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「● 信史と秋也☆番外編」
You are my angel

You are my angel 17

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ライブの会場近くのカフェでコーヒーを飲んでいると、向こうから嬉しそうな顔でこっちに来る晴海が見えた。
手を上げると、小走りで来る。

「慌てるな」
「だって!!」
「まだ開演まで一時間以上あるぞ」
「わかってまーす」

姿勢を正して、店員にアイスティーを頼む。

「はぁ……もう、嬉しくて」
「初めてじゃあるまいし」

晴海と一緒にライブに来るのは、二回目だ。

「会社の子、東京のチケット外れちゃって有休取って福岡まで行ってたのに。ちょっと申し訳ないと思いつつ」

会社の同僚が熱烈なファンらしいが、秋也と懇意にしていることは内緒だ。

「お兄ちゃん、映画観た?」
「観てない」
「えー、勿体無い!!」
「ツアーも終わるし、あいつと一緒に観るから」
「あぁ、そうですか」

晴海がニヤニヤして、運ばれてきたアイスティーに口をつける。
C.Cのファンの同僚と、昨日映画を観たばかりだと興奮した口調で言って来る。

「舞台挨拶は抽選外れちゃったんだけどね」
「お前、アニメとか観るのか」
「何言ってるの。大好き! 元々原作読んでて、その上C.Cが主題歌って! ほんと血が上った」
「声が大きいよ、お前」

あ、ゴメン……と周りを見渡して、肩を竦める。

「健太郎の声がホントいいの。ハスキ―なのに、高音も自然と出て伸びるし。今回は、機械的? な被せがあって……。あの、守るために……の出だしの、ま、で止めていきなり高音に行くでしょ? もう、あそこが好き。でね、呪文みたいなの呟いてるんだけど……」

やたらと健太郎の歌声の話を延々と始めた。

「ちょっと、聞いてる?」
「聞いてない」
「…………」

呆れ顔の晴海を素で見ると、大げさに溜息を吐いた。

「もー、お兄ちゃんと行くとノリ悪いんだから。……ま、いいか。楽屋に行けるし」

ふふ……っと笑う妹に、信史の方も呆れ顔をした。

「それが目的なんだろ」
「当たり前。でなきゃ、何でお兄ちゃんと行きますか」
「言っとくけど、ライブの後はバタバタしてて邪魔になるからすぐ出るぞ」
「わかってます」

まぁ、本人もあまり甘え過ぎは良くないと思っているらしく、滅多に言って来ないから別にいい。

「ね、もう行こうよ」
「まだ早い、焦るな。席も決まってるんだし」
「……はー」

また溜息を吐いて、むくれた。

*

ステージの終盤。

真っ暗な中にスポットライトが点き、その中に秋也が椅子に座って、アコースティックギターを抱えていた。

次にその横にもスポットが点き、健太郎が立っている。

観客の黄色い声が飛ぶ中、秋也が静かにギターを弾き始めた。

「あ……この曲」

晴海が興奮して声を上げる。
映画の主題歌と共にカップリングで作られた歌だ。
主題歌の激しい曲とは正反対の、静かなバラード。

健太郎が映画のPVの時と同じポーズで……といっても、片手にはマイクを持っているから、もう片方の手を天に向かって広げる。

ワーーーっと観客の声がする中、歌い始めると共に静かになり、皆が聴き入り始めた。

秋也のギターと、健太郎の歌声だけが響く。





あぁ……やっぱり、良いな。
ギターの音色と、歌声が胸に響いて来る。

音楽のことはあまり分からないし、ライブにだって滅多に来ない自分でもジン……と来る。

信史は曲に聴き入り、目の前にいる秋也を見つめた。

父の形見と言っていたギターは、今も秋也の大事な宝物。
ちゃんと手入れをしていて、今も部屋で時々弾いている。


信史は空を見上げるかのように、ハコの天井に視線を移す。


お父さん。
見えてますか?
あなたの息子は大人になり、あなたのギターを弾いて、こうしてここに居る皆を魅了しています。

俺の知る限り。
彼は、誰よりも真っ直ぐで、素直で、美しく、気高い人です。

どうか、誇りに思って下さい。



息子を、空の上から見守ってくれているであろう両親を思いながら、信史はまたステージの上の秋也を見つめる。


五年の歳月の後、秋也に逢いに来た日を思い出す。


もし、自分が日本に残っていれば……秋也はココには立っていなかっただろう。


信史は今、初めて。
本当に初めて。

意味が有ったのかもしれないと思えた。

周りがどう言おうが、自分の中でやっとそういう風に思った。

自分のしでかしたことは、許せなくても。

心から愛している男が、そこに居る。


観客と一体化している今は、手が届かない。

でも、ステージを下りれば……俺の元へ帰って来る。


俺は。

そんなことさえも分からなかった、子供だったんだな……。



曲が終わって晴海を見れば、泣いていた。

「……お前、泣くなよ」
「私だけじゃない」

グズグズと鼻をすする妹を横目で見ていると、一旦真っ暗になり静かになった。


しばらくすると、足音が聞こえてくる。
次に鎖をハメられる、ガチャン……という音。

「あ……っ」

グズグズ泣いていた晴海の声が聞こえ、カチカチとスティックの音がした。

次の瞬間、ステージがライトで照らされ、あの新曲が流れ始める。
秋也も当然のことながら、ギターを変えている。

「みんな~~~! もう映画観てくれた~~~?」

前に立つ健太郎が問えば、会場から声が飛ぶ。

「オッケー!! じゃ、キャラクター紹介!!」

そこでドッと笑いが起きる。

健太郎が順番にメンバーの名前とキャラクターを告げ、それぞれにスポットがあたり、派手に楽器を弾けば歓声が飛ぶ。


「そして、この俺が……救世主」

低い声で言えば、また黄色い声が飛んだ。



「行くよ~~~!!」

紹介が終わって、健太郎が声を上げ、歌が始まった。

もう会場は最高潮に盛り上がり、熱気の渦だ。



エンターテイメント。


持田がこの世界に足を踏み入れる時に、そう言ったという言葉通り。


自分達のスタンスを壊さないようにしながら、彼ら五人はずっと走り続け……ここまで来たのだ。


*

「はぁ……ヤバいなぁ。まだ興奮してる。顔、赤い?」

楽屋に向かいながら言う晴海に、信史がチラリと見て首を傾げる。

「お兄ちゃんってさ、ほんと喜怒哀楽出さないよね」

ブツブツ言う晴海を無視して、楽屋までの廊下を歩く。

「いつも思うけどさ、こーいうとこって迷路みたい」

だが信史は迷い無く歩く。
ここは三回目だ。


「お疲れ様でーす」

あっちこっちでスタッフが声を上げて、フル回転で動いている間をすり抜けるようにして歩く。


角を曲がると、牧村が壁にもたれて携帯を弄っているのが目に入った。



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