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視線が追う先に
13-【信史15歳/8月③】
二人で連れ立って電車に乗って出かけるのは、初めてだ。
「デートみたいだな」
……なんて。
ちょっとした言葉で反応を見てみる。
「デート? なに言ってんだ。男同士で」
もれなく、まともな答えが返ってきた。
しかし……。
電車の中でも、電車を降りてでも、自分達に目線がチラチラと浴びせられる。
信史は気付いていても、秋也は全く気づいてない。
学校でも二人の苗字を取って「37コンビ」と、女子達が陰で名付けているのも知らない。
信史自身は、自分達が他人の目にどう映ってるのかは感知してる。
「なー、俺もう腹へったんだけど」
色々と頭を巡らせて考えている信史をよそに、秋也が甘えた声で肩をぶつけてくる。
身長がほんの数センチの違いのせいで、秋也の顔がすぐ傍にある。
色気より食い気なんだよな、いつも。そう思いつつも、ドキッとする。
「来る前に食ってないのか?」
「食った。でも、腹減った」
細いくせに、よく食べる。
「しょーがねーな。何食う?」
「チーズバーガー」
ニマっと笑って、また肩をくっ付けてくる。
あぁ……可愛い。
こいつが女だったら、そう口に出して言えるのに。
目の前の秋也に、間違っても「可愛い」なんて言えば殴られそうで言えない。
*
「ホント、お前美味そうに食うよな」
大口をあけてバーガーにかじり付く秋也に 半ば呆れたように言っても「うめーもん」と嬉しそうだ。
店を出ると、すぐに女の子の二人連れが声をかけてきた。
逆ナンという奴だ。
高校生らしいから年上だろう。
信史は普段から中学生には見られないが、秋也は年相応のはずなのに。
「ゴメン。俺ら中三の受験生で、これから問題集買いにいくとこだから」
手を振ってあしらう。
「なんか、慣れてんな」
軽く睨むような目をして、また肩をぶつけてくる。
もー……こいつ、可愛い。
顔が緩みそうになる。
「何、ニヤけてんだよ」
又、睨みつけてくる。
……これって、嫉妬だろうか?
自分の都合のいい方に思考が行ってしまって、自嘲の笑みがこぼれた。
*
本屋で、去年の問題集を選びレジで並ぶ。
「し~んじっ」
いきなり後ろから肩を叩かれた。
振り返ると、他の中学の青山礼菜だ。
「何してんの?」
見ればわかるだろうと、無言で問題集を見せる。
「ぎゃっ、受験生してんじゃん」
「うるせ」
ウザいので、無視することにした。
「あれ? 信史の連れ?」
今度は秋也に、馴れ馴れしくも声をかけている。
わざと体をくっ付けて。
……こいつはいつもこうだ。
「いや~ん。超、美形じゃんっ。礼菜のタイプ~」
胸を強調してブリっこまでしてやがる。
「ヤメろよ」
思わず、大きな声が出た。
「やだ……。信史怖い~」
怯える真似をして、秋也に体を預けるように密着させて行く。
何が怖いだ。
不純異性交遊の塊女が。
「とにかく、離れろって!!」
ついカッとなって、礼菜の腕を引っ張って引き剥がした。
七原に触るな!
……と、声に出そうだった。
「ちょっ……痛いって、信史。マジで」
礼菜がちょっと本気で憤慨しているのも気にせずに、レジから離れて隅の方へとつれて行った。
「何よ。三年になったとたん、受験に目覚めたっての? 付き合いも、バッサリだし」
……あぁ、怒らせちまった。
――面倒臭い。
見た目が可愛いから、何度か付き合っただけなのに。
秋也が何事かと、信史の傍に来た。
「紹介してよ」
ブッとした顔のまま、秋也の方を顎で示して催促する。
「いいだろ、別に。俺のダチだし。お前には関係ねーじゃん」
こんな性悪女に、秋也を紹介などしたくない。
「何でよー。カッコいいんだもん。礼菜、デートしてみたい」
口を尖らせてブリっこする姿が忌々しい。
「俺、七原秋也。よろしく」
無垢な秋也が、性悪女の礼菜に握手を求める。
あぁぁ……、触るな!
