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「シリーズモノ〈番外〉集」
飛べない翼を広げて

【お年玉SS】飛べない翼を広げて 2

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すぐにビールが運ばれてきて、皆でジョッキを上げて乾杯。

「あれ? 正樹は?」

亨がビールを一口飲んでから聞くと、ちょうど扉が開いた。

「遅くなった。あ、亨に先越されたか」

その正樹がブツブツ言いながら入って来た。

またすぐにビールが運ばれてきて、また乾杯。

「うめ~~~っ」

正樹が、堪らん!!とばかりに首を振って嬉しそうな顔をする。

似てるんだよな……やっぱり。
亨も同じように首を振って、今はもう毒の抜けた笑みを零した。

「何だお前、ビールがそんなに旨いか?」

周りが声をかけてくるが、またグビグビと飲む。

「ここのとこ忙しくて、ちょっと控えてたんだよ」

プハーッと半分以上飲んでから、口元を拭って答えた。

「店も繁盛してるって聞いてるぞ」
「おぅ。まぁ、儲かってるとは言えないけど、家族の食いぶちは稼がないとな」

正樹と話をしていると、前に座る毅(タケシ)が身を乗り出して来た。

「亨、一級取ったって?」

……早いな。

「あぁ、二回目でやっとな」
「スゲェ~、合格率十パーセントのラインだろ?」
「あれ、受験資格だけでも難しいもんな」

実際、仕事をしながら勉強をする時間を確保する方が大変だった。

「なんで今更そんなの取るんだ?」

正樹が言うのも尤もだとは思う。
一級建築士は当然会社にも居るし、今の俺のする仕事は設計専門ではない。

「まぁ……自分で製図引いたりするの、結構好きなんだよ。それに、せっかく建築学科出たんだし」

二級の方は既に取得している。
実務の方も、肩書がつくまではやってきた。

「そーいうもん?」
「あぁ」

自分でデザインすること。
絵の道は断念したが、元々何かを自分の手で創り出すのが好きだ。
製図を引いて、出来上がって行く過程は没頭して時間を忘れる。

自らががデザインした家やビルを建ててみたい。
そんな暇があるかどうかは別にしても、夢を描くくらはいいだろう。

「忙しいくせに。……ほんとお前は自分を追い込むよな」

正樹が苦笑いして言ってくる。

「性分なんだよ」

夢のために努力をする。
それで手に入るのなら……何を惜しむことがある。

「ったく、そんなんじゃ倒れるぞ」

正樹は昔からこうだ。
口は悪いし、褒めるような言葉も遣わないが……気遣ってくれているのが伝わる。

「お前だって、レシピとかいつも考えるだろ?」

亨が問えば、頷く。

「ま、それは職業病っつーやつだ」

それだって、少しでもお客を喜ばせたいという気持ちからだろう。

「亨、俺の家そろそろガタ来てんだけどさ。お前のデザインでリフォームしてもらおっかな」

斜め前の信孝が言って来る。

「いいよ」
「お前んとこなら、安心だし」
「それマジで言ってんのか?」

毅が問いかけると、信孝が頷く。

「今すぐじゃないけどな。二世帯住宅が良いとか嫁が言い出してんだよ」
「あ、嫁姑?」
「そう……」

そこから信孝のちょっとした愚痴を聞き、話が飛んで子供の話、また飛んで仕事の話。
あっちこっちに話題が飛んでは、皆で酒を飲んで騒ぐ。


「おいっ。お前らうるせぇよっ」

扉が開いて、おやっさんにドヤされた。


「すいませーん」
「いい年して、集まるとガキに戻んだから」

怒りながらも顔は笑って、大皿に盛られた刺身を真ん中にドン!と置いた。

「うおー凄い!」

「親父、サンキュー」

この店の息子の卓司が言えば、調子いい……とブツブツ言って扉が閉まった。

「そういやお前、何で店継がなかったんだよ」

正樹が卓司に問えば、肩を竦める。

「妹の旦那が継ぐからいいんだよ。俺は包丁より、パソコンのキーボード打ってる方が性に合う」
「まぁ、昔からゲームばっかしてたもんな~お前」

集まった八人の内、四人が商売をしている家で皆が長男だ。
跡を継ぐ者、継がない者、今はそれぞれの道を歩いている。


鹿島工務店は、ずっと地域に密着して生き延びて来た。
地元のリフォームや建て替えなどは、大抵請け負っている。

本来はビルの建設などが主流だが、一軒家やマンションなども手がける。

大手に吸収されずに生き延びて来られたのは、そのおかげだとも言えるだろう。

会社が傾きかけた時、地元の学校に通った意味を痛感した。
地域に自ら営業に周り、頭を下げた。

同級生だけでなく、その親兄弟、親戚……。
どこへでも飛んで行った。

殺伐とした闇の中に落ち込み、心に余裕が無く、周りが皆敵のように感じていたあの頃。

泥の中を泳ぎ、溺れる寸前の際。
やみくもに手足を動かし、顔だけを水面から出して必死に息をしていた俺に、地元の人たちの労りの言葉はすぐには届かなかった。
一件取れるごとに金勘定を弾き出し、これで会社を救えることに一歩近づいたと。
ぶっ倒れても尚、そればかり考えていたのだ。


随分と時間が経ってからだ……。

この地に根付いてきた鹿島の家に生まれ落ちたこと。
そのことに足掻いていた俺に、この地に骨を埋めるということの意味が理解出来た時。

本当に世話になったと、心から思えたのは。

あの時の感謝の気持ちは、絶対に忘れない。

俺はそれに応えるべきだと思った時、宿命という名の意味が腹に落ちてきた。




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