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「● 信史と秋也☆番外編」
You are my angel

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「ただいまー」

玄関を開けるなり、秋也が大きな声を出す。

「おかえり。声が大きいよ」

玄関まで出て来た祖母が、耳を指で弄りながら笑う。

「お邪魔します」

信史も靴を脱いで、居間に入った。

腹が減っただの何だのと甘える秋也を見て、微笑ましい。
自分はこんな風に、甘えた記憶がない。

そもそも父親は年を取って出来た子らしく、祖父母の記憶は幼い頃にしかない。
母方の祖父母は娘の結婚に大反対で、今もあまり仲が良いとは言えず滅多に会うこともなかった。


二人で祖母の料理をテーブルに運んで、途中で買ってきたビールをコップに注ぐ。

「俺はいい」
「あ、車」
「お前は飲め。酔っぱらってもいいぞ」
「そんなに飲まないよ。今日は食うの優先だもん」


祖母が最後に刺身を大皿に盛ったのを、テーブルの真ん中に置いた。

「わ、俺の好きなのばっか」
「信ちゃんが、果物と一緒に持ってきてくれたんだよ」
「さすが」

ニッと笑って、祖母にも少しだけビールを継ぐ。

グラスを三人で合わせて、食事が始まった。

大根と水菜、梅のシャキシャキサラダ、同じ大根とイカの甘辛煮、白菜と薄揚げとえのきの煮びたし、ホウレンソウの胡麻和え、高野豆腐の肉詰め、サワラの西京焼き。
そして信史の好きな、ササミのおろしポン酢と、刺身。

祖母は秋也が来る日は、いつも大量に作る。

きっと、一日中キッチンに立って。

食べきれないのを分かっていても、孫の喜ぶ顔を見たさに作らずにいられないのだろう。

「ご飯が美味い」
「だろ?」

秋也の家は、土鍋で白飯を炊くのだ。

信史もいつになくガッつくように食べながら、三人で色々と話ながら食事を楽しんだ。


*

「動けない……」
「食い過ぎだ。モデル失格」
「今日だけ。ちゃんと調整する」

元々、食べるわりには太らない体質だ。

「余ったのはタッパに入れておくから、持ってお帰り」
「うん」
「俺、片付けます」
「そうかい」

秋也も立ち上がろうとしたら、信史が頭を押さえた。

「お前はそこに居ろ」
「甘やかし過ぎじゃないかい?」

祖母が笑いながら信史を見るから、苦笑いしながら皿をキッチンに運んで行った。

前回の時の返したタッパにまた祖母が残り物を詰め、信史が手際良く空いた皿を洗って行く。

「シュウちゃん、テーブル拭きなさい」
「はーい」

「しかし、信ちゃんは早いね……ほんと」

祖母が信史の効率の良い片付け方を見て、感心するのもいつものことだ。

「頭で計算するんだよな。どこから手をつけたら早いか」

秋也がテーブルを拭きながら言う。

「なんでシュウちゃんが得意気なの」

*

片付けてからテーブルに座ると、祖母が押入れを開けた。

「信ちゃんが言ってたの、出しておいたよ」
「え、何?」
「シュウちゃんのアルバム」

祖母がテーブルの上に置いた分厚いアルバムに、信史が手を伸ばす。

小学校時代のは前に見せてもらったが、まだ秋也が赤ん坊の頃のは部屋には無かった。

物凄くドキドキしながら信史がアルバムの一ページ目を開いた。

「嘘……サル」

そこに居たのは、産まれたばかりのサルだった。

「ほんとだ。サルだ」

秋也も面白そうに覗き込んで来る。

産まれてすぐに撮ったのだろう、まだ肌も赤くて本当にサルだ。

「お前も久々に見るのか?」
「うん。次、めくって」

次にめくると、秋也が母親に抱かれている写真だった。

「わ……ほんとそっくり」

秋也が母親似だっていうのは他の写真でも見ていて知っていたが、改めて本当に似ていると思う。
少し違うのは、目元が秋也よりも優しく雰囲気が儚げな感じだ。

「今のシュウちゃんより、若い頃だよ」
「これじゃ、争奪戦だったでしょうね」
「そう。うちの息子が冬音(フユネ)さんを射止めたから、シュウちゃんが生まれたんだ」

お父さん……よくぞ射止めてくれました。
お母さん、産んでくれて心より感謝します。

信史は真面目に心で呟く。

そして。
二人の大事な息子の首に手をかけた自分を思い出して、その恐ろしさにブルッと慄く。

「はやく、次」

隣に早く捲れとばかりの秋也を見て、そこにいる現実にホッとして次のページを見る。

そこには秋也の父が居た。
秋也と同じ細身だが、力強さを感じる人だ。

「目は、お父さん似だな」
「そうかな?」
「そう。シュウちゃんの目は、永太(エイタ)と同じ」

両親の名前を聞くと、秋也の後ろで見守ってくれているという実感ともいえるモノが生まれる。

次のページに目を移せば、まだ赤ん坊の秋也を優しい目で見つめている母が居た。

息子の誕生を心から喜び、愛している両親。

今は傍にいなくても、愛されていた記憶が秋也にはちゃんとあるのだ。
秋也の与えられる愛情を疑わない根底が、そこにあるように思えた。


信史は何だか泣きそうになってきてページを捲れば、成長するにつれどんどん愛くるしくなってくる秋也が居た。


あぁ……。

―― 俺の、天使。


母の儚げさと、父の力強さを見事にミックスしている。

「うお、俺可愛い~」

自分で言ってる秋也を横目に、信史はこのアルバムを持って帰りたくて仕方なくなってきた。

「おばあちゃん。コレ、借りていいですか?」

信史の剣幕に、祖母は目を瞬く。

「すぐに返しますんで。パソコンに取り込んで、いつでも見ることが出来るようにして持ってきます」

祖母にもパソコンを買って、ホームドクター等と繋げるやり方を何度も通って教えてある。

「あぁ、聞いたことあるよ。やってもらおうかね」
「元の写真には、何も問題ありませんから。タブレットも持ってきますんで、ボタンを押せばすぐに見ることが出来ます」

秋也が呆れた顔をしていてもお構いなしに、データ―化した時の利点を熱弁で繰り広げ、祖母が微笑みながら快諾した。


「……プレゼンした気分だ」

祖母がお茶を淹れにキッチンに立った処で、信史が呟く。

アルバムを抱きしめていると、秋也が顔を覗きこんできた。

「なんか変態臭い」

小声で囁くように言って来る。

「どこが」
「別にいいけどさ。今度は信史の小さいの見たい」
「いいけど。あんまり変化ないぞ。俺は昔から可愛気がないって、母親に言われて育ったからな」
「そんなのはいいんだよ。小さい信史見たい」

二人でボソボソと話をしていると、お茶を淹れて持って来た祖母が信史を見て笑った。

「なに?」
「そんなに大事そうに、アルバムを抱きしめてるから」
「宝物じゃないですか」

信史が堂々と胸を張って言うのが可笑しくて、秋也も祖母と一緒に笑った。


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