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「●堂本と拓篤☆番外編」
俺を見ていて

俺を見ていて 20

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「それで継ぐことを決めたのか?」

拓篤の問いに、一拍置いてから頷く。

「だからって、すんなり継ごうなんてことはなかった。叔父貴に従うようで癪だったし」

癪……に、拓篤が少し口元を綻ばせる。

「親父には継がない理由があったけど、俺は違う……」

新卒で入社した会社にいても、これでいいのかとずっと自問自答していたという。

「弟が頭良いの知ってるよな? あいつ、T大なんだ。叔父貴と同じ」
「凄いな」
「海洋学が好きで、院でそれの研究ばっかやってんだ」

話が見えた。

「わかった」
「あいつは、ちゃんとやりたいことが有る。俺は長男で、あいつは次男だ。生まれた時からの役割を、崩しちゃいけないと思った。それに、俺はそういう教育を受けて育ったんだよ。弟は、違う」
「そうか」

それぞれに、納まるべき場所があるのだということ。

「俺が嫌ってたのは、単純に格好悪いと思ってたんだ」

知ってるよ。
お前は凄く嫌がってた。

幼い頃から、陰で何を言われて育ったのかも聞いた。
親同士の噂話は、子供にも伝わる。

「俺も、お前に酷いこと言ったな」
「それはお互い様だ」

そこにお茶漬けが運ばれて来る。

「殻付きの小エビを揚げて粉末にしてあるんだな」
「うん……ダシが美味しい」
「揚げてるから香ばしくて、油の加減が絶妙」

本当に美味しくて、顔が綻びながら食べる。

「だからさ。やるからには、ちゃんとやる。そう決めたんだ」
「そっか」
「親父が今も、梶原組の奴らに腰抜けだって陰口叩かれてるのは知ってる。でも、それは母さんや俺達のためなんだ」

そうだよな……。
親のことを悪く言われるのは堪えるんだよ。

それも父親だ。
弱虫呼ばわりされるのは、息子にとってはかなりキツい。

「叔父貴は、俺達の犠牲とも言えるんだけどな」
「うん……」

もし、大成の父が跡を継いでいたら。
今の大成だって、暴力団の一員として目の前にいたのかもしれない。

「でも、高宮だって腹括って決めたことだろ」
「うん。今じゃ、梶原の最大の稼ぎ頭だもんな……」

大成が俯いて、口元に複雑そうな苦い小さな笑みを浮かべる。

「梶原の連中は親父のこと悪く言うけど、叔父貴の管理下の奴らは言わないんだ。多分、叔父貴が言わせないんだと思う」

やっぱり、兄弟なんだな。

「今も親父と仲が良い訳じゃないのに」
「それが、血なんだろ。俺、凄い分かるよ。自分が言うのはいいけど、他人が言うと腹が立つ」

例え、憎しみは消えていなくても。

「俺も叔父貴と血は繋がってるからなぁ。確かに、他人に悪く言われるとムッとするな」
「でも、嫌いなんだ?」
「大嫌いだ。俺には、昔からほんと意地が悪い。ガキ虐めるとか、大人気ないっての」

本当に憎らし気に言うから、小さく笑う。

「笑いごとじゃないぞ? 弟は結構可愛がるんだよ。なのに俺には、クソ意地悪い」

小さい頃の大成を思い浮かべて、拓篤がまた笑った。

「それだけじゃない。最大なのは、お前のこと。憎しみは更に増大だ」
「仲良くは出来ないか」
「する気もない」

キッパリと言う大成に、確かにそうだなと思う。

「お前は、憎くないのか?」
「憎いに決まってるだろ」
「だよな……」
「高宮は悪人だ」

悪人だし、今も憎むべき相手。
けど……一年も経つ頃には、微かな情は芽生えていた。
サムライの薔薇を見ると、高宮との最後の日を思い出すくらいには。

重くずっしりとした薔薇の花束を持って、裏から表の世界へと戻った日を、俺は忘れない。

でも、それは大成には言わないし、言う必要もない。

「いつだったかな……。親父がポロッと言ったんだ。俺はあいつ程、冷酷にはなれないって。放棄した親父を擁護するようだけど、多分自分にはヤクザは向いてないって分かってたんだと思う」
「そうなのかもな」

阿修羅の世界を幼い頃から見ていたのなら、早くから悟っていたのかもしれない。

「高宮は、俺に学べと言った」

嘆いてる暇があるなら、現実を受け止めて学べと。

大成がジッと顔を見る。
しばらくして、黙ったまま頷いた。

「大成。俺は汚れたなんて思ってない」

以前にも言った言葉を再び口にすると、大成の口元がキュッと結ばれた。

お前の中ではずっと、それが心の澱だったんだろう?
何年もこじらせてしまう程に。

「お前がそう言うなら、そうなんだよな。俺が勝手に汚されたなんて思って……」

俺を勝手に美化して、そんな風に思わないでくれ。

「誇りも失ってない」
「あぁ。お前の凛とした部分は、変わってない」

大成は今度こそ、嬉しそうに微笑んだ。

*

店を出て、二人でタクシーを拾う。

「また、誘っていいか」

車の中で大成が聞いてくる。

「あぁ。今度は、海鮮の旨い店があるんだ。そこ行こう」
「また海鮮かよ」
「いいじゃん。魚介類のメニューが豊富で美味しいんだって」

ほんの二時間半程度だったけど、色々と語り合った。
でも、まだ足りない。

空白の八年、九年。
俺達はまたこれから少しずつ、友として埋めて行きたい……。

いつか大成が結婚して子供が生まれたら、その成長を見守っていけるように。

拓篤の方が先に降り、大成の乗ったタクシーが見えなくなるまで見送る。

マンションまで少し歩き、セキュリティーを開けて中に入った。



「ただいま~」
「おかえりー」

堂本がキッチンでチーズを切っていた。
風呂から上がったところらしく、髪がまだ少し濡れている。

「楽しかったか?」
「うん」

堂本の後ろから両腕を回して抱きつき、背中に頭をグリグリとする。

「ありがと」
「お前がご機嫌になるなら、俺は何でも……聞いちゃうよ」

いきなり振り返って、抱き上げてくる。

「何でも?」
「あぁ、何でも」
「甘いなー」
「ゴロゴロ鳴いてみろ」
「……鳴けるかっ」

笑いながらソファーの上に降ろされる。

「そんなに飲んでないな。先、風呂入ってくるか?」

堂本が拓篤の顔を見て頬を軽く抓る。

「うん。待ってて」

立ち上がって堂本の頬にチュッと音を立ててキスをして、バスルームに向かった。

「拓篤くーん。一緒に入ろうか~?」

ちょっと甘えると喜ぶ。
いい年してんだけど、可愛い。

「おっさん、もう入ったろ? デカいから邪魔」
「ワォーン」

犬の遠吠えのような鳴き声が上手い。


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