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「● 勇次と隼☆番外編」
俺たちのままで

俺たちのままで 25

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隼が勇次の家に行くと、おばさんが出てきた。

「いらっしゃい。遅かったわね」
「母さんと飯食ってて」
「やっぱり」
「これ、イチゴ」
「あ。大阪の伯母さんからの?」

そういえば、昔はよく持ってきたっけ。

「隼……大人になったねぇ」

しみじみと言われて、首を傾げる。

「今更?」

ちょこちょこ会ってんのに?と思ったが、おばさんはそのままリビングへ向かう。


扉を開けた瞬間、皆が一斉にこっちを見る。

え……何?

「勇次が悶えて気持ち悪いんだけど」

琴姉が苦笑いしながらそう言った。

勇次が悶えてる?

眉をしかめて部屋を見渡せば、ソファーの一番奥でクッションに顔を埋めていた。

何やってんだ?

「はやと」

後ろから声がしてギクリ……。
勇次はそこにいるのに、声が同じだからだ。
隼はゆっくりと振り返る。

「俺、慎之介」

……うっそ。

「久しぶり~、はーちゃん」
「……久しぶり」
「え、何? その反応」
「いや……勇次が若返ったのかと思って」
「勇ちゃんの真似してみたの成功」
「声がそっくりだ」
「うん、電話越しだともっと似てるって言われる」

顔の造りがどうこうではなく、声と全体的な雰囲気や髪の感じが勇次に似てる。

「お前、俺よりデカくなってないか?」

目線が少しだけ上にある。

「あー、百八十は超えた」
「恐るべし。持田の遺伝子」
「あはは」



「隼」

部屋の隅からまた似た声がしてみると、勇次の親父さんだ。

「おじさん、居たんだ」

滅多にいないから、驚いてしまった。

「学校の先生、頑張ってるのか?」
「あ、うん」
「ストレス溜まるだろ?」

え……おじさんがそんな質問?

「そりゃ溜まる」
「うちの楽団にも、元教師がいるんだ」
「うん」

次の言葉を待ったが、無し。

出たよ……。
いつもの調子に可笑しくなった。

挨拶もなく会話が始まり、終わった。
今更「久しぶり」というのも何だし……と思っていると、慎之介が大学の話を聞かせてくれと言ってきた。

「はやとっ」

なのに、今度は向こうから勇次がこっちに来いと手招きする。

「何だよ」
「いーから、来いって」

慎之介に「ちょっと待て」と声をかけて勇次の傍に行くと、ノートパソコンを指さす。

何かと思うと、小さい頃の自分が映っていた。

「うわ、何見てんだよ」
「慎之介の小さい頃のを探してたら、お前が出てきて」

映像の中の自分は酷く小さくて、隣に一緒に居る勇次と同学年には到底見えない。

ノートに音符を書いている勇次の横で絵本を読みながら、体重をかけてもたれかかっている自分。
見ていると、俺に構えとばかりに集中している勇次の邪魔をし始めた。

邪魔をしているのにビクともしない勇次の背中から乗っかって、肩越しにノートを覗き込んでいる。

「まだ?」
「もうちょっと」
「はやくー」
「うん」

うげ……。
何かもう、見てられない。

「やめろよ、もう」
「もうちょっと」

さっきの小っこい勇次と同じセリフに、ちょっと笑えた。

画面の中の自分は、勇次にくっ付きまくってる。
その勇次はこんな時から飄々としていて、動じてない。

その内、体重をかけすぎて、勇次が前のめりに潰れてしまった。
デカいと言ったって、子供だ。

……勇次、可愛いじゃん。
今じゃ、そうそう潰れたりしないもんな。

俺に潰されてるのに、小さい勇次が笑ってる。
そして俺も笑ってる。
撮ってるおばさんらしき人の笑い声も入ってる。

画面の中の勇次は可愛いが、横に居る大人になった勇次は……ニヤニヤして気持ち悪い。

「お前、キモい」
「コピーして帰るわ」
「は? なんで」

ニヒヒと変な笑い顔で、パソコンにUSBをさした。

「はーちゃん。勇ちゃんとは毎日一緒じゃん。俺の相手してよ」

慎之介に言われて、勇次を睨んでからテーブルに座る。

「はい、隼の家からもらったイチゴ」

「わ、出た!! 高級イチゴ!」

琴乃が隣に座って、一つ摘まんだ。

「こーいうのって、自分で食べるためには買わないもんね」
「甘っ」
「デカいな」

皆でワイワイとイチゴを食べているのに、勇次はヘッドフォンをつけてリズムに乗りながら何かをしている。
それを家族の誰もが突っ込まない。

おじさんも、向こうの小さなテーブルの方で真剣な顔で何かを書いていた。

あぁ……勇次の家族だ。

小さな頃から、持田家はこんな感じだった。

各自、自分の世界を持っていて、何かに集中し始めると放置。


その中に幼い頃から時々は身を置いて、今も変わりなく過ごしている。

自分がゲイだと気付いた後、この家で過ごすのが少し辛かった時期があったのに。

これからもこうやって、持田家の中に居ることが出来ますように……。

祈るように心で思い、指輪に触れる。

「その指輪、恒川デザインだったよね」

琴乃が気付いて訊いてきた。

「そうだよ」
「硬質でカッコイイ。やっぱ男のデザインだね」

手ごと掴まれて、ジッと眺める。

「頑丈そう」
「うん。一番頑丈なのをって頼んだから」

何それ?と、琴乃が目を剥いた。

「女だったら、そーいう頼み方しないわよ」

そうか……なるほど。

「今、イタリアだっけ?」
「うん」

あぁ、そういえば……。

隼が携帯を取って、前に篠原が送ってきた画像を探して見せる。

「わ、カッコイイ」

画像の中の恒川は、頭にバンダナを巻いて首にタオル、そしてツナギを着て何かの作業をしている。
その姿はいつもの中性的な雰囲気を払拭して、男っぽい。

向こうのアートスクールの生徒が合同で作品を創っている最中の動画らしく、篠原が撮って送ってきた。

だんだんアップになってきて、真剣な表情をとらえている。
額に浮かぶ汗と、長くて真っ黒な睫毛がアンバランスで目を惹く。

篠原さん、どんだけ好きなんだよ……と送られて来た時に、ツッコミんだ。

「上品で儚げなイメージだったけど、勇ましくてカッコイイ。仕事してる男って、キュンキュンくるわ」

いや、これは多分仕事じゃないけど……と心で思ったが、多分本当の仕事の時もこんな感じなんだろう。

「日本に帰ってきたら、琴姉も何かつくってもらえば?」
「そうね」

フフッと微笑んで、またイチゴを摘んだ。



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