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「● 勇次と隼☆番外編」
俺たちのままで

俺たちのままで 4

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まだ会社の方の電気が点いていたから覗き込めば伯父が居た。

「伯父さん、久しぶり」

扉を開いて声をかければ、伯父が顔を上げる。

「おー、隼。来たんか」
「智兄は?」
「奥におる」
「旨い焼酎持ってきたし、伯母さんに渡しとく」

伯父に焼酎を見せてから従兄の智兄を探せば、デスクで電話をしていた。

ちょっと待っててという仕草に頷き、壁にかかっているボードを眺れば、文字がびっしりで忙しそうだ。

「久しぶり」

智兄が電話を切って、声をかけてきた。

「忙しそうやな」
「おう。今日、泊まってくやろ?」
「うん」

酒を見せれば、ニヤリと笑う。

「いつまで休み?」
「一応、明々後日まで」
「そしたら、明後日までゆっくりしていけや。大阪、久々やろ? 美味いもん食いに行こう」
「いや……明日、早目に帰る」
「えー、何やそれ」

だってさ、勇次が帰ってきてんだよな。

「また、ゆっくり来るって」
「お前そんなこと言うて、いっつも出張の時のついでやん」

拗ねたような顔に、幼い頃の面影が宿る。

「そんな顔すると、思い出すわ」
「なにを?」
「小さい時、夏休みなんかにこっち来て帰る時の顔とおんなじや」

智兄は年の近い優よりも、俺との方が気が合ってよく一緒に遊んだ。
思えば、優兄は夏休みでも部屋で勉強していたっけ……。

あの頃は面白味の無い兄だと思って、従兄の智兄が本当の兄だったらいいのになんて思ったりもした。
祖父の代からの病院を継ぐことを、幼い頃から背負っていたのに。

その智兄も、こうして父親の会社を継ぐために頑張っている。

「お前が後ろからちょこちょこ付いて回ってたんやろ」
「その俺の後ろを、翔が付いて回ってたな」
「そうそう! ちぃにぃ~って、ベソかいて」

二人で翔がベソをかいている顔を思い出して笑っていたら、また携帯が鳴った。

勇次だ……。
さっき切ったところだってのに?

智兄に手を上げて、電話に出る。

『伯母さん家ついたか?』
「うん、着いたけど」
『さっき言い忘れた。明日、駅まで迎えに行く』

え、なんで?
そう思いながらも口元が綻んでしまうのを、手で隠すように誤魔化す。

「分かった。帰る時、電話する」

電話を切ると、智兄がジッと顔を見て来る。

「勇次?」
「そう」
「何て?」
「……別に」
「ふ~ん」

ニヤニヤとする智兄に、照れ隠しに中指を立ててやる。

「先生がそんなことしちゃいけません」
「うるせ」



「あら、隼。来てるんやったら、母屋に来なさいな」

そこへ伯母が顔を覗かせた。

「伯母さん、久しぶり」
「お母さんから電話あったよ。相変わらず、過保護なんやねぇ」

やっぱりか。
母さん……俺、いくつだと思ってんだよ。

隼が苦い顔をすると、伯母が笑う。

メッセージのアカウントを教えたら、意味不明のスタンプとか送ってくるんだよな。
まぁ、元気かどうかってのも分かるからいいんだけど。

「まぁ、一番手のかかった次男坊やし。あ、ご飯は?」
「食べてきた」
「じゃ、お風呂沸いてるから入り。泊まるよね?」

頷けば、明日は夕飯食べて帰るかと聞かれる。

「いや、昼までには出る」
「休みちゃうの?」
「……まぁ、そうなんやけど」

歯切れの悪い答え方に、伯母の眉がしかめられた。

「久々に会うた身内より、勇次の方を取るねん」

横から智兄が告げる。

「だって! ずっとツアーに出てて、一か月ぶりに帰ってきてんだって」

隼の言葉に、智兄と伯母が目を合わせた。

「ごちそーさま」

ニッと笑う伯母に、隼が片手で髪をガシガシと掻いた。

*

風呂に入り、伯母が作った酒のつまみで焼酎を飲んでいたら、伯父が母屋に帰ってきた。

「先にやっとんか」
「おとん、先に風呂入りや」
「そやな」

結婚の決まった、智兄の婚約者の写真を見せてもらう。

「お、べっぴん」
「やろ? 三年口説いて、やっと結婚のオッケーでたんやて」
「おめでと。よかったじゃん。ここの会社、手伝うん?」

「それがねぇ、しばらくは辞められんらしいんよ」

伯母が困ったというように、口を出してくる。

「そやからっ。いずれは……ってことで話終わってるやんっ」
「もー、怒らんでもええやないの」
「おかん、そこは口出しせんといていうてるやん」
「しばらくは辞められんって事実を言うただけやないの。どこがアカンのよ」

母と息子が、何やら小さなバトルを開始した。

高校生の頃、ここにしばらく世話になっていた頃と同じ。
変わらない母子に、隼が小さく笑いながら伯母の作った出汁まき卵を口に入れた。

***

勇次が部屋で曲作りをしていると、デスクの上の携帯が振動で動く。
隼からの連絡待ちのつもりで、視界に入るように傍に置いていたのだ。

『俺。今から、新幹線乗る』
「遅っせーな」
『智兄の彼女が来て、すっげー話す人で。帰るタイミングがつかめなかったんだよ』
「何時だ?」
『六時過ぎ』
「オッケー」

電話を切って、大きくノビをする。

昼過ぎに起きて、とりあえず風呂に入り、事務所で打ち合わせして帰ってきた。
それから曲作りをしていたが……大して進んでない。

勇次は何気にスケジュールを書き込んである手帳を手に取って、カバーに挟んである写真を取り出す。

二人の幼い頃の写真だ。

幼馴染の曲作りの時に実家で探してからずっと手帳に挟んであって、こうして時々眺める。

四月生まれの俺が四歳で、三月生まれの隼が三歳。

「小っせーな、はやと」

自分だって四歳だが、隣の隼よりずっと大きい。

「かっわいーなぁ……」

小さな隼は、生意気そうな顔だ。

他の子と揉めると力では負けるから、相手を蹴ってから俺の後ろに隠れてたんだよ……あいつ。

そんなことを思い出しながら、ついククッと笑いが出る。

「ゆーじ、俺を守って」
なーんて……。

……あれで既に、ロックオンされちゃってたのかもな。

自分の子供が欲しいなんてのは無いが、隼のミニチュアが居たらなぁ……なんてことは、たまに思う。
そうしたら、抱っこして頭グリグリしてブチュっとチューしまくるんだけどな。

勇次は写真をしばらく眺めてから、大事に手帳に戻す。

携帯でアラームをセットして、再び曲作りを開始した。


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勇次、園児萌え発動 ←注:隼のみ(。・w・。 )
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