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「● 勇次と隼☆番外編」
俺たちのままで

俺たちのままで 26

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「ちょっと、俺の存在忘れてない?」

向かいでおばさんと話しをしていた慎之介が拗ねたように声をかけてきた。

「お前、今おばさんと話してたろ」

「S大の上坂教授って、どんな人?」

慎之介が目を輝かせて聞いてきた。

「変人かな」
「あ、何となくイメージ通り」
「俺はゼミも上坂教授だったから」
「うわっ。俺もそのゼミ入りたいっ」
「その前に合格しろよ」
「浪人しても入るよ」

S大は学部によるが、内外に有名な教授が居ることで人気がある。
その中でも上坂教授は本もたくさん出していて、直に学びたい生徒が集まってくるのだ。
俺も、その一人だった。

人気なだけに研究に対する予算もあり、贅沢な環境だったと振り返った今思う。

慎之介の矢継ぎ早の質問責めに答えながら、当時が甦ってくる。

レポートや課題、徹夜、学会の準備……。
特に論文に関しては、徹底して上坂流を学んだ。

近い内に、また本屋で教授の本を買いに行こう。
多分、内野も買ってる。
同時に、あのコウタの真っ直ぐな目も思い出す。

「大学に合格しても上坂ゼミの倍率は高いぞ」
「だよなぁ……」

コテンと額をテーブル当てて突っ伏す。

「けど、お前実家遠くないか?」
「うん。だから合格したらここに住む」
「……マジか」
「マジ。勇ちゃんの部屋にね」

ここからでも近いとは言えないが、充分通学範囲内だ。
なのに俺は、親父と顔を合わせるのが嫌だという理由で一人暮らし。

あの頃の俺は、理解してくれない親父を悪者にして、それを盾に我儘を通した。

自分のことで頭がいっぱいだったんだよなぁ……。

親だって子供を育てなから親になって行くのだという言葉があるが、教育という現場に居れるとそれは強く感じる。

「だから、はーちゃんも時々はココに顔出してよ」
「合格する気満々か」

隼が笑えば、ニッとして肩を竦める。

うわ……ニッとする顔が、やっぱり勇次っぽい。
ついつい顔をジッと見てしまう。

「勇次に似てると思ってんでしょー」

琴乃が横から笑う。

「勇ちゃんじゃなくて、親父だって」

慎之介も笑う。

「いやいや、根源はあそこに居るんだぞ」

勇次の母親が顎で、おじさんの方をさした。
が、何かに没頭して気がつきもしない。

「見てよ……。自分の世界に浸りきって、周りが見えない持田家の男たち」

おばさんが、おじさんと勇次の方を交互に見る。

「そういえば、母さんが父さんのこと同じように言ってた」

慎之介が言えば、皆がフッと笑った。

*

勇次の家のリビングで、団らんともいうべきひと時。

「慎之介、パパ」

横でパソコンを弄っていた琴乃の声に画面を覗くと、慎之介の父であり、勇次の兄が写っていた。

「あ、父さん」

慎之介が琴乃と席を代わり、画面をのぞき込む。

『元気か?』
「うん。父さんも?」
『あぁ、元気だ。冬に一度、日本に帰るって言ったろ? 久しぶりに美味いもんでも食いに行こう』
「やった」

久しぶりの親子の会話なのかと思っていたら、時々はスカイプ経由で話をしているらしいことが会話で伝わってきた。

「受験終わったら、そっち行こうかな」
『あぁ、来い。功史朗も、琉美も喜ぶ』
「俺のこと、忘れてないかなー」
『お前はお兄ちゃんだ。忘れるもんか』

幼い頃に離婚して離ればなれで、違う国に暮していても、親子の絆のようなモノを感じる。

『皆、居るのか?』

五分程話をした後に、和兄がそう聞いてきた。

「居るよ。勇ちゃんも、はーちゃんも」

隼が横からぬっと顔を出すように画面をのぞき込む。

「和兄。久しぶり」
『はやとか? 大人になったなぁ……』

目を丸くして驚く顔は、昔とあまり変わらない。
けど、目尻にはシワが見える。

甘い目のマスクは、年と共に魅力を増すタイプだよな。

……十年後の勇次が想像できる。

『やんちゃして、もうビービー泣かないか』
「泣いてねーし」

『勇次と仲良くしてるか?』

……だから。
何でそんなこと、皆の前で訊くかな。

「……まぁ」
『あいつ、今も楽器ばかり弄ってんだろ?』
「それが仕事だし」
『そこに居るのか?』
「居るよ。ゆーじ!!」

勇次を呼んでも、ヘッドフォンをしていて気づきもしない。

立ち上がってヘッドフォンを取ると、驚いた顔で後振り返る。

「和兄」
「え?」

いいから、と腕を掴んで立ち上がらせて連れて行く。

「あ、兄貴」
『おー、勇次。久しぶり』

兄弟で会話をしているのを見ながら、顔が綻んでくる。
やっぱり勇次は弟なんだな……と思って。

もう四十代になる和兄から見れば、勇次はやっぱりまだ若造って感じがする。
まぁ、俺もだけど。

一回りも違う和兄は凄く大きくて、何でもできて、カッコ良くて、優しくて、よく抱っこしくれて……とにかく、大好きだったんだよな。
末っ子の勇次を可愛がっていたし、何より幼い勇次に色んな楽器を触らせて影響を与えた人だ。

「今度行くわ。隼連れて」

勝手に連れて行くとか言ってるし……。


次におばさんに代わり、おじさんも強引に連れてこられて、家族で離れた国に居る長男と繋がっている。
持田の家から離れてしまった慎之介も、一緒に。

その中に自分が居ることに、隼はジワリ……と幸せな気持ちが湧き出てくる。

「どした?」

勇次が顔を覗き込んでくるから、思わず体を退いた。

「近いっ」
「何でだよ。いつもと一緒だろ」
「……ここ、お前の実家」

小声で言っても、首を傾げる。

「皆、知ってるのに?」
「そういう問題じゃない」
「照れてんのか?」
「あほか」

小声でボソボソと二人で話をしていると、視線を感じた。

「イチャついてる」

慎之介と琴乃がニヤニヤとしてこっちを見ていた。


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