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「●内野と浩太☆番外編」
陽だまり

陽だまり 4

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目の前の浩太は運ばれてくる天ぷらを一つずつ味わう。

「美味いか?」

うんうんと頷きながら、満足そうだ。

こんな顔をしてくれるなら、何でも食べさせてやりたい。

……なんて。
自分だって、大手とはいえただのサラリーマンだ。
年収にだって天井がある。
お金に糸目をつけない、とまでは偉そうなことは言えないけど。

「このオクラ、すっごい美味しい。今度、家でも作る」
「天ぷらなら、残り物でも何でもいいもんな」
「うん。内野さんの家の冷蔵庫の掃除。すぐダメにしちゃうし」
「……すまん」

揚げ物のコースで油っこいからどうかと思ったが、吸い物や茶わん蒸し、造りが合間に出てくる。

思えば、こんなデートっぽい食事は、他ではあまりしたことがない。

学生時代に恋人と呼ぶ存在がいた時もあるけれど付き合いは短く、あとは年上の人と適当に遊んだり……。

大学時代に牧村を好きになってからは、恋愛まで行く相手はいなかった。
その牧村はこんなコース料理なんて誘おうモノなら、口説かれると構えられて大抵は気軽に誘える居酒屋辺り。


好きな相手の嬉しそうな顔を見ながら、二人で美味しい外食を楽しむ。
片想いではなく、ちゃんと自分が特別な存在だということを示してくれる相手と。

こういう小さな幸せを大切にしていきたいと、改めて思うのだ。


「来月の新しいメニューの候補が何点かあって」
「また、休みに食べ歩きか?」
「うん。スィーツ系はあんまり分からないから女の子に任せるけど」

同期の緒方と休みが合えば、大抵は一緒に何かを食べに行く。
コストも考えなきゃいけないから、毎月となると案外難しいのだそうだ。

「お先に帰ります」

声がして見れば、さっき入口近くに居た二人だ。

目が合って微笑んで頭を少し下げると、二人で一緒にペコリ。

「真柴さん。前に言っていたイタリアンの美味しいお店、教えてもらえませんか?」

浩太が思い出したとばかりに聞けば、快く教えてくれている。
店じゃ、あまりお客さんと喋られないもんな。

ピザが凄く美味しいのだという言い方が、可愛らしい。

「店のランチにピザを出すかもしれないんで、色々食べて来いって言われてるんです」
「そうなんだ」
「あ、余計なこと言っちゃった。企業秘密でお願いします」

浩太が慌てて人差しを唇にあてる。

「……大げさだな」

ボソッと呟くと、背の高い方の子と目が合った。

「うんっ。絶対言わない」

もう一人が真顔で答えるから可愛くて笑いが出そうになって耐えた。
……のに、代わりに背の高い方の子がブッと吹いた。

スーツ姿だが、まだどこか板についていない様が若さを醸し出している。

院卒の自分だって社会に出てそう年数は変わらないだろうけど、こういう瑞々しさはもうないだろうな。
会社でも、そつがなくて可愛気がないって先輩に言われてるし。

挨拶を交わして、二人が店を出て行った。

「仲良しだな」
「そこまでじゃないよ。だってお客さんだから、あんまり店で喋る訳にいかないし」
「ピザの店、行くのか?」
「内野さんと行きたいけど、今は忙しいでしょ?」

そうなんだよなぁ……。
来週も、再来週も、予定が立たない。

「来月なら行けると思う」
「ダメ。ミーティングに間に合わないもん」

すげなく断られてしまった。

*

食事を終えて電車に乗り、足を伸ばして夜遅くまで開いているスーパーで買い物をした。

明日は休みだから朝食と昼の材料と、ちょっとした夜につまむモノだ。

家までの道をブラブラと歩いていると、浩太がこっちをジッと見る。

「どうした?」

首を振って何でもないと言うから、首根っこを掴んでやった。

「くすぐったいっ」
「何でもないことはないだろ」

「……内野さんと一緒に歩いてるなーと思っただけ」

……何だ、それは。

首から手を離して顔を覗き込むようにして歩くと、軽く突き飛ばされた。

「やめてよっ」

あぁ……抱き上げて、そのまま連れて帰りたい。

この何とも言えない気持ちは、何処か父性に通じてるのだと思う。

どんどんと幼い部分が減って行ってるのを感じるから、余計にかな。

大人になって行くのを待つし、楽しみにもしてる。
けど、何処か寂しい気持ちもある。

一生懸命に背伸びをしようとする浩太の頭を、上から押さえつけてやりたくなる衝動。

ゆっくりでいい……そう言ったって、本人は早く対等になりたいのだ。


「寂しいなぁ」

ボソッと呟くと、今度は浩太が顔を覗き込んでくる。

「何で?」
「浩太がどんどん大人になって行くのが」
「なってる?」

寂しい……より、大人になって行ってることの方に反応する。

「なってるよ」
「どこが?」
「考え方は元々しっかりしてたけど、見た目も」

首を傾げながらも、嬉しそうな顔だ。

「浩太と初めて会った時、十六だったもんな」
「すぐ十七歳になった」

そういうことじゃないと笑うと、口を尖らせる。

「俺は二十五くらいで、あの頃から変わったか?」
「う~ん……。多分……」

歯切れの悪い言い方に、またクスッと笑う。

「三年と半年くらいの間に、浩太は大きく変わったもんなぁ」

浩太は高校生から社会人となり、生活環境の大きな変化。
俺は出合った頃から社会人で、今も同じ場所に住んでいる。

「俺も少しは変わってるだろうけど、浩太から見れば何がどうって訳じゃないだろ」

そう問えば、こっちを見る。

「……最初から大人だったし」
「前にも言ったと思うけど、少しだけ時間の流れが違うんだよ。俺も三十を超えてきたら、また変わってくるだろうけど」

ふ~ん……と、分かったのか分からないのかどっちなんだというような返事。



「俺は怖かったんだ」
「何が?」
「大人になっていく浩太が」

分からないとばかりに目を瞬かせる浩太に、微笑みかける。

「世界が広がって……俺のことは、どんどん後ろに追いやられて行くんじゃないかって」
「そんなことないっ」

「うん。お前が俺を見る目は、何も変わらない」

ありがとうな……と言葉にして言えば、浩太がコートの端をギュッと掴んできた。


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