄が弟の俺に弦の押さえ方を伝授している。
手が小さくて、兄の言うとおりにできないのに頑張ってる。

「母さん、時系列バラバラで繋いでるじゃない。この勇次、さっきより小さいよ」
「いいじゃない。和は、勇次よくと楽器で遊んでやってたもんね」

うん。
ギターやドラム、とにかく音の出るモノを、物心つく前から兄に教えてもらった。

次の画面は、兄が一人でギターを弾きまくってる。

「兄貴、ギター巧いな」
「そうよ。一時、ギタリストになるとか言い出して」

へぇ……そんな時があったのか。

「長男だから、いいわよとは言えなかったわね」
「次男で良かったわ、俺」
「あんた、小さい時から曲ばっか作ってたしね。まぁ、何かしらの予感はあったのよ」

ふーん。

「あの焼き芋の歌は笑ったわ~」
「あぁ、変換して作ったやつでしょ」
「なんか変な題名ばっかりだったから」
「そうそう」

二人が勇次が子供の頃に作った曲を色々と思い出して笑っているが、当の本人はマウスで早送りして、隼を探す。

「何、早送りしてんの」
「慎之介の探してんのに、後で見なさいよっ」

また横で母と琴乃が文句を言うが、無視。


……あった。

隼と一緒に風呂に入ってる映像が出てきた。

「ゆーじ、アイス食べる?」

風呂の中で隼が、風呂から上がったらアイスを食べるのかと聞いている……だけで、可愛い。
あの公園で会ったフウタくんが一瞬浮かんだ。

「食べる」
「俺、桃のがいいっ」

自分が食べたいのを決めていて、俺に取られる前に先回りして宣言。
年の近い兄弟の真ん中っ子の隼と、末っ子といえど他のきょうだいとは少し年が離れている俺との違い……かな。

「隼は桃好きだね~」

ムービーを撮っているのは母のようで、クスクス笑っている声が入っている。

「すきー」

画面に向かって言う隼の顔がまた嬉しそうで……。

「あー、もうっ」

勇次が傍にあったクッションを抱いて、ゴロッと倒れた。

「……やだ。悶絶してんの?」

琴乃が体を退いた。

次に自分で体を拭いている二人の画面。

小っせー、ちんこ。

「ゆーじ、ここちゃんとふくねんで?」

隼が耳の後ろをタオルで拭くのだと、俺に教えている。
小さい隼はイントネーションが、関西弁だ。
幼稚園で、からかわれてたもんな。

「隼はかしこいねぇ」
「俺も、お兄ちゃんみたいにいっぱい勉強するねん」

母と隼の会話をしている横で、俺は黙々と隼に言われた通り耳の後ろを拭いている。

「そっかー。隼もパパみたいにお医者さんになるの?」
「ううん、メガレンジャーになるっ。めっちゃ強いねん」

裸でバンザイをして、足を広げて……ちんこ丸出しで、自分を大きく見せようとしてる。

「すごーい、隼」

母がノせると、ニーッと笑う顔が……。

はー……堪らん。

ぐふふ、と思わず声が漏れると、琴乃が更に体を退く。

「お父さーん。弟が気持ち悪いんだけどー」

向こうに居る父に言うが、父は顔を上げただけでまた何かに没頭した。

「ちょっと、あんたショタ?」
「うるせ。穢すようなこと言うな」

こんな天使のような隼をどうこうなんか、有り得ないだろ。

「お母さーん。弟が生意気ー」
「あんたも何、ノッってんの」

姉弟を見て、母が笑いながらそこを離れた。


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