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「● 勇次と隼☆番外編」
俺たちのままで

俺たちのままで 28

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昼過ぎになって、実家を出た。

「帰りにスーパー行くわ」

隼が車を運転しながら言う。

「飯、食いに行ってもいいけど」
「いや、部屋でゆっくりしたい」
「そうか。じゃ、俺も一緒に行く」
「じゃ、Mスーパーまで行こう」

*

大型スーパーに着き、カートを押して二人で入る。

「何食いたい?」
「う~ん……」
「無いのかよ」
「じゃ、鉄板焼きで」

目の前に肉が見えて、そう答えた。

「この高いヤツ買っていい?」
「何でも買え」

ひひ……と変な笑いを零しながら、隼が牛肉を選ぶ。

普段、食費は隼が出してくれているが、たまに一緒に買い物に行く時だけは俺にこうやって甘えてくる。

隼が何かを強請るなんてことはないからか、俺はそんなことが嬉しい。

誕生日やクリスマスなんかも、何も欲しがらない。
……というか、当日はほぼすれ違いだ。

どれだけ稼ごうが、隼はあまり興味を示さない。
そこは男としてのプライドがあるのだろうけど……。

俺は、お前のために売れようと思ったんだ。
走り出してしまえばメンバーのことも、スタッフのことも、そこにくっ付いてきて、地を蹴る足に力が入った。

「酒、酒~」

今度はさっさと酒のコーナーへと歩いて行くから、その後をカートを押しながら付いていく。

「これ、これ」

ま~た嬉しそうな顔しやがって……可愛いな、このヤロウ。

「まとめて、あるだけ買えよ」

良い酒といっても、スーパーに陳列してあるのは酒屋の専門店にあるようなのじゃない。

「いやいや、あったらつい飲んじまうからな。たまに飲むからいいんだよ」

昔からそうだ。
良い物を欲しがるが、無駄な買い物はしない。

レジで金を払って、今度は俺が運転席に乗る。



途中で大きな公園が見えて、車を止めた。

「ちょっと公園寄っていいか?」
「え、なんで?」
「次の依頼曲のイメージ創りで時々行くようになったんだ」
「ふ~ん」

パーキングが無いので公園の横の広いスペースに路駐して降り、二人でベンチに座った。

「昔より人少なくないか?」
「まぁ、暑いからな」

小さな子供たちが遊んでいる姿が向こうの方に見える。

「いいな……こういうのも」

ボソッと隼が呟く。

「ん?」
「公園なんて、大人になっちまうと来ることないからな」
「小さい時は、お前に引きずられてきたぞ」
「家だと、お前はピアノばっか弾いてたろ。俺は外で遊びたかったんだよ」

そうだな……。
俺はいつも自分の世界に浸り込むようなガキだった。

「ピアノが終わったと思ったら、他の楽器。俺が一緒に居るのにだぜ?」

不満そうな顔で、幼い頃のことを言ってくる。

「だから、構って構ってはやとになったのか」
「……あほか」

フッと笑みを零してから、そうかもな……と呟く。

昨日見た幼い頃の動画を思い出していたら、隼が横で吹き出す。

「何だ?」
「昨日の動画」
「あぁ、俺も今、同じこと思い出してた」

二人で前を向いたまま笑う。

「お前も、他のヤツと遊べばいいのに」
「だよなー。今思うと」

でも俺達は、何故か毎日のように一緒に居た。

「お前なんか、俺がいなきゃ音楽オタクまっしぐらだ」
「本当だな」

隼が居なかったら外に出ることも少なく、俺は相当偏った人間になっていただろうと思う。
幼い頃、きょうだいの中で一番親父に似ていると母に言われたことがある。
それは容姿という意味じゃなく、入り込んでしまう部分のことだろう。

「理由なんか分かんねぇけど、お前と一緒に居たかったんだろうな……俺」

隼が俯いて話すが、幼い頃の自分を思い出しているのか、横顔は微笑んでいる。

お前は楽器にばかり触れている変な子供の俺の傍で、文句を言いながら。
俺も、文句を言って邪魔をするお前を面倒だと思いながら。

「俺が面倒臭がると、泣きべそかいてたよな」
「……嘘つけ」

嘘じゃないんだよ。
お前のその泣きべそで、俺はいつも一緒に公園に行った。

指を怪我するような遊びはするなと注意をされていても、それでも行った。
まぁ、末っ子の強みか何なのか、そこまで厳しくはなかったけど。

「そういや、思い出と言えば、悪役ばっかやらされてたっけ」

ボソリと言えば、隼が笑う。

「そりゃ、ヒーローやりたいじゃん。カッコイイもん」
「交代という選択も無かったな」
「お前、どっちでも良かったんだろーが。戦隊モノにも興味ねぇ、変なガキだったくせに」

まぁ、確かに。

そういうテレビも観ないガキだった。
クラスの奴らが話をしていても、あまり意味が分からなかったし。
なのに、お前にやらされる悪役を観るためだけに、テレビをつけた……。

だって、悪役やらないと泣きべそかくんだよ……お前。

やっぱり俺は、あの頃からお前には甘かったんだよなぁ……。

心でだけそう呟いて、くくっと小さく笑った。


「ガキの頃は、お前と一緒に居ることに何一つ疑問なんかなかった。一緒に学校に行って、一緒に帰って、遊んで……次の日も同じ」

隼の言葉に、勇次も当時を思い出す。

「喧嘩して、腹立って。迎えに行かないでいると、お前は休む」
「そこは迎えに来いよ」
「大抵はお前の我儘に俺がキレてたんだろうが」

俺が本気で怒ると、首を縮めて目をギュッと閉じていた隼が甦る。

「お前、怒ると人格変わるもんな」

酷い言い様だ。

「俺が人格変わるまで怒ってたのはお前くらいなもんだ」

他のヤツに、そこまで本気で腹を立てたような記憶はない。

「メンバーに、鬼だって言われてんじゃん」
「仕事は仕事だろ」

和気藹々でやって行けるようなレベルじゃなかったんだよ。

先にデビューが決まっていてのスタート。
その意味を芯から把握できていなかったメンバーたちは、テクニック云々よりもハングリー精神が欠けていた。
下手すれば、全てが流れる。

それがいつの間にか、バンドをしている連中が目指す本当の意味でのプロになった。

メンバー集めから始まって……あっという間に時間が経っていた。

その間に変化した、隼との関係。

あの焦れる気持ち。
互いに距離をはかりながら、純粋な幼馴染のままではもういられなくなっていたことにも目を瞑り続けた。

普段はそう考えることも無くなってきた色んな思いが、頭を駆け巡る。

音楽以外のことではあまり心が大きく動かない……そんな俺に、色んな感情を叩き込むようにしてきたのは、紛れもなく隼だ。


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昨日はお休み、すいませんでした。
色々とお優しいお言葉を頂き、嬉しかったです。有難う御座います(´A`*)・゚。
お礼と言っては何ですが、1回分書き足しました~!
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