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「●堂本と拓篤☆番外編」
俺を見ていて

俺を見ていて 23

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堂本が取り調べを終え、デスクに戻って書類の作成をしていると名前を呼ばれる。

顔を上げると、制服警官が居た。
その後ろに、少年が二人。

一人は中学生くらいで、もう一人はまだ小学生くらいだ。

あぁ……。
堂本は立ち上がって、傍に行った。

「息子さんたちです」
「わかった。ちょっと、あっち行こうか?」

二人の少年を廊下の長椅子の方へ誘導する。

「名前は?」

中学生の方が、二人分の名前を告げる。

「兄弟だな?」
「はい」

「お母さんは?」

弟の方が、堂本の方を見上げて聞いて来た。

「そこ、座ろうか」

二人を座らせてから、堂本はその前に屈んで目線を弟の方に合わせる。

「お母さんは、まだ取り調べ中だ」
「帰って来れないの?」
「そうだな。当分は帰れない」

堂本が答えた途端、目に涙を溜め始めた。

「泣くな。男の子だろ?」

頭を撫でてやると、その手を振り払われる。

警察が母親を連れて行った。
俺は、この子にとっては母を攫った悪い人……なのだ。

「会えませんか?」

兄がしっかりとした口調で聞いて来た。

「ダメだ」

母親は万引きで、三度目の逮捕。
正確には余罪もあるが、逮捕前に店側と示談。
店側が現行犯で捕まえ、悪質だとして警察に通報してきたので三度目ということだ。
常習犯で、今までは罰金刑で不起訴だった。

たかが万引き。
されど、万引き。

窃盗罪には違いない。

起訴されれば、弁護側はクレプトマニア(窃盗症)として治療を訴えてくる可能性が高い。
例え精神的疾患だとしても、責任能力は有りとされるはずだ。

悪いと分かっていてもやめられず、それがまたストレスとなり悪循環を繰り返す。

「着替えです」

兄の方が、スーパーの袋に入った服を堂本に渡す。

その用意の良さに胸が痛む。

地方に祖父が居るから、今回も連絡済だ。

「お祖父ちゃんは来たか?」
「夜までには来る予定です」
「そうか」

弟の方が涙目のままで、堂本を見据える。

「僕、また学校で意地悪言われるの?」

何を言われるかなど容易く分かる。
何処かで誰かが噂をききつける。

「お母さんと一緒に帰りたい」
「カズ、やめろ」

兄に窘められても、弟の方はまだ堂本を睨みつけて来る。

「君のお母さんは、悪いことをしちゃったんだ。だから、捕まった」

堂本は事実だけを告げる。

「悪いことをしたら捕まる。そして、罪を償わないといけない。それは、どんな人も同じだ」

目をしっかりと見て告げれば、口元をギュッと引き締めて頷いた。

「でも、君は悪いことはしてない。いいか? もう一回言うぞ。君は、悪くない」

その途端、顔がクシャ……と歪んで、涙が零れた。

「だから、負けるな」

兄の方も泣くのを我慢している。
自分だって、いっぱいいっぱいだろうに。

「君は、悪くない」

堂本が兄の方にも、目を真っ直ぐに見てそう告げた。

「はい」

しっかりとした口調で答え、弟の手を取って立ち上がる。

「ちゃんと渡しておく」

堂本が袋をひょいと上げると、頭を下げた。
兄に倣って、弟の方も頭を下げる。

そのままこっちを見ずに踵を返し、弟の手をギュッと握ったまま廊下を歩いて行った。

姿が見えなくなってから、堂本は大きなため息を吐く。

犯罪を犯した、その家族の傷。
だからといって、感傷に浸ってしまう訳にはいかない。

袋を持って部屋に戻ると、甲谷が屈託なく「何ですか?」と袋を見る。

「息子が母親の着替えを持ってきたんだよ」

デスクに座り直し、また仕事に戻った。

*

「俺のこと覚えてますか?」

青年が拓篤に聞いて来るから「はい、もちろん」と答えた。

「お母さん、お花喜んでくれましたか?」
「はい。……ていうか、泣かれた」

頭を掻きながら、照れたように俯く。

「そんでさ。今日は礼を言いに来たんだけど」

律儀だな……。
まだ照れ臭そうな顔で、拓篤を見る。

「お礼なんて。お母さんに喜んでもらえて、僕の方も嬉しいです」

ニッコリとすれば、顔が赤くなった。

「あ……えと。あ、花!! ここ花屋だから、花買って帰ります。今度は、ばーちゃんの仏壇に」

慌てる様子に拓篤が目を瞬かせて、クスッと笑う。

「どのお花にしますか?」
「一本でもいい?」
「もちろんです」

まだ多分……十代。
体つきはガッシリとしていて精悍だが、前の時よりもずっと地が出ている。

「これは?」

目の前の花を指さすから、一本取り出す。

「これはフレンチローズといって、ここ最近人気のお花です。丸みがあって、この色だと柔らかな感じ」

拓篤が花を青年の顔にゆっくりと近づけると、オドオドした後で香りを嗅ぐ。

「うん。コレにする」
「有難う御座います。お包みしますので」
「あ、いいって。そのまんまで」
「いえ、少しだけでも」

拓篤はハニーピンクの花に合わせて、ダスティ系の紙とクリアセロハン、白のストライプリボンをとめて、青年に持って行った。

「一本だけでも、こんなんしてくれんの?」
「はい。贈り物ですから」

何か、悪いな……と言いながら、ポケットからジャラジャラと小銭を取り出す。

働いて稼いだお金を、生活には何ら必要のない花に使う。

大切なお金だと思って、丁寧に受け取る。

借金を背負うようなことがなければ、そんなこと思うこともなく生きていたかもしれない。

「有難う御座います」

ちょうどの金額を貰って、頭を下げる。

「あの……あんた、花が好きでこの仕事してんの?」

青年が真剣な顔をして聞いてくるからちょっとビックリもしたが、しっかりと頷く。

――仕事だから。
最初は、そう思っていた。

水に触れて手は荒れるし、重いし、汚れるし、体力も使う。
でも、俺はそれが悦びだった。

汗水流して働くということを実感できることが、嬉しかったのだ。
体がキツければキツいほど不思議と満足感を覚え、花に触れて行く内に人が喜ぶ姿に幸せを感じるようになった。

「そっか……。うん。あんた何か綺麗だから、花屋がピッタリだ。……あ、男に綺麗って変かもだけどさ。いや、顔とかそういうんじゃなくて……って、俺何言ってんだろ」

青年が自分で言って、自分で照れてる。

「だから、綺麗ってのは女とかに言う意味じゃなくて。えと、俺の周りにはいないっつーか……見たことないタイプだなって」

そんなことないよ。
俺も君の年くらいには、この辺りで喧嘩したりしてたんだ。

心でそう思いながら、拓篤はニッコリと微笑んで礼を言った。


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