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「● 勇次と隼☆番外編」
俺たちのままで

俺たちのままで 23

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勇次が自室を物色する。

必要な物は持って帰ろうと思いながら本棚からアルバムを取り出し、そのまま床に座って開く。

前にドラマの曲を創る時に、この中から一枚抜いて行ったんだった。
それは今も、手帳に挟んである。

生まれた時からの写真。
末っ子のせいか大した数はなく、アルバムも一冊のみ。

アルバムの中には兄や姉たちと一緒に、一番チビの自分が居る。
四人一緒に撮っている写真は少ない。

上の二人とは年も離れているから、琴乃と一緒が多い。
隼との写真もたくさんある。

「小っさ……」

本人が聞いたら一番嫌がる言葉が、またポロリと出た。

未熟児だったんだもんなぁ……。

細くて、華奢で、顔だけは生意気。

勇次はクッと笑ってページを捲ると、隼が苺を頬張っている写真だった。
小さい口に、デカい苺を丸々入れているからはみ出ている。

また、その顔が……。

なんだ、コレは。

心で呟いて床にゴロンと寝そべり、両手で顔を覆った。


……可愛い過ぎる。


「勇ちゃん。ドア開けっ放しで、何してんの?」

声がして手を離すと、慎之介が立っていた。

***

勇次の家へ行く前に、自分の家を素通りは出来ないからと顔を出せば、母は張り切って夕食を作ってくれていた。

母と二人だけの夕食。
父はまだ帰ってきてないし、翔は海外、兄は寮だ。

「智くんの結婚式、お休み取れるん?」
「日曜やし、大丈夫」
「母さん、久しぶりに京都に行きたいんよ」
「付き合おうか?」

隼が問えば、少し目を丸くしてから嬉しそうな顔になる。

「なに?」
「あんたがそんなこと言うてくれて、喜んでんの」

大袈裟だな。

「でも学生時代のお友達と、もう約束してんのよ」
「そっか」

「今から勇ちゃんとこ行くんよね?」
「うん」

母が立ち上がって、棚から何かを箱を出してきた。

「大阪の姉さんから、今日送ってきたんやけど。もうお父さんと二人やし、傷ませるのなんやから持っていって」

木箱に入った大粒の綺麗な苺だ。

「伯母さん、今もこんな送ってくんの?」
「そう、毎年お付き合いで買うてるから。ストロベリーファームから、直接送ってくるんよ」

昔だったら、兄弟三人でペロリと食べた。
家に送ってくる物は、三人の息子の腹の中に入る物が多かったように思う。

子供が独立して今は母と父だけになり、二人じゃ食べきれないんだろう。

「慎之介が来てるから、喜ぶわ」

その名前に母が目を瞬かせる。

「会うたことあるやろ? 勇次の兄貴の息子」
「……あ、覚えてる」

慎之介を家に連れてきた時、母は可愛がっていた。

「いくつになったん?」
「高三やから、十八くらいかな。S大、受験するらしい」
「いやっ、隼の後輩やないの」
「受かったらな」



母が夕食の片付けをして、一緒にコーヒーに付き合う。

「あの花、何?」

家に花を飾るなんてこと今まで無かったのに、リビングのサイドボードに大きく飾ってある。

「気ぃ付いた?」
「帰ってきた時から気づいてたよ。造花?」

そう聞けば、ムッとした顔をして否定する。
翔が留学してから、友達と花を習いに行ってるのだという。

「あんたらがおった時は、花なんか飾ってられへんかったからね。翔とあんたが絶対ひっくり返すと思って」
「もしかして玄関のとこにあるリースも、母さんが作った?」

帰ってきた時に、ドアの中央に飾ってあって、誰かにもらったのだろうと思っていた。

「そうよ」
「へぇ……」
「それだけ? なんやもう、手応えがないわねぇ……男の子は」

そう言われても、何を言えばいいのか。

どこまで習いに行ってるのかと聞けば、結構距離がある。

「何でそこまで? 近くにありそうやのに」
「木下さんが前から通ってるとこやの」
「あぁ、歯医者さんの」
「そう。木下さんも、子供が独立してから習い始めたって」

なるほどね。

テーブルの横のラックから、雑誌を取り出してきた。

「秋から、この先生に教えてもらうの」

母が開いたページには、若い男が載っていた。

「え、男?」
「そう。凄く素敵なんよ」

え……。

母親の表情に、隼が目を見開く。

「この先生目当て?」
「まさか。優より少し上くらいの年やのに。目的はあくまでお花やよ。海外から帰ってきて、やっと秋から再開してくれはるの」

そう言いながら、母はその男の写真を微笑んで見ている。

こんな顔、初めて見た。

なんか、複雑……。

変な意味じゃなくても、母親が他の男をうっとりとして見ていることに良い気持ちがしない。
多分、息子……というか、子供としての本能的な部分。
母は母親として、自分の中で確固たる位置に君臨しているのだ。

でも確かに、写真の男は柔らかな雰囲気だ。
花に触れていると、そうなってくるのだろうか。

「雑誌に載ってるってことは、凄い人?」
「男性フロ―リストの特集やからね。でもこの若さで、社長さんなんよ。お弟子さんも凄く素敵な男の子でね、向こうに一緒に連れて行ってはったの。それでね……」

楽しそうに話し続ける母に、まるでアイドル扱いだと微笑ましくなってきた。

翔が家を出た後は、寂しそうな顔をしていた。
だからといって俺もマメに連絡を取ることもせず、日々の忙しさを言い訳のようにしていた。

結婚してからずっと家のことに全力を注いで生きてきたのだ。
自分のために何かをしている母の姿なんて、ほとんど記憶がない。
今じゃ世話を焼く相手が父だけになり、その父も多忙だ。

何だっていいよ、母さん。
もう俺達も子供じゃないし、母さんは自分の楽しみを見つけてくれたら。

そう口にすればいいのに。
……やっぱり照れ臭くて言えない。

「どう思う?」
「え、何が?」
「母さんの生けたお花」

そう言われても……。

「……綺麗やと思うけど、正直ワカランわ」

そう言うと思ったと、母が笑った。

「分かってて聞くなよ」
「だって、優と同じこと言うんやもん」

クスクスと笑いながら、今度はキッチンの横にある段ボールを開けて見せる。

中には色んな食材が入っている。

「翔?」
「そう。もうあの子、案の定食べ物で泣いてんの」

あー、そうだろうな。

「日本の食材も売ってるんやけど、高い割に質がねぇ……。緑茶なんかも、中国製が多いらしくて」
「この海苔高いやつじゃん」
「翔が好きなんよ」

……結局、甘やかしてる。

まぁ、海外で泣きながら頑張ってるんだ。
言葉だって苦労してるだろうし。

色々と思い知ってる真っ最中だって、メッセージが来ていた。

「頑張ってるよ、あいつ。たまにメッセージ来る」
「あ、母さんも翔にスタンプ送ってる」

母が携帯を取り出してきた。

「知ってるって。俺にも送ってきてるやん」
「優に送ったら、一々意味聞いてくるの。流せばええのにね」

……母さん。息子で遊ぶなよ。


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