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「●堂本と拓篤☆番外編」
俺を見ていて

俺を見ていて 14

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アパートの前で一色が先に降り、車を止める場所にある自転車を退けてくれる。
奥にあるのは、多分一色の車だろう。

「オーライ、オーライ。……ストップ!」

後ろで声を上げてくれるから、難なく止められた。

玄関のセキュリティーを開けて「どうぞ」と、手で招き入れられる。

「お邪魔します」

靴を脱いで揃え、立ち上がると、すぐ傍の部屋に一緒に入った。

「わ……広い」
「ここは、食堂。男ばかりだから、埋まると圧迫感あるけどね」

キッチンのシンクとか、冷蔵庫とか……。

料理人だと言っていたのが、現実味を帯びる。
シンクも顔が写るくらいに磨き上げてある。

「ピカピカですね」

口にしてから、当たり前なんだと思った。
プロなんだから、キッチンは自分の仕事場。

「ここは俺の城だから」

ニッコリと笑って、冷蔵庫にビールを入れて行く。

「冷蔵庫も本格的だ……」

拓篤が傍に行って、マジマジと見ても手垢一つない。

「昨日まで仕事でこもってたから、学生達は自分で食べてたんだ」

聞けば、ちゃんと部屋に小さいキッチンはあるのだという。

「古いアパートだけど、トイレもちゃんと各部屋にあるしね。風呂だけは、共同」
「それで、ほぼ毎日夕食が出るんですよね」
「そう。もちろん、食費はキッチリと貰ってるよ」

何でもないことのように言って、材料をテーブルの上に並べていく。

「さて、作りましょうか?」

*

材料を用意して、一気に刻んで行く。
その包丁さばきに、拓篤は目を見張るばかりだ。

拓篤が何より感心したのは、材料を無駄にしないこと。

「はい、入れてって」

材料を大きなボールに入れて、一色が横に立って調味料を言われた通りに入れて行く。

「らっきょうも入れるんですね」
「少しだけね。このピクルス、旨いよ」

切ったピクルスを、口に放り込んでくれた。

「美味しい!!」
「自家製だよ~。学生達が結構好きなんだ。普通の糠漬けもある」

混ぜてるだけで、美味しそう……。

「はい、そこまで」
「え、これで出来上がりですか?」
「そう。あまり混ぜない方がいい」

手の甲にソースを乗せて、口に入れる。

「上出来」

ニッコリと微笑みながら、拓篤の手を持って甲の部分にソースを乗せた。
口に入れて、目を輝かせる。

「美味しい! でしょ?」

拓篤が言う前に一色がそう言って、ニッと笑った。

そこへ玄関が開く音がして「ただいまですー」と声がする。

「おかえり!!」

キッチンから一色が声を出すと、顔を覗かせる。

「達也さん!! 今日飯有ります……よね……」

若い男が驚いた顔をして、拓篤を見た。

「こんにちは。お邪魔してます」

拓篤が姿勢を正して頭を下げると、男も慌てて姿勢を正して頭を下げた。

「多治見といいます」
「あ……えと、伊東です」
「隣の駅の花屋に勤めてます」
「あ……はい」

緊張した面持ちで目を瞬かせる伊東に、一色がブッと吹き出した。

「なーに緊張してんだ」
「え……だって」
「誰かに花贈る時は、彼に言いなさい」

一色もわざとかしこまって言うと、深く頷く。

「そういう相手、いるのか?」
「いません」

堂々と答える伊東に「だろうな」と答えながら、拓篤に目が釘付けのままの伊東の頭をはたいた。

「おらっ。見惚れてねーで、とっとと部屋戻れ」

一色に言われて、学生は深々と頭を下げてカクカクとした動きで自室へ戻って行った。


「さ。続きしようか」

一色がチキンを取り出して、一口大に切り分けて行く。

「チキン南蛮じゃなくて、カツでいい?」
「はい。タルタルが目的なんで」
「衣だけつけて持って帰ればいいよ。後は家で揚げて、出来立てを食べさせてあげて」
「はい」

食べさせる相手が誰とは聞いて来ない。
色々と詮索される経験をしてきたから、拓篤にはそれが心地良く思えた。

「ただいまでーす。 いえーい!!今日は達也さんの飯ーー!!」

また玄関が開くと同時に雄叫びのような声がした。

「おかえり~」

また一色が大きな声で応える。

こうやって、このアパートは毎日を過ごして行くんだな……。
拓篤はイキイキと料理をしている一色を横目で見て、チキンに衣をつけて行った。

*

「よし! っと」

一色が腰に手を当てて、満足気に下ごしらえした分を眺める。

チキンカツと一緒に鱈はフリッターに。
彩の良い付け合わせの野菜。
玉ねぎの丸ごと煮と、トマトのブルスケッタ。
ざく切りしたキャベツは、カレー味で炒めるのだそうだ。

「毎日こんなに作るんですね」
「そうだよ。育ち盛りだから、野菜もたんと食わせないと」

とにかく量が半端じゃない。
男ばかりだし、それも学生だから食べる量も凄いだろう。

「尊敬です……」

拓篤が一色の顔をジッと見ると、目を小さく剥く。

「いや、そんな見つめられると照れるわ」
「本当に、凄い。彩なんかも綺麗だし」
「あ、俺イタリアン専門だったんだよ。だから、彩は結構身についてる」
「いいなぁ……学生さんたち。毎日こんなの食べられて。幸せですよね」

拓篤が何気に言えば、一色が嬉しそうな顔をした。

「そう。俺は自分の作った物で、幸せな気持ちになってくれるのが何よりも嬉しいんだよ」

わかる。
……なんて言うのは、おこがましいだろうか。

まだ大した経験もない自分が。

でも、凄く分かる。

「分かります。俺も、自分の作った花で相手が喜ぶ顔を見るのが、本当に嬉しい」
「恵まれてる」
「はい」

そこへ携帯が鳴る音がして、一色が自分のを見る。

どうやらメッセージみたいだ。

見た瞬間、口を押さえて笑う。

何かと思って首を傾げると、画面を見せた。

え、見ろってこと?
誰からか知らないけど……いいの?
と思って、視線を画面に合わせた途端、拓篤も吹き出した。

画面には、平仮名で「めし」とだけ。

「上の方も見てみ?」

言われなくても、勝手に目に飛び込んでくる。

「やま」「おわ」とか、平仮名の二、三文字だけが並んでいる。

「……これ……で、分かるんですか?」

笑いながら聞けば、頷く。

「おわ、って何ですか?」
「終わりってこと。変換もしねーし、おわ……だけ。あと一文字の、り、くらい打てよ」

一色もくくっと笑いながら答える。

「……暗号ですね」
「そう。携帯をスマホに替えた途端、指が他に当たるらしいんだよ。そこから、ずっとこんな」

それを聞いた途端、ついまた吹き出してしまった。


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