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「●北見と佐倉☆番外編」
隣にいてくれ

隣にいてくれ 6

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朝飯を食べて、北見が先に出る。

「俺も、五分後に出るけど」

玄関で佐倉が笑うその顔に、朝からキュン……。

「いってらっしゃい」
「行ってきます」

佐倉に軽くキスをすれば、照れる。

昨日あれだけ攻め込んできて、こういうことは恥ずかしがる……ところが好きだったりもする。

「腰、大丈夫?」

扉に手をかけて振り向いて聞けば、足で尻を蹴られた。

「一回くらいでヘタるか。さっさと行け」

口調は怒ってるようでも、顔が笑っている。

「行ってきますっ」

同じことをまた言って、玄関を出た。

駅に向かいながら、顔がニヤけてしまう。
胸元を見て、昨日とは違うネクタイだと確認。

前に仕事帰りに泊まった時に、シャツとネクタイをそのまま置いてきたやつだ。

忙しくて顔を見られない時は、平日に泊まったりも何度かあった。
けど、朝は別々に出勤。
それは男女であっても、社内恋愛だと同じことをするだろう。
いや、男女の方がもっと気を遣うか?

一緒に暮すなんて、まだまだ遠いなぁ……。
現実問題、同じ会社に居ると同じ住所って訳にはいかないだろうし。

こういう時、男と女だったら結婚という形を取れば問題ないんだろうけど。

男同士でも結婚出来ればいいのに。
まぁ、長い目で見ようと話し合ったし。

一人暮らしに執着していた自分が、少しでも長く一緒に過ごしたいと思うのは……あの人、ほんとドライなんだよ。
だからこう……追いかけたくなるっていうのかな。

ま、何だっていい。

一緒に居る時間がやっぱり心地よく感じる中の一つに、適当に放置してくれるからだろうとも思うし。
構って欲しい時に向かえば、応えてくれる。

そういうとこ、やっぱり年上なんだよなぁ……。
結局、何だかんだと甘やかせてもらってる気がするし。

また口元が小さくニヤつきながら、佐倉のことを考えている内に駅についた。

*

昼食を食べてからデスクに戻る前に携帯をチェックすると、佐倉からメッセージが来ていた。

いま現場で、やっぱり腰がちょっと痛いと。
最後に「笑」の文字が入っていたから、フッと口元が綻びる。

朝からまた息をつく暇もなく、上司に仕様書のことで散々キツいことを言われた後だから、こういうちょっとしたことで力みがフッと抜ける。

―― お詫びにマッサージします

綻んだ気持ちで返信だけを打ち、デスクに戻った。




「北見」

名前を呼ばれ顔を上げると、玉田だ。

「はい」

ため息が出そうになるのを何とか押さえて返事をすれば、書類を前に滑らせて来る。

「これ、何?」
「何って、このままです」
「これじゃ困るんだよ」

何度説明したところで、玉田は向かって来る。

「お前の力が無いからだろ。上司の言うことへいへい聞くだけじゃな」

小さな声でボソッと呟かれた。

「お言葉ですが。これはさすがに通りませんよ。もう一度、磐田興業と……」
「それじゃダメだって言ってんだろっ」

言葉の途中で遮るようにして声を荒げる。

「お前、主任だろ? 荷が重いんじゃないの? 笹本さんならやってくれたと思うんだけど」

前任者の名前を出されても北見は何も答えずに、玉田を見つめた。

「こっちは現場で闘ってんだよ。デスクに貼り付いて数字や記号見ているお前らには、こっちの苦労なんかわっかんねぇわな」

始まった……。
ずっとこの調子だ。

少しは分かってるつもりだ。
営業が仕事を取って来て、会社の売り上げとなることも。

何度も足を運んで、頭を下げて、下げて……。
体調が悪くても接待に付き合って酒を飲み、契約にこぎつけるまで必死に食らいつく。

けど、全部を理解しろと言われても……それは無理だ。

こっちは、あんたの言うように数字と記号が領分。

「玉田さん。分かってますよね?」 

冷静に数字を指せば、チッと舌打ちだ。

「せめて、コンマ五。それが最大の譲歩です」

しばらく視線を合わせ、玉田の方が大きくため息を吐いた。

「……分かったよ。見積もり見直す」
「こっちも最大限引っ張りますから」

*

佐倉が現場から戻って遅い昼食を食べていると、前に玉田が座った。

「カレーしかない」

ボソッと呟いて、頭を抱える。
ガラガラの食堂に、わざわざ目の前に座る玉田に首を傾げる。

同じ一課だがチームが違うし、年も二つ下でそう親しい訳じゃない。

「もう遅いんだから、残り物しかないだろ」
「はぁ……」

ため息を吐いてカレーを口に運ぶが、やたらと暗い。

「どした?」
「システムとコレですよ」

手でバツサインをする。

「いつものことだろ」
「北見の野郎……融通効かねぇんで」
「やり合ったか」
「ここのとこ、連日ずーーっとですよ。昨日も最終までで、今日も昼間」

弱ってたな……あいつ。

「どうせクライアントの我儘聞き過ぎたんだろ」
「だって、一年かけてんですよ? こっちは」

まぁな……と佐倉も頷く。

「今回、ちょっとキツいのは分かってんですけど」
「磐田興業だったな。いくつ?」
「……九で」
「はぁ? そりゃキツいわ」

ビルと言っても低層階じゃ、コストが高い。

「ですよね……。佐倉さんは、限度いくつですか?」
「低だろ? 限度十で、十一が基準」

うわ、さすがだ……と、カレーを食べている手を止めて、後ろの背にもたれ掛った。

そりゃお前。
システムが融通効かないんじゃなくて上が判押さないだろ。


「北見の野郎、どんどん冷静になってきやがって。くそ……っ、あの眼鏡ムカつく」

北見。
お前、褒められてるぞ。

「まぁ、お前が必死なのは分かるよ。俺だって、どうしても欲しくて折れたことある。で、結果的にそことは続かなかった」

玉田が顔をしかめて目をギュッと閉じた。

営業やってりゃ毎日が競争だ。
俺だって、何度痛い目にあったか。


「一回下げりゃ、先方はそれが基本になるからな」

下げるのは簡単。
上げるのは困難。

「分かってんです。時間かけた分、何がなんでもって思っちゃって」

分かるよ、俺は。

だけどそれを他の部署に訴えたところで、通じない。
それが営業だろ……てことだ。

それでも訴えたくもなるよな。
耳にタコが出来るって顔をされても。

「はぁー、また主任にドヤされるな」
「俺もいつもドヤしてんぞ」
「聞こえてます」

やっと笑い顔になって、カレーを食べ始めた。


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