「もういいだろっ」
衝動を何とか堪えて、秋也の肩を抱いて引き剥がしに成功した。
「もーー何よーーーー!」
後ろで礼菜が叫んでいる。
その上、性懲りも無く追いかけてくる。
「信史ってばっ!」
よほど、秋也が気に入ったのだろう。
どうせ連れて歩くと自慢出来るからとか、そーいう理由だ。
「もうっ!」
急ぎ足で去ろうとしている背中に、礼菜の怒号と共に何かがぶつかった。
振り返って落ちたモノを見ると……。
小さな正方形の箱。
「あ……っ」
思わず声に出たが、行動は秋也の方が早かった。
落ちたモノを手に取り、眺めている。
ヤバい。
躊躇なく、すぐ目の前にきた礼菜に「はい」と手渡す。
「いいの。これ信史の忘れ物だから」
ニヤリと悪意のある笑顔で信史を見た。
手に取った箱をどっちに渡そうかと、躊躇している秋也に微笑みかける。
「それ、コンドーム。六個入ってて、あと四個残ってるよ。信史に、返すね」
それだけを言うと、信史にベーっと舌を出して、逃げるように去って行った。
やってくれた……。
信史は、これまで自分のしてきたことを呪った。
別に他の奴なら、何てことはないのだ。
ある意味、自慢にさえなるかもしれない。
礼菜は見た目だけは、可愛い。
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「デートみたいだな」
……なんて。
ちょっとした言葉で反応を見てみる。
「デート? なに言ってんだ。男同士で」
もれなく、まともな答えが返ってきた。
しかし……。
電車の中でも、電車を降りてでも、自分達に目線がチラチラと浴びせられる。
信史は気付いていても、秋也は全く気づいてない。
学校でも二人の苗字を取って「37コンビ」と、女子達が陰で名付けているのも知らない。
信史自身は、自分達が他人の目にどう映ってるのかは感知してる。
「なー、俺もう腹へったんだけど」
色々と頭を巡らせて考えている信史をよそに、秋也が甘えた声で肩をぶつけてくる。
身長がほんの数センチの違いのせいで、秋也の顔がすぐ傍にある。
色気より食い気なんだよな、いつも。そう思いつつも、ドキッとする。
「来る前に食ってないのか?」
「食った。でも、腹減った」
細いくせに、よく食べる。
「しょーがねーな。何食う?」
「チーズバーガー」
ニマっと笑って、また肩をくっ付けてくる。
あぁ……可愛い。
こいつが女だったら、そう口に出して言えるのに。
目の前の秋也に、間違っても「可愛い」なんて言えば殴られそうで言えない。
*
「ホント、お前美味そうに食うよな」
大口をあけてバーガーにかじり付く秋也に 半ば呆れたように言っても「うめーもん」と嬉しそうだ。
店を出ると、すぐに女の子の二人連れが声をかけてきた。
逆ナンという奴だ。
高校生らしいから年上だろう。
信史は普段から中学生には見られないが、秋也は年相応のはずなのに。
「ゴメン。俺ら中三の受験生で、これから問題集買いにいくとこだから」
手を振ってあしらう。
「なんか、慣れてんな」
軽く睨むような目をして、また肩をぶつけてくる。
もー……こいつ、可愛い。
顔が緩みそうになる。
「何、ニヤけてんだよ」
又、睨みつけてくる。
……これって、嫉妬だろうか?
