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「●洋平と明良☆番外編」
欲しかった言葉

欲しかった言葉 3

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スクールの帰りに、明良が友人を連れて店に食事に来た。
明良は店のメニューのクルミ入りサラダが好きで、それが目的で食べに来る。

今日の夕食は家に帰ってから一緒にとるから、サラダとバケットだけだ。
明良の友人のナディアは一人暮らしだから、しっかりと食べる。
セコンドピアットのローストスペアリブをテーブルに直接持って行くと、ナディアが大喜びで明良に一つ食べろとすすめるが、本人が首を振った。

だからあなたはそんなに細いのだと色々言われながらも、明良はサラダを食べながら肩をすくめる。
どこに行っても、こうやって誰かに世話を焼かれるんだよなぁ……。

なんせ、日本人特有の恐縮するというのが無いんだよ。
堂々と甘やかされている。

「大丈夫。僕が家でしっかり食べさせてます」
洋平がそういえば、あぁそうだったとばかりにニコニコ顔だ。

「今日、早番だろ?」
「うん。待ってる?」
「ん」

その問いに、明良が子供のようにコクンと頷く。
こういう仕草が、一々可愛いんだよな。

高校生の頃から変わらない。
いや……年を重ねた分、ギャップ的に可愛さ倍増かも。

そんなことを考えながら厨房に戻ると、ドルチェを作っているフィリッポに冷やかされた。

この間まで東洋人と同性愛嫌悪のマルコが居て、こんな冷やかしはなかった。
ガスパロの手前、表立っては批判しなかったが、陰で色々と言われていたのは知っている。

人種差別や性差別は、どこにだってある。
個人の嫌悪感はその人のモノだ。
実害がない限り、そんなことを気に病むようならここには来ない。

だがそのマルコも、明良に冷たい目でジッと見られると下を向いたっけ。
マルコが直接明良に何かを言ったわけでもなく、洋平だって嫌悪されてるなんてことわざわざ口にはしない。

けどあの人って、そういう嫌悪を示す人を敏感に感じ取るんだ。
そして、こんな異国に来ても変わらず……女王様。

洋平はメカジキに包丁を入れながら、明良の冷たい視線を思い出し小さくブルッと肩を竦めた。

*

「もういらない」
「半分しか食べてないよ」

サラダとバケットでお腹が膨れたのだとブツブツ。

「じゃ、明日のお昼に食べて」
「はーい」

洋平がブッと吹き出すが、明良はパソコンに見入っている。

「洋平……」
「ん?」
「日本から、お客さんが来る」

パソコンの画面を見たままの明良に、洋平が横に回って画面を覗き込んだ。

「この人が?」
「そう」

その画面には、優しい風貌の自分たちと同じ年代であろうかと思われる男が映っていた。

「ちょっと明良さんに似通ってる感じ?」
「何で疑問形なんだよ」

男にしては線が細く、綺麗系ってのが同じ部類……とは言えず。

「明良さんよりは柔らかい感じがするかな」

明良が、意味が分からないと小さく首を傾げる。

「浮気したら、チンコ噛み千切る」

静かに恐ろしいことを言って、ニッとこっちを見た。

「それやめてって。明良さんも男なら、わかるでしょ? 言葉だけでチンコ縮む!!」
「しなきゃいいんだよ」
「する訳ないっしょ!!」

いつもと同じ会話をして、明良の満足そうな顔を見た。

***

風呂から上がって、洋平の特製野菜ジュースを飲みながら再びパソコンを見てみると、母からメッセージが来ていた。

この時間なら、大丈夫かな……。

明良はネット経由で母に連絡してみた。

「あ、俺」
『やだ。詐欺?』
「なんでだよ。画面に俺が映ってるのに」
『お客さんが詐欺の電話あったって、この間話たところだったからね』

真面目な顔で言う母に、確かに用心深い方が良いかとも思うけど。

「で? 矢倉さんからの依頼の件?」
『それは、前向きにってあなたからの返事は伝えたわよ』
「じゃ、何」
『まぁ、いくつかあるんだけど』

含みを持たせたような言い方が気になるが、先を促す。

「こっちはもう遅いんだから、早く要件言ってよ」
『あ、はいはい。今回の仕事に直接関係はないかもしれないんだけど、フローリストの水埜さんの経歴は見たわよね」

一応は目を通した、と答える。

『その水埜さんのお弟子さん……っていうのかしら。一緒にフランスで二年も連れまわしてた子がいるんだけど』

弟子?
今回の仕事に参加するにしても、直にやり取りするのは水埜の方だろう。

『そのお弟子さんがね、旧華族なの』

……旧華族?

明良がドキッとする。
それは父と同じだから。

でも、わざわざ俺にそれを言うってことは……。

「親戚……?」
『遠い親戚、みたいね』

そうなんだ……。

「名前は?」
『やっぱり食いついた』

母が小さく笑う。

「だって、とうさ……」
『だって、父さんの……でしょ』

言葉をかぶせるように言われてしまった。

『本当に、いつまでたってもお父さんっ子なんだから』

呆れたように、でも嬉しそうに、画面の中の母は微笑む。

『多治見拓篤っていうの。多治見家は公家華族の出身よ。父さんは拓篤さんの母方の分家なんだけど、拓篤さんは多治見の直系』
「うん」

分家とか直系とか、俺にはあまり興味はない。
ただ父の血の根源で、それが自分の中にも流れているということ。
その同じ血が僅かでもつながっている人が、仕事であれ関わることがあるんだ。

会いたいな……。
名前からすると、男だ。

『明良?』
「あ……ごめん」
『もう、ほんとあなたって。お父さんのことになると……』
「うん。それが言いたかったこと?」
『それだけじゃないけど。久しぶりに、声が聞きたかったのよ。もう遅いんでしょ? また時間ある時にでも、ゆっくり話ましょ』
「わかった」

回線を切り、パソコンで水埜のスクールに飛び、それらしい名前を探してみた。

――多治見拓篤

講師の欄に見つけて、そこをクリックしてみた。

学生時代からフローリストを目指し、大学卒業後にフランスで二年の修行。FACスクールにて、金賞を取る。DFAの資格を取得後日本に帰国……。
自分より八つ下だ。

写真を見て、明良は不思議と繋がりを覚えた。

遠い血なのだから、似てるはずがないのに。

「なにを真剣に見てるの?」

洋平が声をかけてくる。

「俺と、どこか遠くで血が繋がってるかもしれない人」

「……えぇ!?」

洋平が素っ頓狂な声をあげて、こっちに回ってきた。

「あ……。明良さんと系統が同じだ」
「系統って……」
「雰囲気? それが似てるよ」
「さっきも同じようなこと言ってただろ」

「いや、さっきの人よりももっと被ってる」
「ほんとかよ」

何だかまんざらでもない気分だ。

「顔のパーツとかじゃなくて、一見ちょっと近寄りがたい雰囲気ってのかな……」
「抽象的な言い方だな」

「でも、兄弟って言っても通るかも」

洋平が呟いた言葉が、明良には嬉しかった。


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