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「●内野と浩太☆番外編」
陽だまり

陽だまり 8

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「お待たせ」

内野がバーのカウンターで飲んでいると、長友が来た。

「とりあえずビールで」

「お疲れ」
「久しぶりだな。正月以来か」

ずっと忙しくて、今日はたまたま少しだけ早く終わった。
なのに浩太は、他の男とイタリアンを食べに行ってしまった。

前から約束していたのに横から自分も行くとはいえないし、時間的にも間に合わなかった。
真っ直ぐ帰る気にもなれず、長友に声をかけたのだ。

駅の乗り換え場所にあるバーは、昔から長友とたまに来る場所だ。

「浩太は?」
「今日は他の男とイタリアン食べに行った」
「……それで俺かよ」

長友が呆れたように笑う。

「いや、お前とも久しぶりだし」
「取って付けたように」
「江東にも声かけたけど、仕事だって」
「あいつはここの沿線じゃねぇだろ」

矢野はまだ地方勤務だが、春先には戻って来る。

「ま、また矢野が帰ってきたら飲もうや。お前ん家でもいいけど」
「また浩太をこき使う気かよ」

正月に毎年、内野の家で集まるのだが、今年も浩太が動き回っていたのを思い出した。

「一番チビはパシリなんだよ」
「虐めるな」
「可愛がってんだろ」

そうだな。
皆、浩太を可愛がってくれる。
浩太も嫌な顔をせず、動き回ってくれて……。

幸せな気分で正月を迎えられるのは、浩太のおかげだ。

これから先も、ずっと独りなのかもしれないなんて、ちょっとしたセンチな気分に陥るのが正月という家族団らんの行事。
例え実家に帰って家族と居ても、ふとそんなことが頭を過ることがあった。

「で、その浩太は他の男と飯食いに行ってんのか」
「そう。コンビニでバイトしてた頃の先輩」
「へー。まだ付き合いあるんだ」
「あいつ、コンビニでも結構可愛がられてて」
「あー、分かるわ。何か一生懸命にちょこまか動いてるところとか」

そうなんだよ……と答えれば、何で不満そうなんだと言われた。

いや、不満なはずがない。
可愛いんだから、可愛がる……のは、当然だ。

「しかし、他の男と……って」

くくっと長友が笑う。

「他にどう言うんだよ」
「友達」
「……そうだな」

ボソッと答えれば、長友がカウンターの上の腕に額を乗せて笑う。

「何がおかしい」
「……いや、普段クールなお前のそういうみっともない処が、いいなと」

みっともない?

え……。

「格好悪いのか」
「いや、いいよ。可愛いわ」
「気持ち悪いこと言うな」
「あ? それ言う? 俺のこと好きだったとかココで告白ぶちまけといて」

そうだったな。

俺は、いま目の前で笑っている長友が好きだったんだ。
高校生の頃、彼女が出来たと照れる顔に勝手に傷ついたりして。

想いを知られるくらいなら、死んだ方がマシだと本気で思っていたあの頃……。


長友の顔をジッと見る。

改めて見ても、長友の顔の系統は牧村だし、浩太だ。

「人の好みって、面白いな」
「好み?」
「俺が好きになるヤツは、小学校の時に好きになった奴からブレてない」

お前は顔で好きになるのかと言われて、眉をしかめる。

「バカ。それはただの取っ掛かりだろ」

たんに好みなだけなら、そこまでで終わる。

見た目で惹かれ、そこから興味を持って……相手を知って。
いつの間にか恋心になって行く過程。

相手がノンケだったら、深く関らないように。
好きになったらヤバイ……そう思って。

浩太の時もそうだった。

……牧村だけだ。
同じセクシャリティーというだけで運命だとまで思い、必要以上に浮かれて……結局、玉砕した。

「何、思い出してんだ?」
「あ……いや、失恋した相手をな。同じセクシャリティーってだけで、浮かれてた自分を思い出してた」
「イタイ自分をか」
「うるさいよ」

長友が酒をお代わりして、煙草に火を点ける。

「セクシャリティーの垣根って、そんなに大きいモノか?」
「……そうだな。俺達にとっては、少なくとも物凄く高い壁だ」
「そうか」
「空が分断されるくらいにそびえ立つ壁。……そう思ってたんだけどな」

内野が酒を見つめながらボソリと言えば、長友はテーブルに置かれた酒に口をつけた。

「じゃ、浩太はその壁をブチ壊したんだ」

そう言われて、浩太が本当に壁を壊して現れる姿が脳裏に浮かび、内野が小さく吹き出す。

「何が可笑しい」
「……いや、本当にそんな感じでぶっ壊してきたから」

今思っても、壁にヒビが入ってくるのが目に映るようだった。
それでも俺は、立ち竦んで動かず、それを見ていた。

「まぁ、普通に怖いよなぁ……」
「え?」

「俺がもし、十八の女子高生に向かって来られたら、やっぱり怖い」
「だろ?」
「一時の熱にこっちが本気になっちゃバカを見るって思っちまうよな」

そうなんだよ。
それも相手はノンケの真っ新。
恋愛もしたことのない相手。

「理由がどうあれ、何かあった時はこっちが悪者になるしな。自己保身を先に考えちまう」
「あぁ」
「煽っておいて何だけど、受け入れたお前も凄いわ」

「バカを見てもいい……って、そう思ったんだよ」

浩太の真っ直ぐな思いに応えたいと思った。
受け入れないで後悔をするより、頑張ってみようと思ったんだ。
それでダメになっても、頑張ってみたいって思った。

今だって浩太の気持ちの上に胡坐なんてかけない。

「でも、相変わらず”内野さん、好き好き”ビーム出てるけどな」

それはちゃんと伝わっている。
毎日会う訳じゃなくても、寝る前には毎日メッセージが来る。

会える時は、嬉しそうな顔で……。

「なーにニヤけてんだ」

え……と思って長友を見ると、ニヤニヤしていた。

「お前こそ」
「俺は、嬉しいんだよ。単純に」
「……そうか。ま、お前も頑張れ」
「あー、ほんと出会いないんだよなー」

そう言って、クライアントに紹介するとしつこく言われるのだと愚痴る。

「独身でいると、これから増えるんだろうな」
「そりゃ俺もだよ。会社でカムアウトしてる訳じゃないし」

結婚という形を取れない以上、それはずっと付いて回る。

「そうか……お前だけじゃなく、浩太もだな。そういうことを、相手に課せることも受け入れたってことになるのか。うわー、そっちの方がキツいな」

その通りだ。
自分だけなら、別にいい。
何を言われたって、そんなものは俺が生まれた時からあるようなものだと思う。

「大人になったな、長友」

そこの部分に気付いてくれたことが、単純に嬉しい。

「あぁ、そうとも」

グラスを持ち上げてこっちを見るから、内野も同じように持ち上げる。

「三十路に向かって、乾杯」
「まだ二十八だろ」
「俺は二か月後に二十九だ。お前も同じ年だろうが」

互いにフッと笑って、グラスをカチンと合わせた。


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