自分の都合のいい方に思考が行ってしまって、自嘲の笑みがこぼれた。
*
本屋で、去年の問題集を選びレジで並ぶ。
「し~んじっ」
いきなり後ろから肩を叩かれた。
振り返ると、他の中学の青山礼菜だ。
「何してんの?」
見ればわかるだろうと、無言で問題集を見せる。
「ぎゃっ、受験生してんじゃん」
「うるせ」
ウザいので、無視することにした。
「あれ? 信史の連れ?」
今度は秋也に、馴れ馴れしくも声をかけている。
わざと体をくっ付けて。
……こいつはいつもこうだ。
「いや~ん。超、美形じゃんっ。礼菜のタイプ~」
胸を強調してブリっこまでしてやがる。
「ヤメろよ」
思わず、大きな声が出た。
「やだ……。信史怖い~」
怯える真似をして、秋也に体を預けるように密着させて行く。
何が怖いだ。
不純異性交遊の塊女が。
「とにかく、離れろって!!」
ついカッとなって、礼菜の腕を引っ張って引き剥がした。
七原に触るな!
……と、声に出そうだった。
「ちょっ……痛いって、信史。マジで」
礼菜がちょっと本気で憤慨しているのも気にせずに、レジから離れて隅の方へとつれて行った。
「何よ。三年になったとたん、受験に目覚めたっての? 付き合いも、バッサリだし」
……あぁ、怒らせちまった。
――面倒臭い。
見た目が可愛いから、何度か付き合っただけなのに。
秋也が何事かと、信史の傍に来た。
「紹介してよ」
ブッとした顔のまま、秋也の方を顎で示して催促する。
「いいだろ、別に。俺のダチだし。お前には関係ねーじゃん」
こんな性悪女に、秋也を紹介などしたくない。
「何でよー。カッコいいんだもん。礼菜、デートしてみたい」
口を尖らせてブリっこする姿が忌々しい。
「俺、七原秋也。よろしく」
無垢な秋也が、性悪女の礼菜に握手を求める。
あぁぁ……、触るな!
「もういいだろっ」
衝動を何とか堪えて、秋也の肩を抱いて引き剥がしに成功した。
「もーー何よーーーー!」
後ろで礼菜が叫んでいる。
その上、性懲りも無く追いかけてくる。
「信史ってばっ!」
よほど、秋也が気に入ったのだろう。
どうせ連れて歩くと自慢出来るからとか、そーいう理由だ。
「もうっ!」
急ぎ足で去ろうとしている背中に、礼菜の怒号と共に何かがぶつかった。
振り返って落ちたモノを見ると……。
小さな正方形の箱。
「あ……っ」
思わず声に出たが、行動は秋也の方が早かった。
落ちたモノを手に取り、眺めている。
ヤバい。
躊躇なく、すぐ目の前にきた礼菜に「はい」と手渡す。
「いいの。これ信史の忘れ物だから」
ニヤリと悪意のある笑顔で信史を見た。
手に取った箱をどっちに渡そうかと、躊躇している秋也に微笑みかける。
「それ、コンドーム。六個入ってて、あと四個残ってるよ。信史に、返すね」
それだけを言うと、信史にベーっと舌を出して、逃げるように去って行った。
やってくれた……。
信史は、これまで自分のしてきたことを呪った。
別に他の奴なら、何てことはないのだ。
ある意味、自慢にさえなるかもしれない。
礼菜は見た目だけは、可愛い。
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Re: NoTitle
Rin様
この子が実は、愛のキューピット♪
信史も、どーしてイイやらわかんなかった時期だしね。
しかし…ゴムの箱見て固まってる秋也。
可愛い…中学生の秋也。萌え…
この子が実は、愛のキューピット♪
信史も、どーしてイイやらわかんなかった時期だしね。
しかし…ゴムの箱見て固まってる秋也。
可愛い…中学生の秋也。萌え…
- #6025 kiri
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- 2012.09/18 23:59
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ぎゃーーーっ『出たっ』でたよ礼菜ッ((´∀`*))ヶラヶラ
いまだから笑えるけどちょっとムッちしたの覚えてる。でもこん時は恋人同士じゃなかったから、黒† Rin †は降臨しなかったな。
あーあ信史やっちゃったなぐらい(゚m゚*)プッでも礼菜のおかげで秋也も気にし出すんだからある意味キューピットだよねー。最悪のだけど(笑)女ってスゴイよねー。ああ、次が楽しみニヤリ_φ(≖ω≖。)♪