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「●堂本と拓篤☆番外編」
俺を見ていて

俺を見ていて 22

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Sホテルのウェディングプランナーからの連絡で、スーツに着替えてから仕事を抜けてホテルへ向かう。

ブライダルの階で降りて指定された部屋の前に行きノックをすれば、すぐに扉が開いた。

「多治見です」
「お待ちしておりました」

案内されたテーブルには、花嫁だろう女性がキラキラとした表情で待っていた。

「初めまして。多治見拓篤と申します」

名刺を取り出して渡せば、丁寧に受け取ってくれた。

「この度は、ご結婚おめでとうございます」
「有難う御座います」

とても品の良い女性で、拓篤の中で花のイメージが湧いて来る。

「どうぞ。おかけになって下さい」

プランナーがお茶を持って来て、声をかけられる。

「では、打ち合わせに入りますので、よろしくお願いします」

*

打ち合わせを終え部屋を出てエレベーターに乗り、ついでに紅茶を買ってかえろうと専門店のある地下で降りた。
ここは世界各国の良質なお茶の葉が置いてあるのだ。

京都の玉露茶を見つけ、オーナーへ一つお土産で買った。

会計を済ませ紙袋を持って駐車場の方へ行こうと歩いていると、目の前から女性の団体が歩いて来た。

「あら。多治見さんじゃないかしら?」

噂をすれば何とやら……だ。

つい数日前に水埜と話したばかりの浦中が、数人の女性に囲まれて目の前に居た。

「はい。多治見拓篤と申します」

紙袋を下ろしてから名刺を取り出して頭を下げ、言葉を発しながら顔を見ると、顎を上げてこちらを睨みつけていた。

改めて挨拶の言葉だけを告げ、もう一度頭を下げた。

「さすが……頭の下げ方一つ、お育ちが滲み出ていてこちらが緊張してしまいそう」

上から降って来る言葉を聞いてから、頭を上げた。

「水埜さんはお元気?」
「はい」
「相変わらず、ご自分の世界観に浸っていらっしゃるのかしら」

色々と質問されて、何とか当たり障りのないように頭を働かせて答える。

「あの方のお花は、ほんと熱がないけど。クールさだけが売りでは、心が伴わない。お弟子さんのあなたも、お気をつけなさいな」
「心に留めておきます」
「……あなたの場合は、お家柄もついてくるから要らないことかしら。まぁ、家名に実力がついていければ良いのだけど」

――沈黙は金。

水埜が言った言葉を、今腹に落とす。

「多治見さんは、公家の出ですってね。ほら、あの……」

他の公家出身の元政治家の名前を出してきた。

「ご存知?」

今も栄華を極めている家名と、朽ちゆく家名。

「お名前だけは存じ上げております」
「そう……」

浦中が両眉を上げて、微笑む。

「そういえば、お父様のことはお気の毒でしたわねぇ」
「はい」
「家名に泥を塗られてしまったようなものでしょうけど、あなたに罪は有りませんものね」

ドクン……と、心に波が立つ。

……挑発に乗るな。

ヤスシの挑発に乗って起こした余波によって迷惑をかけた過去が、拓篤の強い抑止力となる。

腹を立てるな。
俺にはまだ、その挑発を受ける力さえない。

拓篤は息を吸い込み、静かに微笑んだだけで何も言わなかった。


周りの女性たちがハラハラしているのが、空気で伝わって来る。

大丈夫。
僕は、大丈夫ですから。



「先生? もう、お時間が……」

斜め後ろに居た女性が、浦中に声をかける。

「あら、そう。今から、お茶会なの。お引止めしてごめんなさいね」
「いいえ」

拓篤は脇に寄り、丁寧に頭を下げた。

皆が通り過ぎてから顔を上げ、その後ろ姿を姿勢を正したままで見送る。

一人、二人と振り返る度に、また頭を下げた。

完全に姿が見えなくなってから紙袋を持ち、その場から離れた。

*

「ただいまです」
「お帰りなさい。お疲れ様」
「帰りに、お土産買ってきました」

中から小さな紙袋を取り出して渡すと、物凄く喜んでくれる。

バイトの子達にも、小さな手の平サイズの缶に入った紅茶を一つずつ。
それぞれをまた小さな紙袋に入れて、カウンターの下に並べる。
いつも店に居る訳じゃないから渡しておいてくれるように頼むと、オーナーがくっと笑う。

「粕屋くんが、ティーパックの紅茶しか知らないって目を丸めてたのを思い出しちゃって」
「あぁ……」

淹れ方も教えたが、家には急須しかないのだと言って困られてしまった。
とりあえずは急須で淹れて飲んでみて、後で百均で網を買ってきたとか。

「網」という表現が面白くて、笑ったっけ。

「お給料が入ったら、紅茶を淹れる……なんだっけ。ガラスの容器の……ほら、喫茶店なんかで出してくれる」
「あぁ、メリオールですね」
「それを買うんだって言ってたわ」
「でもあれは本来、紅茶用じゃないんです。渋みが出るから。要は葉をジャンピング……」

そこまで言って、自分で何を言ってるのだとおかしくなった。

「紅茶教室みたいに語ってしまいそうなんで、やめます」

オーナーと二人で、ここは花屋だと笑う。

「拓篤くんのおかげで、教養がつくって言ってたわよ」
「教養って……そんな大袈裟な」
「でも、言いたいことはわかるから可愛くて」

オーナーは、バイトの子達を可愛がる。
どちらかというと甘いのだが、その分息子の水埜がドライなのでバランスが取れているとも言える。

どこかフワフワとした所が、母に似ている。
だから拓篤も一緒に居ると、とても気持ちが落ち着くのだ。

今日の一件も、オーナーの顔を見た途端ホッと出来た。

「立ち振る舞いなんかもね、真似してるのが分かるの。頭の下げ方とか、手の位置、角度なんかね。最初はもう、カクカクしてたんだけど。今は、少し様になってきたわ」
「観察されてるんですか。恥ずかしいな」
「いいじゃないの。良いお見本なんだから」

家名に泥を塗ったと言われた父が浮かんだ。

「……僕の見本は、父です」

少し間をおいて拓篤がそう答えれば、オーナーが優しい顔で微笑む。

特に教えられた分けじゃない。
ただ、父のすることを見ていた。

「誇りに思ってるのね」
「……今は、そう思えるようになりました」
「ご両親は、ちゃんとあなたに誇れるものを残してる」
「有難う御座います」

嬉しかった。
父や母を褒めてもらえたような、そんな気持ちに。

「着替えてから、明日の仕入れ目を通しますね」

奥の部屋でスーツを脱いで着替え、パソコンに向かい、まずは花の注文と照らし合わせ数字をはじき出して行く。

無駄だと思う部分をザックリと消して……。

しばらく没頭していると、ノックされて扉が開いた。

「拓篤くん。お客さん」
「はい」
「前に花束作ってくれた綺麗な男の人、って拓篤くんよね」

綺麗な男の人って。

首を傾げながら店に入ると、そこに居たのは見覚えのある青年だった。


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