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「●内野と浩太☆番外編」
陽だまり

陽だまり 16

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一緒にモツ鍋を囲みながら、内野はビールを飲む。

「美味いな」
「うん」

浩太もニコニコして、モツと野菜を頬張る。

「いっぱい食べたら、胸囲も増えるぞ」
「それ、太るって言うんじゃないの?」
「ちょっとくらい太ったって、若いからすぐ戻る」

一緒に美味しい物を食べて他愛のない会話。
それだけのことで、こんなに気持ちが和める。

「あ、そうだ」

浩太が二―ッと笑って立ち上がり、鞄からゴソゴソと何かを取り出した。

「これ」

渡されてみると、英会話の本だ。

「CDも付いていて、仕事から帰ってきたら流してるんだ」
「へぇ……」

ペラペラとめくってみる。

店で英語で話しかけられることがあるとか言ってたからか……。

「それ、誰が選んでくれたと思う?」

浩太の問いに、浮かぶのは店長くらいだ。

「店長か?」
「違う」
「……緒方くんとか、あと先輩か?」
「ブー」

何だ?勿体ぶるような相手か?

内野が首を傾げると、またモツ鍋を食べ始めた。

「誰?」
「牧村さん」

え?

内野が固まると、浩太がプッと笑った。

「本屋さんで偶然、会ったんだ」
「……あの本屋?」
「うん」

そうか……。
あの書店は、色んな教材も豊富だ。

俺も学生時代は、よく通った。
教師である牧村など、それこそ頻度は高いだろう。

「他の本持ってレジに並んでたら後ろから膝に衝撃が来たんだ」
「……は? 膝?」
「いきなり膝カックンされた。牧村さんに」

あぁ……。

内野はいかにもやりそうだと思って、笑う。

「俺もそれ、やられたことある」
「声かける前にするんだもん」
「尻蹴られるヤツもいたぞ」
「えー」

今も変わらないのか……。
まぁ、もう学生時代とは違うだろうけど。

ゼミでトロい奴には、たまにやってたよな……。
牧村を怖がって、必要以上に近寄らない奴もいた。

それを横で見て、笑いを耐えたっけ。

色んなことがいっぺんに浮かび、内野は笑いが込み上げてくる。

懐かしい……とても、懐かしい思い出。

あの頃の自分を、今は心穏やかに振り返ることができる。

必死に追いかけて、追いかけて。
それでも、本人にしつこいと思われたくなくて、アッサリと軽く口説いて。
本当はその体ごと抱きかかえてしまいそうな想いを押さえこんで。
時間をかければ、この腕の中に落ちてくると格好つけて。

結局、あえなく終わりを告げられても、最後まで格好をつけた自分を後悔した。


その相手が、いま俺が好きな相手に、膝カックンかよ……。

内野は込み上げる笑いが治まらず、手で顔を覆って小さく肩を震わせる。


「そんなに可笑しい?」

浩太の声がするが、顔を覆ったままコクコクと頷く。

「変なの」

ちょっと拗ねたような声に何とか笑いを耐えて、浩太を見る。

「拗ねるな」
「だってさ、内野さんの中じゃ牧村さんは今も特別だって感じ」

そうか……。うん、そうだな。
牧村はやっぱり、俺には特別な位置に居る。

好きで、好きで、堪らなかった人。
俺が初めて、本気で惚れ込んだ相手だ。

「認めるよ」

内野が正直に答えれば、上目遣いでジッと睨んでくる。

「ヤキモチか」
「うん」

フッと笑みを零して、内野もまた鍋を食べ始めた。

「でもな、浩太のおかげでこうして笑えるんだ」

浩太は黙って聞いている。

「牧村のことをちゃんと自分の中で昇華出来て、学生時代の思い出として懐かしめる」

何度だって言うよ。

「それが僕のおかげ?」
「そう」

浩太には、分からなくて当然だ。

初めて好きになった相手は俺であり、そこから恋愛へ。
失恋だって、想像するしか出来ないだろう。

忘れられない苦さを。
他の男と一緒に居て幸せに笑っているだろうと自虐めいた想像をして、悔しい思いを。

好きだった相手の幸せなのに、それを喜んでやることができない自分の不甲斐なさを。

ダメになって、俺のところへ来ないかと願っていさえいた。

それが今は……。
幸せでいて貰わなければ困るという、何とも自分勝手な思いへと変わった。


「浩太を好きになって、こうして一緒に美味しいもの食べながら色んな話をして。それが、何よりの幸せだって思うんだよ」

今が幸せだと思えるから、懐かしさと一緒に笑いが込み上げた。

追いかけた恋は破れたけど、それ以外にだって楽しいことも苦しいこともあったのだ。

単位、試験、レポートという学生の本分。
ゼミだけじゃなく、たまには教授の学会の手伝い。
論文のまとめ……。

数日こもり、徹夜することだって珍しくなかった。

そんなこんなの中に、牧村が居る。

学生時代の数ページに渡って、そこに居るのだ。

きっと……牧村の中にも、俺が居る。

あの時、胸を拳でコンコンと叩いてそう言ってくれた。

思えば。
目の前の浩太は、あの頃の俺達と変わりない。
成人式を迎えて、大人の仲間入りをしたと思っていたあの頃と……。

「僕のこと、好き?」

確かめるように聞いてくる浩太に、大きく頷く。

時々こうやって確かめてくるのは、俺がまだ浩太を庇護欲のかたまりで接してるのを感じ取ってるんだろうと思う。
でも、こればかりは出会ってからの今までを思えば、すぐにどうこう出来ない。



「大好きだよ。牧村と浩太が並んで手を差し伸べたら、俺は迷いなく浩太の手を取る」

実際、そんな場面などは有り得ないにしろ、浩太に一番分かり易い例えだと思ってそう言った。

「ほんと?」
「俺は、浩太と一緒に居たいんだ。お前が笑ってるだけで、俺も嬉しい」

「僕も内野さんと一緒に居たい。内野さんが笑ってると、僕も嬉しい」

同じことを言って、ニッと笑う。

「浩太と居ると、仕事で疲れても復活するんだ。お前は俺に、日なたを思わせる」
「日なた?」
「うん。ポカポカと日向ぼっこしてるような感じかな」

少し照れたような顔になり、首を傾げる。

本当だよ。
お前と一緒に居るだけで、笑ってる顔を見ているだけで、ポカポカと暖かいんだ。


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