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「● 勇次と隼☆番外編」
俺たちのままで

俺たちのままで 16

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さすが、ゴールデン枠で何度もヒットを出してきた上杉だ。
焦燥感のあった顔色を、さっさと元に戻した。

「これが一応、刷なんだけど。まだ主要キャストしか決まってないんだよ」
「こっちも曲先で作ってますんで。詩の方は、櫻井さんと打ち合わせてからになります」
「次は視聴率上げないと、窮地になる。だから、ほんとよろしくお願いします」

深々と頭を下げられてしまった。

ドラマは役者だけじゃなく、脚本が肝だ。

単純にいえば、面白いか面白くないか。
どれだけの役者を揃えようが、どれだけ派手に番宣に金を使おうが、視聴者はそこまで甘くない。
地味なドラマでも、面白ければ視聴率は右肩上がりになっていく。

そして花を添えるのが、歌。
主題歌や挿入歌、エンディング。
番組が終わっても、その曲が流れるとドラマのシーンが浮かぶように。

*

打ち合わせを終えて一旦事務所へと戻り、今現在決まっているキャストや裏方の刷を黒井と共に見る。
左一面にはキャストで、右一面には裏方……所謂、テレビには出ない主要製作者の名前が並ぶ。

「上杉さんがチーフプロデューサーで、サブプロデューサーが二人。力入ってるわね」

主要キャスト以外は未定でも、水面下で事務所の力関係で動いているだろう。

「ストーリーの転結の方は」
「脚本の櫻井さんが缶詰状態で、来週アポ取り」
「了解」

カメオ出演を切り出されたことは、後で打診が来る可能性もあるから黒井に伝えておく。

「そう来たか、って感じね。さすが、上杉さんだわ」
「直に黒井さんに来るかも」
「冗談じゃないわ。視聴率の悪さでネットを賑わしてるドラマに、今更?」

少々憤慨気味で言葉にしてからこっちを見て、ため息を吐いた。

「勇次も業界の駆け引きは、見てきたものね」

そうだな。
まだ大学生で、業界のことなんか右も左もわからなかった。

力のある人が、ずっと君臨するとも限らない。
ちょっとしたことで、潰れていく姿も見て来た。

「出し惜しみしてると言われても、安売りはしないわよ」

高飛車な言葉のようだが、この世界にいると理解出来る。

その言葉に沿うように、努力をし続けなければいけないことも。

*

帰る前にスタジオの階で降りて覗くと、陸朗と秋也、直樹も居た。
そして、ミキサーのヨウさんとタミさんも。

ランプを見れば点いていない。
どうやらレコーディングは、明日に仕切り直しか?


五人でテーブルの上の弁当箱のようなモノをジッと見ている。

何だ……?と思っていると秋也が手でつまんで、パクッと食べた。

その途端、皆が騒ぎ出す。

「信じらんねぇ!!」
「うっそっ」

「いやいや、美味いんだって」
ヨウさんだけが、秋也を嬉しそうに見ている。

「な? 美味いだろ?」
「うん、イケるイケる。陸朗も食ってみ?」
「いや!! 無理!!」
「直樹は食えるだろ?」

おもむろに一つ摘まみ、直樹の口に持っていけば、暴れて抵抗している。

「お前、殺すぞ!!」
「一個くらい食えよっ」

あー、またやってる……。

「おい、煩いぞ」

勇次が部屋に入ると、陸朗が飛んできた。

「リーダー!! 何とかしてっ」

声が裏返ってんぞ。

「何が」

「勇次、食ってみ」

ヨウさんが、タッパを持ってすすめてくる。

何だ、この黒い物体?

「佃煮?」
「バッタ!! 虫!!」
「イナゴの佃煮だよ。うちの田舎から、ばーさんが送ってくれたんだ」
「へぇ~。有名なヤツですよね」

勇次が一つを摘まんで口に放り込むと、くっ付いていた陸朗が首をブルブルと振りながら、後ずさるようにゆっくりと離れて行った。

「美味い」
「だろ?」

「信じらんねぇ……」
「さすがとしか言えねぇ」

直樹と陸朗が、思いっきり引いてる。

「美味いぞ? 食ってみろよ」
「真面目に美味い?」

タミさんが興味ありそうな顔に変わって聞いてくるから頷いた。

「あ、イケるわ」

タミさんがムシャムシャと噛み砕いてると、直樹と陸朗が更にくっ付いて首を振りながら身を寄せる。

「食ってみたら美味いって」

秋也が真面目に言うが、二人はまた首を振る。

「虫、苦手だっけ?」
「いやいやいや、じゃなくて!! 食うってのが……無理」

秋也の手の上のイナゴを、二人で怖々ジーッと見る。

「羽!!」
「足!! あしーーっ」

ギャーギャーと二人してうるさい。

「ここ、パリパリして美味いって」
「モデルのお前が虫食うって!!」
「モデル関係あんのか」

「確かに。一番食いそうにない顔してるのに、一番に食うって」

タミさんがゲラゲラと笑う。

「直樹なんか、すぐ食いそうな顔してんのにな」

ヨウさんも笑うが、その直樹と陸朗は抱き合うようにして体を退いている。

「これはコバネイナゴっつてな、イナゴの中でも一番美味いんだ」
「いや、説明いらねぇすよ。多分、この先も食えそうにないし」

直樹が嫌そうな顔をしてる目の前で、秋也がまた食った。

「小エビのから揚げに似てるよ?」

むしゃむしゃと食べながら、無邪気に教えている姿が子供みたいで面白い。

「あ、でも腹のとこは苦味がある」
「ひー、そんな感想聞きたくねぇ」

「……お前もう、こっち来んな!!」
「なんでだよっ」

嫌がる直樹に、秋也がベタベタとくっ付いていく。

「何で虫を食うの?」

騒ぐ二人をよそに、陸朗がボソッとヨウさんに問う。

「バーカ。海のない地域じゃ、魚介類が不足すんだろ。大事なタンパク源を摂るための昔の人の知恵だ」

「ヨウさん……寄生虫いるかもって書いてるよぉ」

陸朗がスマホで検索して、食ってもないくせに何故か半泣き。

「例えいたとしたって、パリッパリに揚げて熱処理してんだろ。んなこと言ってたら、魚も肉も食えねぇぞ」


「陸朗って神経質だったっけ?」

秋也の問いに、思い切り眉を顰める。

「普通だよっ。お前のメンタルが丸太なんだろ!!」

キレる陸朗に、首を傾げる秋也。


イナゴの佃煮で盛り上がってるところに、携帯が震える。


隼だ。

― どこ?

― 事務所

― 仕事?

― いや、帰れるけど。どうした?

― 電話していい?

― いいよ

すぐに携帯が鳴る。

『ゆーじ』

いきなりの甘えた声に、口元が緩む。

「どした?」
『疲れた。美味いもん食いたい』
「何食いたい?」
『美味い酒と、刺身』
「じゃ、信濃行くか? 他、行きたいとこあんなら……」
『信濃行く』
「わかった」

ブツッと音がして、切れた。


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イナゴをディスってる訳では御座いませんので、お許しを。
都会男子の反応は、こういう感じ。
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