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「●冬吾と澪☆番外編」
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「……はぁ、めっちゃ緊張したぁ……」

庄野が顔をゴシゴシと擦りながら言う。

「お前、コッキコキだったぞ」
「だよな」

苦笑いしながら歩き出したから、後を追う。

「わ、ココ。スゲーッ」

澪が目を剥くが、冬吾も同じだ。

「だろ? うちの今の最新。ヨーロッパ風でまとめたんだけど、これが大好評なんだよ」
「高そう……」
「それがそうでもないんだ。これ特殊フィルム貼ってあるだけ」

「え、マジ?」

二人で同時に声を上げて、大理石のようなチェストに手で触れる。

「あの佐倉さんが取ってきたんだ。頑なな相手を一年かけて口説き落としたシロモノ」
「へぇ……」
「今回の展示会でも、一番食い付きがいい。用途が広いからさ、お前らもまた見る機会あると思うよ」

「何でお前がドヤ顔してんの」

澪のツッコミに冬吾が小さく笑う。

「俺、業者用の建材も見たい」

冬吾も興味が湧いて来て言えば、嬉しそうな顔で案内してくれた。

*

「来てくれてありがとうな」

出口で土産の入った小さな紙袋を渡されて、庄野が礼を言う。

「いや、勉強にもなったし、何より楽しかった」
「うん。いつかマイホームとか本気で考えたもん」
「その節は、是非当社を」
「ずっと先の先だけどな」

「今日は有難う御座いました」

三人で話ていると、佐倉が来た。

「あ、いえ。楽しかったです」
「そうですか。良かった」
「普段デスク作業なんで、実物を見る機会があって勉強になりました」

冬吾が佐倉に向かって言えば、優しく微笑む。

「真柴さんとは面識がありましたが、御崎さんも同じ業界ですので。また何処かでお会いするかもしれません。その折は、どうぞよろしくお願いします」

スッと頭を下げられ、冬吾と澪も慌てて姿勢を正して頭を下げる。

「では」

佐倉がニッコリと微笑み、スマートにその場を去って行った。

「ひぇ~、カッコイイ……」
「だろ? うちの女子社員にも人気。でも、怖いから誰も近づけない」
「何それ」

澪がクッと笑うが、冬吾はボーッと見ていた。

「冬吾?」
「あ……いや」
「じゃ、帰るな」
「おう。また飯でも行こうぜ。三人で」

三人で……に、冬吾がフッと口元を綻ばせた。

*

展示場を出て、澪が冬吾の顔を覗き込む。

「冬吾? 何考えてんの?」
「あ……うん。俺、普段デスクに貼り付いてるから外の世界知らないなって思って」
「うん」
「SE希望なんだけど、あの佐倉さんの対応見てて、色々と考えさせられた」

SEになれば、外部との対応が要求される。
元々、自分は人との付き合いが上手い方とは言えない。

今まではそれに対して別段何を思うことも無かったし、現場に行けばどうにかなると思っていた。
けど、あんな風にスマートに、人に好印象を与えることが自分に出来るのかと……。
それも、見た瞬間から相手を惹きこむようなことが。
……そう思ったのだ。

「だって、佐倉さんは営業はじゃん」

澪が何でもないことのように言う。

「うん……」
「お前、営業でトップ目指してる訳じゃないだろ?」
「そうだけど」
「それにさ。俺らより、八年も差があるんだぜ? 出来ないことより、まずは出来ることを一つずつ頑張れ!」

背中をバン!と叩かれ、前のめりになる。

「って、うちの主任が言ってた」

そうだな……。

「あんな短時間で営業力の高さを見せつけられた感は、分かるけど。きっと佐倉さんもさ、いっぱい頭打ってんだよ」
「……偉そう」
「何をっ」

今度は尻を膝で蹴られる。

「俺なんかさ~、毎日虐められてんだぞ」
「自慢みたいに聞こえるけど」
「うっせ。女性不信が日々増えるっつーの」

そうなってくれればいい。
女に気持ちが行かないように……。

「そのまま女嫌いになればいいのに」

思ったことを口にしてみれば、澪がこっちをジッと見る。

「それって俺が女に行かないようにってこと?」

小声でボソッと聞いてくるから、素直に頷いてみた。

「俺も同じこと考えてるよ」
「俺は行かない」

即答してみせれば、え……という顔。

「だって俺は澪以外、興味もったことない」

耳に口を近づけて言えば、澪がバッと離れる。

「……もー、何なのお前」
「本当だよ」

顔の赤い澪が可愛い。

「対人スキルがどうこう言うくせに、そういうことはサラッと来るんだな」
「俺だって、焦ったりするよ。澪の挨拶の仕方一つで、やっぱり外で揉まれて来てるのを実感する」

そう。
恋愛もだけど、それ以上に仕事の部分で。

毎日、色んな人と関る澪は、どんどんそのスキルを上げてきている。

言葉遣いや、挨拶の仕方。
内と外をちゃんと使い分ける術を。

まだまだだって上司に叱られるというけど、俺からすれば随分と変化したと思う。

そしてこれからも、どんどん身につけて行くんだろう。

仕事内容が違うんだから当たり前だって言われたって、何処かで置いて行かれるような気になるのは、極当たり前の感情だろう。
同じ年で幼馴染だったら、平気でいる方がおかしいと思う。

その内、自分の仕事に自信がついてきたら、薄れていくのかもしれない。

「お前がジックリと着実に仕事を覚えて、見えないところで力をつけてる……。それが見えた時、俺もまた焦ると思う」
「うん」

俺は澪と違って、感情が表に出にくいから。
別に隠してるつもりもないし、無理して押し殺しているつもりもない。

性分。

単純な言葉で置き換えれば、多分そういうのが当てはまるんだろう。

「冬吾って、ほんと知らない間に力つけてんだからな~。大学の時、マジで焦ったつうーの」
「そうかな」
「そうだよ。俺が一番焦るのは、やっぱりお前だもん」

そうか。
お互いに相手の仕事を見て、負けられないと思えるのなら。

「さっき佐倉さんが言った、切磋琢磨し合える関係?」
「うん。だって俺は冬吾を見て、努力を重ねるってのを学んだんだと思うし」
「俺は器用なタイプじゃないから」
「知ってるよ」

思えば昔から、澪は外に出て魅力を出す方だった。
そんな澪にずっと憧れて……大好きだった。

取り巻きの多い澪の隣に居られて。
ちょっとした特別扱いが嬉しくて……。

独り占めできるなんて、到底思えなかったのに。

それが今じゃ独占欲丸出しで、言葉に、態度に、出してもおかしくはない。

もう「俺だけにして」と口にしてもいい、澪との関係。

そう思うと嬉しくて、顔が綻ぶ。


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