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「● 勇次と隼☆番外編」
俺たちのままで

俺たちのままで 18

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学校へ着くなり、畑野が難しい表情で電話をしている姿が目に入る。
父兄からの電話だろうと聞こえてくる会話で分かったが、電話を切るなりこっちに来た。

「牧村先生。安藤が昨日から帰ってないと、お母さんから連絡がありまして」
「え……」

安藤は副担任をしているクラスの生徒で、真面目で大人しい子だ。
夜遊びをするようなタイプではないから、何か犯罪に巻き込まれたのではと咄嗟に頭をよぎる。

「警察には?」
「今から届けるって言ってるんだけど、僕たちは仲の良い生徒の家に電話をかけましょう」
「はい」

学年主任で、担任でもある畑野は社会科のベテランの先生だ。
こういう時の対処にも慣れている。

名簿を取り出して開き、仲の良いはずの生徒の名前を探している時にまた電話が鳴り、畑野が慌てて出る。

「あぁ! そうですか……。良かった」

そう言って、こっちを向いて親指を立てる。

二、三分程話をして切った。

「帰ってきましたか?」
「いや、やっと携帯が繋がったそうだ。道重のところに泊まってたらしい」

道重は、一番にかけようと思っていた同じクラスの生徒だ。
とにかく無事だったことに安堵する。

「徹夜でゲームやってて、そのまま寝てしまったという言い分だ」

道重の家は両親とも仕事が忙しく留守がちで、家のことは家政婦がやっている。
同じく、安藤も似たような家庭環境だ。
違うのは、安藤には父親が居ないということ。

「犯罪に巻き込まれてなくて良かった」
話を聞いていた貫田が胸を撫でおろす。

「ですね……」
「じゃ、今から道重の家へ向かえに行きますか」
「え?」

母親が仕事で、どうしても一旦会社へ行かなければいけないのだそうだ。

「車で三十分程の距離ですんで」
「わかりました」
「車の中は密室ですからね」

カトリック系の私立の女子中学。
男性教諭は余程のことがない限り、生徒と二人きりにならないように言われている。
それは生徒のためだけじゃなく、教師の方もあらぬ疑いをかけられないように。

学校の抱えてきた様々な問題が、ここにもある。

***

家に帰ると、勇次がソファーで寝ていた。
この数日部屋にこもっていたから、徹夜だったんだろう。
風呂に入ってから横になったのか、下はパンツ一丁。

風邪引くだろうに……。

鞄を置いて、勇次の傍に行って寝顔を見る。

そのまま膝を折り、勇次の胸に頭を乗せた。

モゾ……と動く気配がして、勇次が目を開ける。

「帰ってきたか」
「ただいま」

そう言って起き上がり、勇次の上に乗って体を重ねる。

「重い」
「いいじゃん」

スリスリと甘える。

頭を撫でる手が気持ち良い。

あれから「家に帰らない」とゴネる安藤に、仕方なく母親に連絡を入れた。
仕事先から道重の家に駆け付けた母親と娘が喧嘩を始めてしまい、泣きじゃくる娘と怒る母親との間に挟まれてしまったのだ。

一生懸命働いて、ちゃんとした生活をさせてやりたい親と、寂しい気持ちを我慢してきた娘。
どっちの言い分も、分からなくはないのだ。

最後に畑野が何とか説き伏せて、一緒に自宅まで送った。

学校に帰ってから報告をしたり、その後の様子を問う電話をかけたり、巻き込まれたようになった道重へも電話をしたり……で、仕事が後手後手になって遅くなってしまった。

決して珍しいことではないが、よくあることでもない。

セミナーや講習会での交流で、荒れた学校の教師たちからは羨ましがられる学校。
躾が行き届き、金銭的にもある程度は余裕のある家庭の生徒は多い。

だがその分、父兄からの要求も大きく厳しい。

そして裕福な家庭ばかりではなく、無理して入ってくる生徒もいる。

そこからくる、生徒間の格差……。

どんな仕事であれストレスを抱えるだろうし、言い出したらキリがない。

「疲れてんなぁ」
「うん」

大きな手で後頭部を撫でられて、隼はまたグリグリと額を擦り付けるような仕草をする。

「何か食いに行くか?」
「いや、ピザ取る」
「お、いいぞ。テレビでも観ながら食べるか」
「うん」

そういいながらも、まだこのままでいたい。

「もうちょっと」
「ほれ、こっち来い」

勇次が手を伸ばして、体ごと引き上げられる。

「何かあったのか」
「まぁ、色々あるよ。今日のは親子喧嘩に巻き込まれただけ」

犯罪に巻き込まれた訳でも、家出でもなく……本当に良かった。

「中学生は難しいからな」

そう言って、頬を軽く抓られる。

「お前が中学の時、急に雰囲気が変わって戸惑った覚えがある」

隼が首を傾げる。

「突然、大人びてみえたんだ。でも、アホな部分はまんまだったけどな」
「うるせぇ」

よく勇次に怒られた。

俺は勇次に構って欲しかったのだろうか……と思うと、安藤の泣いた顔が浮かんだ。

「俺さ……女の子に泣かれると、どうしていいかホントわかんねーわ」

多感な時期なせいか、感情の浮き沈みでわりとすぐに涙を見せる。

「あー、お前免疫ないもんなぁ。それで疲れたのか」
「まーな。対処できるようにならねーと」
「女の子だって、大人になったらそう易々とは泣けなくなんだろ。今の内に泣かせといてやれよ」

「……そうだな」

あんな風に泣きじゃくることが出来る内は、可愛いとも思う。



「深情けの隼」

しばらくして、勇次がボソッと呟く。

「え……」
「……にはなるなよ」

聞き覚えのある言葉に、そういえばたまに言われていたことを思い出した。

「今もどこの学校にも、あの頃のお前と同じようにマイノリティーで悩んでる生徒が居る。男も、女も」

うん……絶対に居る。
どれだけネットで情報が掴めても、社会が緩和されて行っても、恐れや孤独感はあるだろう。

「きっと、お前は誰よりも理解してやれる先生だ」
「…………」
「だがそれは、諸刃の剣」

勇次が両手で頬を包むようにして顔をジッと見つめてくる。

「お前はカウンセラーじゃなくて、学校の先生だ」

そうだな。
理解出来るからって一人の生徒にばかり構えば、他の生徒へも影響する。

「放っておけと言う意味じゃない。ただ、お前が自分の身を削るようなことをすれば、俺がどんな気持ちになるかも考えろ」

「……わかった」

「先生って仕事は、難しいな」

勇次がニッと微笑んで、そのまま頭ごと片腕で抱き込まれた。


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