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「●内野と浩太☆番外編」
陽だまり

陽だまり 1

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内野が部屋に帰ると、テーブルの上には食事の用意がしてあった。

会社を出る時に携帯をチェックして知ってはいたけど……嬉しいもんだな。

コートを脱いで風呂と暖房のスイッチを入れ、コンロの鍋に火を点けた。

今日、浩太は早番だったから一緒に食べるつもりで待ってくれていたのに、トラブルで終電ギリギリになってしまった。

今回に限ってじゃない。
もう、何度も何度もだ。

一人で食事の用意をして帰りを待っている姿を想像して、ごめん……と心で呟く。

文句の一つも言わない浩太に、申し訳なく思う。
同僚が忙しさでドタキャンを繰り返し、彼女にフラれたのだと聞いた後だから余計に。

父親もそうだったと言っていたから、そういうものだと思っているのだろうか。

テーブルの上にラップをかけて置いてあるオムレツや野菜の煮物をレンジに入れて、白飯を椀に。
温まった味噌汁と、冷蔵庫にちゃんと切ってある漬物。

スーツのままで手を合わせて、内野は味噌汁を一口。


温かい……。


柔らかくなった大根を箸でつまんで、ジュワ……と来る旨味に、目を閉じる。

別に珍しい味ではないのに、浩太が作ってくれたっていうだけで旨味が幸せに直結する。

温め過ぎて少し硬くなってしまったオムレツ。
付け合わせの野菜は、しなびてしまった。
別の皿に入れてレンジにかけるのだと言われたことを思い出したが、もう遅い。

学生時代は、それくらいのことしていたのに。
なんかだんだんダメダメになってきてないか、俺。
独り暮らし歴、十年になろうとしているっていうのに。

煮物の中に入っている竹輪は、冷蔵庫の残りモノ。
浩太らしい……と、口元を緩ませながら口に入れた。


食事のタイミングを逃すと、腹が減り過ぎて食欲が減退する。
今の忙しい時期、いつも少し痩せてしまうだけに食事の有難さが身に沁みる。


内野はいつになくガツガツと食べて、浩太が「一緒に暮らそう」といつ言ってくれるのだろうかと頭を巡らせた。

そして、毎日美味い飯を食いたいからって……と口元が綻びる。

いやいや、違うだろ。
それだけじゃない。


浩太はまだ成人したばかりだ。

自分なりに頑張りたいと思う気持ちは、分かる。

俺は、甘やかせるしか出来ないからなぁ……。
周りに言われるし、浩太本人にも言われる。

けど、無意識にそうなってしまうんだから気をつけようがない。

可愛いんだから、しょうがないだろ。

*

風呂から上がって、髪を拭いていると携帯が鳴った。

あ、内野さんだ。

浩太は洗面台の横に置いていた携帯を取り、メッセージを見る。

―― 飯、美味かった。ありがとう。

それだけの文面に、嬉しくなる。

―― また、作る。

―― それより、来週にでも美味い飯食いに行こう。

―― 行く。

―― もしまたトラブルがあったら、ごめんな

―― 大丈夫!

携帯を持ったまま移動して、布団の上に寝転がる。

明日は早番だから、顔も見ないで帰ってきた。

寮とはいえ、アパート形式だから厳しい門限もなく、外泊もわりと自由だ。
それが良いと言って、向こうの新しい寮からこっちに移ってきた人もいた。

但し、いくら自由でも女の子を連れ込んだり、夜中に煩くしたりはダメだけど。

内野と五分ほどメッセージを送り合い、そのまま電話になった。

「はい」
『布団の上だろ』
「うん」
『俺も、もう寝る』
「来週、楽しみにしてる」
『浩太の食べたいの、行こうな』

仕事でクタクタに疲れているだろうに、その優しい声に心が溶ける。

「うん」

内野さんが食べたいモノがある時は、自分から言ってくる。
こういう時は、僕がちゃんと考えて食べたいモノを言えば、喜んでくれる。

『今の時点で、確実な約束は出来ないけど』
「知ってるよ、そんなの」
『悪いな』
「お互いに無理しないって、約束した」

シフト制の自分だって、時々変更になる。
トライアンドエラーの仕事をしている内野さんなんて、もっともっとだ。
そんなのは出会った頃から見てきたから、少しは分かってるつもりだよ。

これから先、責任だって重くなってくるってことも。

僕は今も、考えることをやめない。
それを面倒だとも思わない。

『そうだったな』
「そうだよ」

もう、充分に甘やかせてもらってる。

『じゃ、お休み』
「おやすみなさい」

電話を切って、しばらくメッセージのやり取りの画面を眺める。

そう遠くない距離。
自転車に乗って十五分程の。

このまま部屋を出れば、顔を見ることが出来る。

でも、明日は二人とも仕事だ。

こんな夜中に会いに行けば、帰る時に心配される。
内野さんの過保護は、今も治らないもん。

着替えを持って泊まりに行くのもダメ。
内野さんに聞けば、おいでって言ってくれるだろうけど。

どっちかが休みならともかく、僕も内野さんも明日は仕事。


内野さん……。

僕は今も寝る前に、毎日内野さんのこと考えるよ。



浩太は起き上がって歯を磨きに洗面所へと戻り、用をたしてキッチンで水を飲んでから部屋の電気を消す。

布団に入って目を閉じて……まるで、内野からの宿題のように何を食べに連れて行ってもらうかを考える。


そういえば……。
学校の宿題は嫌だったのに、内野さんから出されるのは嬉しかったんだ。

それを解いて持って行けば頭を撫でてくれたり、頑張ったなって言ってもらえたからかなぁ……。

構ってもらえるのが、ただ嬉しかった。

浩太は当時のことを思い出しながら、くすぐったい思いに目を閉じて眠りに入って行った。


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今回はウッチー&コウタの日常SSです(*^^*)
ちょーっと仕事詰まって来る時期のため、もしかして…毎日更新できないかもしれません。
なるべく毎日UPを目指しますので、よろしくお願いしますm(__)m
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