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「● 勇次と隼☆番外編」
俺たちのままで

俺たちのままで 13

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事務所で川原と共に書類を確認しながら、ミーティング。
途中で黒井も参加して、ロックフェスの出演書類にサインをした。

「次のドラマの曲なんだけど、この辺までに上げて欲しいって」

スケジュールと照らし合わせながら、ペンで指される。

「了解」
「これが梨花ちゃんのデモテープ」

歌うのはアイドルからの脱皮に成功した富阪梨花だ。
歌唱力にも定評があり、五年前にグループから脱退してからはソロの歌手としても人気がある。

「健太郎レベルだと、何でも来いだろうけど」
「あいつは別格ですよ」
「この間、ホイッスルまで出したってネットで話題になってたわ」
「あー、ライヴででしょ? あれやり方によっちゃ声帯痛めるから普段しないんですけど、クロエと一緒に盛り上がったから」
「ハスキーボイスからは想像できないわよね」

雑談を交えながら話しをしていると、おはようございます……と声がした。
そこに立っていたのは、さっきまで話していたドラマに出演予定の加藤だ。
数年前に秋也と香水のモデルをやった、三村に何処か似たモデル出身の俳優。

日本では残念なことにお蔵入りになってしまったが、あの瀧田と秋也というネームバリューでステップアップにはなっただろう。
本人の頑張りもあり、着実に俳優として歩んでいる。

「おはよう」
「曲の打ち合わせですか」
「そう。準主役おめでとう」

主要な役の数人は、決まっていると聞いた。
うちの事務所からは加藤と、その加藤のバーターで新進女優、そして俺の作る曲だ。

「まだゴールデン枠の主演は遠いですけどね」
「何言ってるの。クレジットでは三番手で上がるんでしょう」

黒井に窘められて、肩を竦める。

「子持ちの役なんて初めてなんで、姪っ子でイメージトレーニングですよ」
「あー、分かる。俺もここ最近、時間の空いた時に公園に行ったりしてるよ」

勇次の言葉に加藤が目を剥く。

「え、顔さしませんか?」
「いや、そうでもない」

ダテ眼鏡で簡単な変装をしているのだと答えれば、黒井が眉をしかめる。

「怪しまれるでしょう?」
「うん、職質受けたことある」

ベンチに座って子供達を見ながら、自分の幼い頃を思い出しているのだと言えば、皆が何故かドッと笑う。
まぁ、自分の……というか、隼の幼い頃だけど。

「勇次の子供の頃って、想像つかない」
「あ。写真持ってますよね」

行動を共にすることの多い川原が言ってくるから、勇次は手帳に挟んである、隼と一緒に写っている写真を取り出した。

「うわ……。本当に小さい勇次。頭、今よりクリクリで可愛いじゃない」

黒井が目を剥く横で、加藤も覗き込む。

「わ……可愛い。隣は弟さんですか?」

俺は末っ子なんで、弟は居ないんだよ。

「いや、幼馴染」
「曲作りのために持ち歩いてるんですね。俺も、姪っ子と写真撮ろう」

曲作りのために実家から持ち出したのは、もうずっと前。
でもそこからも大事に手帳に挟んで、時々眺めているのは内緒だ。

「加藤くん。舞台の脚本、上がってきたよ」

加藤のマネージャーの壬生(ミノウ)から呼ばれ、頭を下げて向こうへ行った。

「加藤くん、舞台好きだなぁ」

川原が台本を手に取って嬉しそうな顔をしている加藤を見ながら呟く。

「テレビの方に本腰入れたら、もっと知名度上がるんだけどね。本人は、舞台優先でオーディション受けるのよ」

黒井が困ったとばかりに呟く。
舞台よりテレビに出て顔を売った方が、事務所的には金になる。

だが、舞台の魅力は観客の興奮が手に取るように伝わってくるのだろう。
それはライヴでも同じだから、分かる。

「健太郎にミュージカルの話が来てるんだけど」

思い出したように黒井が言う。

「スケジュールが合って、本人が出たいっていうなら」

バンドでずっと突っ走って来た。
解散する予定はないが、今までよりはスケジュールも詰め込まない方向だ。
それぞれに時間の空きを、好きに使うこともやぶさかではない。


「あ、リーダー!!」

そこへ秋也が現れた。

横にボスン! と座って、すぐにもたれかかってくる。

「重いっ」

何を甘えてんだと肘で押しのけると、久しぶりなのにだなんだとブツブツ。

「多田くーん。秋也の書類持ってきて」

黒井が向こうに居る多田を呼べば、慌てて持ってきた。
多田が目線で示せば、秋也が立ち上がって服を捲って腹を見せる。

「オッケー」

多田のオッケーの言葉に、秋也が拳を上げる。

「リーダーも、見て」

見事なシックスパックが出来上がっている。

「おぉ……絞ったな」

へへ……と嬉しそうな顔をする秋也の腹を、グーで軽くパンチしてやった。
向こうでずっと仕事の合間にメニューをこなし、トレーナーに毎日のように体重や体脂肪などと測って報告していた結果だ。

「それ、隼に見せるなよ」

小声で秋也に呟く。

「は?」

腹が割れてきたと喜んでるのにお前のソレ見たら、また変なスイッチが入る。

「いいから」

勇次の言葉に、少しして意味が分かったのか秋也がフッと笑って頷いた。

あいつも頑張ってるけど、さすがにモデルの体を作るプロのトレーナーが付いてる訳じゃない。
そもそも業種が違うんだ。
体育教師でもあるまいし、ムキムキにならんでも……。

そう思いながらも、この間腹を見せてドヤ顔してた隼を思い出して口元が緩む。

多田と一緒に書類を確認している秋也を見ながら、しかし何でこいつといい隼といい……変なところで競うんだと可笑しかった。

*

「ちょっと、勇次」

打ち合わせが終わって、そのままソファーで曲の流れの部分を確認していると声がした。


誰かと思うと、ヘアスタイリストの香月だ。

「またぁ~……何コレ」

傍に来て、髪先を弄ってくる。

「スタイリスト、何してんのよ」
「いやいや、俺らモデルでもアイドルでもないし」

雑誌や何かのパーティーなどの時はスタイリストが居るが、普段は割と自由にさせてもらっている。

「しかし、勇次もだんだん和真兄ちゃんに似てくるね」
「え……全然嬉しくない」

小さい時はそうでもなかったのにだなんだと言いながら、毛先を真剣に見ている。

香月は長姉の友人で、兄のことも知っている。
高校生だった秋也を事務所に推したのも、香月だ。

「あんたの方がクルクルきついわね」

ぶはは……と笑われてしまう。

「時間あるなら切ろうか?」
「あ、助かる」

ドラマのプロデューサーとの打ち合わせまで、まだ二時間近くある。


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