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「● 信史と秋也☆番外編」
You are my angel

You are my angel 5

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ジムの地下にある駐車場から車を出して、買い物のための場所へ向かう。
この辺りは品質の良いモノが揃っているのだ。

駅前のコインパーキングに車を止めて、最初にフルーツ店に入った。
新鮮な果物が豊富に揃っていて、月に何度か入る店だ。

今もフルーツを欠かさない秋也のために、ジムの帰りにはいつも立ち寄る。

きょう秋也の時間が押さなければ、祖母の家に一緒に夕飯を食べに行く約束だから手土産も買おう。

店内の色んな果物を眺めながら、今日は何を買って帰ろうかと思う。

グレープフルーツは冷蔵庫に常備してるのが、後一個しかない。
この間はゴールデンキウイを喜んでいたから、それも。
……あんまり買いすぎないようにしないとな。

心でブツブツと呟きながら真剣に果物を眺める。


目の前に綺麗なイチゴが並んでいるのを見ながら秋也の口に入る姿を妄想していると、名前を呼ばれている気がした。

え……?と思って振り返ると、懐かしい顔があった。


「立花さん」

まだ新人だった頃の上司で、独立のために退社した人。

「久しぶりだな」
「はい」
「お前、スムージー飲む?」
「……は?」
「一緒に付き合え」
「はい」

もうさっさと頼んでお金を払っている姿を見て、変わりないノリが可笑しくてついクッと笑ってしまった。

「何がおかしい」
「いや、相変わらずだと思いまして」

イチゴのスムージーを渡されて、奥にあるカフェコーナーに向かう。

「大学の時の後輩だ」

そこに居た男の人が信史を見て、ニッコリと笑った。

「鹿島です」
「三村です」

名乗り合って立花の隣に座ると、鹿島が小さく吹き出した。

「何だ?」
「いや、強引に連れてくるなぁ……と思って見てたんで」
「そうか?」
「時間が経っていても、上司部下ってのは残るもんなんだと」

鹿島の言葉で、信史もフッと口元が綻ぶ。

何の抵抗もなく素直に着いて来た自分に、知らずに身についた習性を感じて。
上下関係がさほど厳しい訳でもないにしろ、やはり立花は自分にとっては先を歩く人だった。

その背中にいつか追いつきたいと思っていたが、さっさと独立してしまった。

「優秀な部下だったんだよ」
「会社自体、優秀でないと入れない」

鹿島が信史を見て言う。

「そして、生き残れない」

もう一度視線を合わせて、そう言った。

「有難う御座います」

信史が微笑んで答える。

自分よりいくつか年上であろう男は、放つオーラが大きく見える。
勤め人だとしても、重役……というには、まだ年齢的にも若すぎる。

「立花さんと同じく、会社経営されてるんでしょうか?」

放つ雰囲気の大きさと年齢とのギャップに、不躾だとは思ったが聞いてみた。
互いにラフな格好で、今日は休日だと思ったから。

「今はまだ、そこに行く途中」
「世襲の会社の……四代目だっけ?」

立花の言葉で、親の会社を引き継ぐのだと理解した。

「正確には五代目です。高祖父が小さな工務店から始めて、曽祖父が継いで拡げて行ったので」

世襲で五代目……。
会社の株を同族で締めている分、絆は強いが反面脆弱さもある。

株が分散されていれば何かの時トップの首を交代すれば済むだろうが、世襲の多くはそうはいかない。


信史は目の前の鹿島という男を見る。


生まれながら、上に立つ者。

初対面でまだ話もそうしていないのに、そういう言葉が浮かんだ。

幼い頃から帝王学をたたき込まれている人だと思うのは、その持っているオーラだ。
堂々としていて、なのに謙虚さも感じる。

学歴とか、頭の良さ……そういう優秀さだけじゃ足りないモノ。
芯に刻み込まれた者だけが持つとも言うべきモノか……。

信史も社会に出て、少しずつ色んなことを理解し始めているところだ。

本当のところなど、まだ二十代の自分には分かっていない。
日本では、若造、青二才、そういう言葉で揶揄されることも多い。

でも、それは事実だ。
たった二十数年生きたくらいで、先を歩く人達と同等に肩を並べられるなんて思わない。
……それを認められるくらいには大人になった。


いずれ独立をするつもりではあるが、目の前の二人を見ていると、まだ自分には早い。


世の中を斜めから見ていれば、気付くのに時間がかかったであろうこと。

真っ直ぐに見ることが、今になってどれだけ大事なことかを感じている。


「立花さん。俺、覚えてますよ」
「何をだ」

「どれだけ優秀でも、ちゃんと段階は踏め。一足飛びで走ると、大事なモノが抜け落ちる」

一言一句、忘れていない。


「あぁ……そんなこと言ったな」

目を瞬かせて、立花が思い出したように頷く。

「経験値は物差し。目盛が細かい方が、引き出しも多くなるとも」
「良いこと言うな、俺」

自画自賛しながらスムージーを飲むギャップに、笑いが零れた。


「いや、本当にその通りだ」

前に座る鹿島が強く頷く。


「先輩、俺にもそういうこと言って欲しかったです」

真面目な顔をして言うから流れでつい笑みが零れそうになったが、本人は冗談で言ってるようじゃない。


「大学に顔出してた頃は、自分の仕事でヒーヒー言ってた真っ最中だろ。そんな余裕あるか」
「ですね」
「ですね、って何だ」

こいつは昔から偉そうなんだと、信史にボヤいてくる。

「ま、俺もまだまだ今から目盛りを増やしてるところだ」

立花が腕を組んで、しみじみと言った。

「さて、俺も鹿島みたいに娘にイチゴ買って帰ろうかな。仕事ばかりで、たまにはご機嫌取っておかないと。お前もイチゴ見てたろ?」
「はい」
「自分で食べる……って訳じゃないわな」
「違います」
「やっぱりな」

ニッと笑って立ち上がり、結局フルーツを三人で選んで、立花が全て支払ってくれた。

大きな紙袋を三つ手にしてカードの支払をしている間、鹿島と店の外で待つ。

その顔が嬉しそうに見えて、久しぶりに先輩に会えたことがそんなに嬉しいのかと思っていた。

「いいな……」

ボソッと呟くから首を傾げると、こっちを見て小さく微笑む。

「先輩にご馳走になったり、こうして何かを買ってもらうことが、くすぐったい……なんて言ったらおかしいかな」

くすぐったい?

「…………あぁ、なるほど」

言いたいことが伝わって来た。

誰かに甘えるような……そういう感覚。

幼い頃から、今も、そしてこれからも。
この人には、そういう「甘える」ということが許されない。
……というより、頭にないのだと思う。

だから違和感があって、くすぐったい……のか。

「何となくですけど、伝わりました」
「……そうか」

俯いた横顔は、少し照れくさいような顔で微笑んでいた。



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