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「シリーズモノ〈番外〉集」
飛べない翼を広げて

【お年玉SS】飛べない翼を広げて 1

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休日の絵画教室に行った帰りに、電車へ乗るために駅へ向かう。

昔から移動にはいつも運転手が居て、電車など滅多に乗ることもなかった。
でも、絵画教室は俺の完全なプライベートの時間。

月に一度程度しか時間が取れないけれど、その日だけはタクシーを拾うこともせずに電車を使う。

電車に乗ることがあったのは、高校時代。
たまにだけれど……あいつを迎えに行くために。

俺を見て、嬉しそうな顔をするから。
ただ、それを見たくて……そして会いたくて、迎えに行った。

一緒に電車に乗って、並んで座って帰った。
たったそれだけのことで、機嫌の良くなるあいつが愛しかった。

もう十五年も経つんだな……。
斜め上から見えるあいつの長い睫毛だけが、やけに目に焼き付いている。

そういえば一緒に居る時に、車を遣わずに電車に乗って仕事に向かうあいつに首を傾げたっけ……。
そんな俺に苦笑いしていた顔が浮かぶ。

色んなことを思い出しながら歩く。
絵画教室へ向かう時と帰る時は、それが許される時間だと思えて。

スーツではなくカジュアルな服を着て、亨はゆっくりと歩く。


駅前に大きなフルーツ専門店が有るのが目に入った。

絵画教室の帰りには、時々この店に寄る。


この店はフルーツの種類が豊富な上に厳選された品質で、仕事関係の贈答などにもよく使っているようだ。

今日娘はバレエ教室。
夕方には戻るはずだが、生憎夜は俺が出かける予定がある。

また家を出る時、玄関まで付いてくるだろうか。
あれをされると、どうも後ろ髪を引かれる。

いつも一緒に居てやることが出来ない分どうしても甘くなってしまうが、女の子なんだ。
……甘やかせて、何が悪い。

店に入り娘の好きな苺を眺めていると、横に誰かが立った。

「鹿島、誰に買うんだ?」

目線を移せば、大学時代の先輩だ。
とは言ってもサークルのOBで学年は被っていないが、時々顔を出していた人。
美術関係が好きで、同じく絵を描くことで話が合った。

この近くに会社があって、偶然同じ絵画教室で久しぶりに再会した。
絵筆を持って随分と勘が鈍ったことを痛感して、同じサークル関係者の絵画教室に行けば居たのだ。

「娘にですよ」
「さすがのお前も、娘にはメロメロか」
「もちろん」

ククッと笑われても、亨は澄ました顔で苺を眺めていた。

「ここのフルーツのスムージー、飲んだことあるか?」
「いえ」
「驕るから付き合えよ」
「スムージーを?」
「俺、好きなんだよ。でも、一人で飲むのは恥ずかしいんだ。付き合え」
「はぁ……」

別に急ぐ訳じゃない。

絵画教室で顔を合わせるのも、日が合わなければ数か月に一度程度。

「お付き合いします」

*

亨は家を出て、約束の場所へ向かう。

先輩と酒では無くスムージーを飲んでいると、会社勤めの時の部下にまた偶然出会い同じくスムージーを飲まされていた。
それを思い出して、フッと笑みが浮かぶ。

先輩と後輩。
上司と部下。

どんな学校を出ようが、どんな会社に勤めようが、そういう上下関係はある。
その距離や位置的なモノを、くすぐったく思える。

会社での自分には、そういう気安い相手がいないから。
同僚と仕事の帰りに酒を飲むことは、皆が普通にしていることなんだろう。
時には愚痴やプライベートな悩みを零し合う……俺にそういうことはこれから先もない。

気軽に声をかけた処で、背筋を伸ばされてしまう。
会社に入った当初から気負われてしまう立場だった。

だからこそ。
学生時代の関係には肩書も何もなく、上下関係だって生まれた順という理不尽さに甘えることが出来る。
人に従うことだって俺には甘えのように感じられて、良い意味でくすぐったい……なんて言ったら、首を傾げられるだろうか。

そうだろうな……多分。
また「感覚がおかしい」なんて、あいつが笑うだろうな……。


今日は中学時代の友人達との、地元での飲み会だ。
今も地元に残っている連中が誘い合っては、今日のように皆で集まる。

中々時間が合わなくて断る方が多いのに、それでも声をかけてくれることが嬉しい。
滅多に参加できない分、時間が有る時には無理にでも行くようにしている。


店の暖簾をくぐり扉を開けると、程よく賑わっていた。

「いらっしゃいっ」

店の大将が威勢よく声をかけてくれる。

「お久しぶりです」
「いや~、鹿島くんは見る度に立派になっちゃって」

この店は中学時代の同級生の店で、若い頃の亨の父が請け負って建てた。
地域の建物の多くは鹿島が関っている。

地元の繋がりは仕事にも大きく影響する。
そのために、中学だけは地元に通ったのだ。

会社を継ぐために敷かれたレールの上を、疑問も持たずに俺は歩いていた。
とは言っても、やはり多感な時期。
亨にとって地元の友人達の顔を見ると、あの頃に戻ったような感覚になるのだ。

あの頃の……たくさんの想いが胸をかすめ、切なさと同時に子供だった自分の苦さも甦る。

「奥でもう集まってるよ」
「ありがとう、おやっさん」

普段はあまり使わない言葉を、ここでは自然と出る。

そんな自分に口元をほころばせ、一番奥の座敷に向かった。



扉を開けた途端、六人の目が一斉にこっちを向く。

「来たーーーっ」
「遅せぇよ」
「久しぶり!!」
「出た、若社長!!」
「相変わらず、男前でムカつくなー」
「亨、こっちこっち。ここ座れ」

色んな声に迎えられ、亨が席に着いた。






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お年玉SSを書こうと思ったのですが、三が日を過ぎてしまいました(・_・;)でも、頑張った←
タイトルで気づかれた方もいらっしゃったと思いますが、今回のメインは亨さんです。
ラブエロ無しでBLじゃない!と思われる方&苦手だと思う方は、読まないで居て下さると有難いです。
純粋に。今も亨を愛して下さっている方々のために、彼の一日を綴りました。
3日間だけですが、お付き合い下さい(*´-`)
休み明けで仕事(雑用)で忙しいため、リコメ出来ないのでコメントは閉じさせて頂きます。
最後の日は、開けますので……。よろしくお願いします。

P.S 3話までですが、いつものように拍コメ等にも先読みダメダメですー。予想は脳内にて…(笑
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