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「●堂本と拓篤☆番外編」
俺を見ていて

俺を見ていて 18

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互いの仕事の話から始まって三十分も過ぎる頃に、大成が妹のことを聞いて来た。

フランスに行く前に、絶縁宣言をされたことを伝えると固まってしまった。

「拒否られてる最中だって聞いたけど、絶縁て……」

あの時のショックは、今も忘れられない。

「うん。でも、帰ってきてからは母とは時々電話はしてる」
「妹は?」
「冷たいよ、今も」

でも母に取り次いでくれるし、携帯を持たない母は妹の携帯で電話をかけてくれる。
そういう意味では絶縁……は解除されたのだと、思いたい。

「ブラコンなのになぁ」
「え?」

拓篤が問い返すと、苦笑いする。

「俺も会ったのは、二回くらいだけど。どう見たって、お兄様大好きっ子だろ」
「……そうかな」

拓篤が首を傾げると、大成が微笑む。

「俺、めちゃくちゃに睨まれてさ。なんせ、あの美貌だろ?」
「美貌って」
「いや、透き通ってるような感じって言うかな……。まぁ、俺にとっては初めて遭遇したってくらいの衝撃だったな」

拓篤が眉をしかめると、くっと笑う。

「待て待て。俺はお前の妹を、そんな目で見たことないから」
「だったらいい」

拓篤の言い方に、大成が眉を上げた。

「怖いなぁ……兄様は」
「兄様言うな」
「妹だとそうなるのかな。俺は弟だから、ちょっとくらい遊べって思うけど」

そうだな。
弟だったら、また違った形になっていたかもしれない。

「まぁ俺は、お兄様の悪いご友人。……だろうな、今も」
「うん」
「否定、出来ないよな。ほんと、俺ら悪さしてたし」

頷きながら、互いに思い出して小さく笑う。

酒や煙草、喧嘩、セックス。
覚えたことを面白がってやっては騒ぎ、バカなことをしては笑って、疲れて寝て……。

ただ二人とも、警察沙汰になるようなことだけはしないでいた。
本当の悪にはなれない俺達は、内にこもる鬱憤を他人にまき散らしていただけだ。

妹はそんな時も、邸で一人で母の傍に居た。
邸に住み込んでいた使用人たちが居なくなり、通いの家政婦が帰った後も……。

傍に居て欲しい時に、俺は大成と遊んで家に帰らなかった。

小夜子は、外の世界に触れて変わって行く兄をどんな目で見ていたのだろうか。

『お兄様もお父様と同じ』
そういう言葉を言われた時、意味がよく分からなかった。
後になってからだ……。
その意味が理解出来たのは。

そして、それは小夜子の言う通りだ。

孤独の淵にいたのは、俺じゃなく小夜子だった。

病弱な母を励ましながら気丈に振る舞い、家に寄り付かず現実から逃げている父や兄への鬱積した想いを抱えて。

誰かが傍に居るから、居ないから。
孤独とはそういう簡単なことじゃない。

俺は一人だったけど、理解してくれる裕理たちが居た。


思い出す度に、申し訳なさで胸が今も軋む。

挙句に身を金に変えるという方法で借金を返した兄。

多治見の誇りを、血を、汚したと思っても仕方ない。

小夜子にとっては、誇りと血が最後の砦。
そういう場所に生まれ落ち、今もそこに居るのだ。

誰が理解出来なくても、俺には出来る。
同じ場所に生まれ落ちたのだから。

男だから。
女だから。
教育が少し違っただけ。

だからかな……小夜子。
俺は汚れたなんて、本当に思っていないんだ。

そこだけは、お前と相容れない部分だってことも分かってる。


小夜子の今までの苦しみが伝わったのは、あの嗚咽を聞いた瞬間。

冷静に振る舞っていた小夜子の中に渦巻く、小さな叫び声。

俺はそこを分かっていなかった。
本当に……分かっていなかったんだ。

自分の苦しみだけに精一杯で、一人で全部背負い込んでいると思い込んでいた道化だ。


「いつか……小夜子が、俺を許してくれる日が来るんだろうか」

拓篤がつい弱音を吐く。

「兄様が好きだったからこそ、許せないんじゃないか?」

大成に言われて、堂本の言葉が浮かんだ。
剣道の試合に負けると弟が怒るんだと言っていた言葉を。

「俺は妹を守ってるつもりで、そんな自分に勝手に酔ってたんだ」

「それは違う。お前はお前のやり方で、妹を守っただろ」

大成が断言するように、真っ直ぐに見て来る。

「そのやり方が間違ってたって、お前は守ったんだよ」
「……うん」

「俺はそれを知ってる」

あのクソ叔父貴。
そう小さく呟く言葉に、口元が綻んだ。

「お前も相変わらず、叔父さんと仲悪いのか」
「なんで仲良くしなきゃなんないんだ」

そうだな。
住んでいる世界が違う。

俺はあの日……。
それを目の当たりにした。

「俺、フランスに行く直前に、ヤスシとやり合って」
「知ってるよ。あのバカ」

忌々しく言う大成に、拓篤が首を振った。

「違うんだ」
「何が?」
「確かに、あいつはバカだった。けど、俺もあの時は判断力失ってて……」

大成が、お前は悪くないと庇ってくれる。

違う。
そういうことじゃない。

悪いとか悪くないとか。
そんなのとは、違う。

「あいつも俺も、何に腹立ててるのか分からなかったんだ……。たまたま、あいつは俺にそれを向けてきて、俺もそれを受けた。今思うと、お互いのチャンネルがカチッと合ったんだろうな」

大成が眉をしかめる。

あの複雑さは、言葉でどう言えばいいのか分からない。
大人になった二人が、十代の頃のように鬱憤をぶつけ合った。

「俺はあの時、心の中にあった膿を吐き出せた。勝つことに必死になって、必死に耐えて我慢してきたこと全部あいつにぶちまけた」

大成は黙ったまま頷いてくれる。

誰にも向けられない怒りを、ヤスシという対象にぶつけた。

「正直に単純な言葉で言えば……喧嘩の最中、気持ち良かった」
「は?」
「アドレナリン全開」

大成が笑って、首を小さく振る。

「殴られて痛いし、殴っても痛いし。喧嘩って、痛いんだよな。でもその痛みがダイレクトでキて、気持ち良かった」
「何言ってんの? お前」

マゾか?と、大成が呆れたような顔でまた笑う。

きっと、分からないだろう。

あの時。
俺とヤスシは、確かに共振し合っていたのだ。


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