女性向け創作サイトリンク集B-LOVERs★LINK 人気ブログランキングへ

「● 勇次と隼☆番外編」
俺たちのままで

俺たちのままで 21

 ←俺たちのままで 20 →俺たちのままで 22
隼が待ち合わせの店に着くと、既に武田と今岡が来ていた。

「お、牧村! 久しぶり~」
「三村、あと十分くらいで来るってよ」

今日は久しぶりに高校時代の友人との飲みだ。
年に一度は顔を合わせようと言って、今もそれは続いている。
今回、文系組の三人は都合が悪く、理系組の四人のみ。

言いだしっぺの足立は急な仕事で来れなくなり、七原も仕事で、中村は地方だ。

ビールでまずは乾杯して、近況報告。

武田は建築士だし、今岡は光通信関係の大手企業で頑張っている。

「お前、一級目指してんだろ?」

隼が武田に訊けば、肩を竦める。

「そりゃ、行く行くはな」

建築士の世界は完全に実力主義。
資格を取ったくらいで、仕事を取れるとは限らない。
そういう厳しい現実に、建築学科を卒業しても資格は取得せず、ゼネコン、ハウスメーカー、不動産会社などに就職するヤツも多かったという。

「お前なんか、生き物相手だろ?」
「生き物って、何だそれ」
「人間相手ってだけでもストレスなのに。その上、難しいお年頃の女の子とキちゃな」
「あぁ、先週の土曜も繁華街の巡回だよ」

夏休みの週末、週交代で数人の教師で見回るのも仕事。
見つけるようなことは今までないが、生徒達は知っている。
多分、見かけたことがあるんだろう。

次に今岡の半導体に関しての開発コストの微細化の話を頷きながら聞いていると、三村が現れた。

「デカい声で小難しい話してるから、周りが引いてるぞ」
「好きなくせにー」

三村のビールがすぐに運ばれてきて、また四人で乾杯をした。

*

それぞれに専門的な分野での仕事の話から、飲んで食べている内に話しはプライベートの方へ流れて行く。

武田も今岡も、付き合っている彼女がいる。
結婚を視野に入れているのは武田で、今岡はまだだそうだ。

そろそろ周りが身を固めていく年代だ。
だが、もう心が揺れることもない。

勇次が二人の未来図を、時々零してくれるからだと思う。


「七原のバンドのライヴ、一回行こうとは思ってんだけどさ」
「音楽に興味ないくせに、義理で行くもんじゃないぞ」
「この間、テレビで流れてて……PV? すっげーカッコイイよな」
「持田さん、相変わらず?」

今岡が隼に訊いて来る。

「相変わらずって、何が?」
「あの人、めちゃくちゃ面白いじゃん」

あいつ、学年下のこいつらにも変顔とかしてたのか?

「あの間とかさ、独特で。俺、結構ファンだったんだよな」

武田も同じようなことを言うが、ファンって……音楽のじゃねぇのかよ。

「お笑いじゃねぇぞ」

三村が横で笑う。

「ってかお前ら、勇次と話しとかしてたっけ」
「話って程じゃないけど、三村との会話がもう……」

思い出したように、武田と今岡がククッと笑う。
どんな会話をしていたのか知らない隼は首を傾げる。

「何か、から揚げの歌とかいうのあったよな」
「あ、あったあった!!」

から揚げの歌?
それも知らない。

「俺らが一年の時の文化祭で、持田さんが作ったんだよ。歌詞、めっちゃ適当で笑えた」

じゃ、俺が休学してた時か。
そういやあいつ、小さい時から変な曲作っては俺に聴かせてたっけ。
何でもかんでも曲にして、嬉しそうな顔して……。

そういえば琴姉にヘンタイ作曲家とか言われても、涼しい顔をしていた勇次を思い出して可笑しくなる。

「から揚げの曲、もう一回聴きてぇな」
「色んな揚げ物出てきて、腹減る歌だった」

武田と今岡がゲラゲラと笑う。

「マジで持田さん、天才」

から揚げの歌で天才かよ。

昔のあいつは、曲を作っては後で適当に歌詞を乗せるような感じだった。

「あの面白さは、今も健在かな~」

「バンドじゃ、鬼だぞ」
「え、そうなの?」
「あぁ、秋也なんか本気でビビッってる」
「あの七原がか?」

でも、七原も勇次大好きだぞ……と、心で呟く。

「あ、そうそう」

武田が鞄から雑誌を取り出した。

「お前、ファッション誌なんて買うキャラ?」
「いやいや、彼女が部屋に置いていったんだよ。ホレ」

ページをめくると、七原がドーン!と見開き二ページに渡って載っていた。

バラを散りばめたシーツの上にうつ伏せで、視線だけをこっちに向けている。
シーツは淡いブルーで、真っ赤な花弁が際立って官能的だ。

七原は中性的ではあるが、モデルの時の表情は完全に男なんだよな。

「美しいねぇ……」

武田と今岡が二人で雑誌を覗き込んでいる。

「何の広告?」
「次、捲って」

言われたように捲ってみると、スーツ姿に着替えた七原が時計をはめて時間を確認しているシーン。
前ページとのギャップに、まず目を惹かれる。
そして下段の右側の隅に、時計のブランドの新作が写っていた。

