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「●冬吾と澪☆番外編」
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飲み会もお開きになり、皆それぞれの帰途へ。

最寄り駅の沿線は自宅への乗り換えに不便だから、少し遠いけど皆とは反対に向かった。
同じ方向へ歩き出したのは、庄野と杏果だ。

「杏果はバス?」
「そう。一本で帰れるの」

「俺も一緒に帰っていい?」

庄野が何故か遠慮がちに聞いて来る。

「何で聞くの?」
「え、積もる話もあるかと」

元カレと元カノ、ってことに気遣ってんのか。

「ヤダ。もう、何ですぐそうなるのよ。何年前の話?」

杏果が苦笑いだ。

「ですよねぇ」

杏果を真ん中にして、三人でやっぱり仕事の話をしながら駅まで歩く。

俺と庄野は内定を取れずに焦っていたし、杏果は決まっていた内定を会社の都合で失った。

就活の結果で全ての人生が決まるような気がしていたことを思い出しながら、三人で話す。

「俺、この間さ~不採用通知だらけの紙の中で寝てる夢見た」

庄野の言葉に、自分も似たような夢を見たようなことがあったと告げた。

「いや~、汗かいて飛び起きたね」
「でも、分かる。私も会社に行ったら無かった、って夢見たもん」
「うっわ、キッツ」
「トラウマですな~」
「なんでオッサン口調?」

笑いながらも、そんな記憶もどんどん薄れて行くのだろうと思う。
仕事で煮詰まった時に、思い出すくらいで。

学生時代に勝手に描いていたのとは違う、仕事の現実に日々追われている現状。

「春には三年目だしな」
「後輩に舐められんように」
「だよね~。私もまともな仕事任せられるようになりたいな~」

愚痴なんか、たくさんある。
前向きになんかなれないくらい、凹むことだって。
空回りでエネルギーだけを消耗して、何一つ形にならなかったり。
……会社を休んでしまいたい時も。

多分、みんな一緒だ。

「あ、私はここで」
「バス来るまで一緒にいるよ」
「いいって。大丈夫」
「ダメダメ。あんまり人通りないし」

杏果の乗るバスが来るまで、三人で今度は学生時代のバカ話で笑った。

*

杏果がバスに乗るのを見送って、庄野と駅へ向かう途中で携帯が鳴った。

「冬吾だ」

庄野に告げて電話に出る。

『もう終わった?』
「うん。今、帰ってる途中」
『どこ?』
「M駅」
『迎えに行く』
「は?」
『今、乗り換えのホームなんだ。一駅だけだし。じゃ」
「え……っ」

電話を切られてしまい、庄野と目が合う。

「どした?」

迎えに来るなんて、言えない。
でも、会うだろうしな……。

「あいつの会社この沿線の乗り換えに便利なんだよ。でさ、こっちについでに……。あと、一駅だし」

つい、言い訳がましくなってしまった。

「御崎、来るの?」
「うん」
「お迎えですか」
「いや……違……」
「目が泳いでますぜ、旦那」

庄野の言い方が可笑しくて、クッと笑う。

「まぁ、多くは語らなくても良いですから」

真面目腐って言うから照れ臭くて、俯いて誤魔化した。

「照れんなってーっ」

背中をバシッと叩かれて、前のめりになる。

「照れるって何にだよっ」

澪も負け時と膝で尻を蹴った。

「痛い、痛いっ」

駅までの道を二人でふざけるようにして歩く。
少し酔ってるし、照れくさいし。
庄野も何と言えばいいのか分からないのかもしれない。

冬吾のことをハッキリと言った訳じゃないけど、学生時代もそんな話を少ししたから。
何となく……悟ったのかどうか。

ただ、冗談で冷やかして遊んでるだけかもしれないし。

庄野の人間性はある程度分かっているつもりだけど、聞かれもしないことは言わない。

「思ったより、遠いな」
「けど、俺の方の乗り換えの沿線面倒なんだよ。すっげ歩かなきゃだし」
「あー、あそこの連絡通路長ぇよな。俺は、反対方向で五つ目」
「社宅?」
「いや、ダチとシェアしてる。うちの独身寮、会社からめっちゃ不便な場所にあるんだ。こう、ぐるーっと……」

庄野がいかに沿線上不便な場所にあるのかを力説する。

「なんでそんなとこに?」
「ずっと前に会社が移転して、でも寮はそのまんまって訳」



話をしながらダラダラと歩く内に、駅が見えて来た。

「お……っ、御崎らしき男が」

庄野がニタッと笑うから、肘で小突く。

「見てる、見てる。こっち、スッゲ―見てる」
「うるせーな」

……あいつ。
本当に迎えに来た。

俺は女じゃねぇって。
俺を信用しろって。

少し腹が立ちながらも、やっぱり嬉しくない……とは言えない複雑な心理。

「御崎~、お疲れ。久しぶりだな」

庄野が人懐こく声をかけると、冬吾も久しぶり……と、愛想笑いで返す。

「スーツ姿、カッコイー」
「サンキュ」
「鹿島で頑張ってんだな」
「うん」

庄野が気安く話しかけているのに冬吾は素気ないし、こっちばかり見る。

「澪。帰ろう」
「……うん」
「じゃ、俺は向こうだから、行くわ。真柴も御崎も、また飲もうぜ」
「おう」

手を上げて向こうへ行く庄野の後ろ姿を二人で見る。

「あっ。ショールーム、来いよー」

庄野が振り返って言うから「行けたらな」と返事をした。


「行こう」

冬吾が切符を買って、一緒に改札を抜ける。

向こうのホームでは庄野がちょうど来た電車に乗り込んでるのが見えた。
電車内から手をブンブン振るから澪も振って返すが、冬吾は軽く手を上げただけだ。

「酔ってる?」
「ちょっとだけ」

ジッと目を覗き込んでくるように近づく顔に、身を引いた。

「なんなの、お前」
「?」
「わざわざ迎えにとかさ」
「近くまで来たから」

「会社からは、近くじゃねぇだろ」

つい上目遣い言えば、サッと目線を外された。

何でもないことのように、横に黙って立っている。

「俺、女じゃねぇし」
「知ってる」
「もう大人だ」
「そうだね」
「お前が飲みに行っても、俺迎えにとか行かないぞ」
「いいよ」

前を向いたまま、淡々と答える。

何だよ……もう。
機嫌悪いじゃん。

迎えに来て、機嫌悪いってさ……何なんだよ。

来なくていいのに。

もう学生の時みたいに、お前に「迎えに来て」なんて言わないよ、俺。

てかさ。
こうやって学生時代のダチとの飲み会も、今日が初めてじゃないのに。
俺が行けなくて、お前が行く時もあったじゃん。

あ……そうだった。
庄野か。

庄野が居たから、来たのか。
なんで帰りも一緒だって分かるんだよ。

お前は、エスパーかっつーの。


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