「時計か」
「今の広告って、こういう手法多いな」

見る側に「何の宣伝だ」と興味を持たせるのは、テレビのCMなどでもよく見る。


「お前、家帰ったらこんなの居るんだ」

今岡が言えば、三村が自慢気に頷く。

「そのこんなのは、バッタ食うらしいぞ」

隼がボソッと言えば、三村がまた笑う。

「え? バッタ?」
「虫の?」
「イナゴだろ。あいつ、写真送ってきた」

三村が携帯を取り出し、写真を探して見せてきた。

「えぇ……コレが、イナゴ食うの?」

今岡がモデルの七原を見て、首を振る。

「エビを揚げたみたいで美味しかったって報告がきた」

三村め……。
普段、能面のくせに。
七原絡みになると、デレて仕方ねぇな。

そしてまた、携帯を弄って見せてくる。

「え、誰よ?」
「何、これ……」

写真は愛らしい小さな子供が写っていた。

「七原だな」
「分かるか」
「どう見たって、七原だろ」

お前が七原以外にそんな顔する訳がない、そう口にしたかったがやめた。

「こんな時から既に美形」
「俺、初めて七原見た時、ほっぺたツルツルでビビった」
「そこ?」

武田と今岡が二人で、七原の広告を眺めながら高校時代の話をしているのを横目に、隼は三村がまだジッと見ている携帯に目を走らせる。


「しっかし……あいつ、ほんと可愛いな」
「天使だろ」
「あー、はいはい」

でも本当に、そこにいるだけで愛を振りまく天使のようだ。

「待ち受けにしてんのか」
「いや、さすがにそれは。時々、こっそりとは見る」
「気持ちワル」

隼が体を退いて言えば、三村がクッと笑った。

「じゃ、持田さんも同類だな」
「なんでだよ」
「ツアーの時、お前の小さい時の写真眺めてはニヤニヤしてたらしい」

小声でボソッと言われて、ちょっと眩暈がした。


……それはさぞかし、気持ち悪かろう。


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ
関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛なんぞ、くそ喰らえ
総もくじ 3kaku_s_L.png ● 信史と秋也☆番外編
総もくじ 3kaku_s_L.png ● 勇次と隼☆番外編
総もくじ 3kaku_s_L.png ● 龍介と達也☆番外編
総もくじ 3kaku_s_L.png ●洋平と明良☆番外編
総もくじ 3kaku_s_L.png ●冬吾と澪☆番外編
総もくじ 3kaku_s_L.png ●内野と浩太☆番外編
総もくじ 3kaku_s_L.png ●堂本と拓篤☆番外編
総もくじ 3kaku_s_L.png ●北見と佐倉☆番外編
総もくじ 3kaku_s_L.png シリーズモノ〈番外〉集
総もくじ 3kaku_s_L.png パラレル
総もくじ 3kaku_s_L.png 頂きモノ
もくじ  3kaku_s_L.png はじめまして
総もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
もくじ  3kaku_s_L.png 視線が追う先に
もくじ  3kaku_s_L.png 溢れる想い
もくじ  3kaku_s_L.png 逢いたくて
もくじ  3kaku_s_L.png 愛を、くれ。
もくじ  3kaku_s_L.png 蜜月
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛なんぞ、くそ喰らえ
もくじ  3kaku_s_L.png 恋のカタマリ
総もくじ  3kaku_s_L.png ● 信史と秋也☆番外編
総もくじ  3kaku_s_L.png ● 勇次と隼☆番外編
総もくじ  3kaku_s_L.png ● 龍介と達也☆番外編
総もくじ  3kaku_s_L.png ●洋平と明良☆番外編
総もくじ  3kaku_s_L.png ●冬吾と澪☆番外編
総もくじ  3kaku_s_L.png ●内野と浩太☆番外編
総もくじ  3kaku_s_L.png ●堂本と拓篤☆番外編
総もくじ  3kaku_s_L.png ●北見と佐倉☆番外編
総もくじ  3kaku_s_L.png シリーズモノ〈番外〉集
総もくじ  3kaku_s_L.png パラレル
総もくじ  3kaku_s_L.png 頂きモノ
  • 【俺たちのままで 20】へ
  • 【俺たちのままで 22】へ

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【俺たちのままで 20】へ
  • 【俺たちのままで 22】へ
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