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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 67

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力をくれた?
佐倉が問うような目をすれば、富樫が頭をかいて照れるような仕草をする。

「上手く言えないんだけど……。佐倉みたいな男に選ばれたような……そういうの」
「は? 何だそれ」

佐倉が呆れたように笑えば、富樫が腕を組む。

「いや……ホント、色々あって。自信喪失的な時期も長かったんだよ。元々、恋愛も上手く出来ないし。その上結婚生活もダメになって、仕事も失って」

ボソボソと話す富樫に小さく頷きながら聞いてやる。

「何が悪かったのかなんて鬱々と考えてさ。そこから、大学時代もよく思い出してた。で、そこに……俺を見つめている佐倉が居て。こんなにボロボロで無様な自分でも、憧れていたお前にあんな風に見つめて貰えた過去があるって」
「そんなに、あからさまだったっけ?」
「……うん」

また照れたような顔。
そうか……嫌な思い出になっていないってだけでも救われる気がした。

バレバレだったってことが、恥ずかしいけど。

……ということは、北見にも?
同じ轍は踏まないとか思って注意していても、知らずに零れ出てるとか?

だからあいつ……何か、ちょっと刺激でもされたのかもしれない。

「佐倉は今恋人いないの?」
「居ないな。結婚も破談になったし。仕事しかしてない」
「そうか……」

そう。そして、母親とは今も戦争中。

プライベートでは、男に片想いしていて、他の男に口説かれてる。
どの女にも気持ちは行かないし、男と恋愛する気もない。

そして、こうして過去に好きだった男に会いに来てる。

こんな俺の何処に憧れるっていうんだ。
本性を知れば、ただの情けない男。

「好きな人は?」

ほら、来た。

「いるよ。でも、片想い」
「そっか……」
「俺の話はいいよ。お前はどうなの?」

佐倉が言えば、首を振る。

「今は恋愛する気にはなれないな。結構、泥沼潜ったから」
「……で、過去の俺とのことが美化されたか」
「辛辣だなぁ~」

くっと笑って、グラスに氷を入れてミネラルウォーターを注いで、佐倉の前に出した。

「これ飲んで。今日はお酒も進まないみたいだし」

佐倉が何口が飲んで放置しているハイボールを目線で指す。

そうだった。こういう気遣い的な処が好きだったんだ。
まぁ、バーテンだから……そういう気遣いは当たり前にしたって、昔から富樫はそういう男だった。

「言わないの?」
「何を?」
「好きだって」

言う訳ないだろ……バーカ。

心で思って、笑って水を呑む。

「言ってどうなるもんでもなし。なっても困る。もう俺は三十なんだよ。あの頃より色んなモノ背負ってるし。今更、冒険する気なんかない」
「佐倉ってイケイケのくせに、そういうとこ臆病なんだ」

痛い処を突かれた。
富樫の言う通り、俺は臆病だ。

「そうだな……自分でも分かってるんだ」

認めて、もう一本煙草に火を点けた。

「何か、佐倉って可愛いね」
「気持ち悪いこと言うな」
「はは、男に可愛いはないか」
「今更その気になったって言われても、応えられないけどな」

ニヤッと笑って言えば、富樫が「残念」と笑う。

「夜の仕事するようになって、交際範囲も今までと変わった。男と恋愛する人だって、たくさん知った。そういう話してて、やっぱり学生時代の淡い部分に触れるんだよ。で、佐倉に会いたいなって思ってたんだ」
「ふ~ん。まぁ……襲われないようにな」
「……あはは」

ワンテンポ遅れて笑う富樫に、言い寄られたことがあるんだろうと推測する。

「俺は完全なストレートだから、面白くないって言われた」

そうだよ。
お前は男にグラつきもしないタイプだ。

「上手くかわすのも、仕事の内だろ?」

短くなった煙草を消し、佐倉が財布を取り出す。

「え。もう帰るの?」
「うん」
「そっか……。疲れてるみたいだしな」
「仕事しろよ、富樫」

グラスに残った水を呑み、いくらか聞けば首を振る。

「今日はいい。疲れてるとこ来てくれたし、何よりも話出来て嬉しかった」
「そう? じゃ、お言葉に甘えるわ。薄い酒だったし」
「自分が薄くしろって言ったんだろ」

佐倉が席を立ち、店の扉に向かうと富樫がついて来る。

店を出て、富樫が頭をペコリと下げる。

「本当にありがとう」
「いや、また機会があったら顔出すわ」
「うん、絶対に」

ニッコリと笑う富樫に微笑み、佐倉は通りの向こうへ歩き出した。

*

帰りの電車に乗って、空いてる座席に座る。

はぁ……。
行って良かったのかどうか。
スッキリとしたのは、富樫の方だろう。

俺は、そうでもない。
……いや、行ってよかったかな。

好意と恋愛感情は別。
分かってんだよ、そんなことは。

富樫の好意を感じて……。
それを俺は、勘違いしかけたこともあった。

十年か……。
進歩ないな、俺。

けど、好きなもんはしょうがないんだよ。

そこの処は自分である程度納得もしてるんだ。

なのに北見がこう、なんというか。
……距離を縮めてくる。

富樫の時とはそこが違うから、戸惑うんだ。

まぁ、向こうは俺がそういう意味の好意だって知らないから出来るんだろうけど。

北見って、結構図太いんだよな。


『言わないの?』だってさ……。

百歩譲って……言って、振られるのはいいとして。
困るのは、同じ会社なんだよなぁ……。

それも仕事で組むこともある相手だし。
これって、男女だって戸惑うだろう。

その上、まかり間違って「好き」「じゃお付き合いを」なんてことになるのも、俺的には無理な訳で……。

自分が望んでいればまた違うんだろうけど、俺にはどう考えても無理なんだ。
ちょっと想像しただけで、体中を掻き毟りたくなるくらい恥ずかしいってのに。
……絶対に無理。

「お前のこと好きなんだ。でも恋愛したいとまでは思ってない。ただ、見るのだけは許せ」

ってのが、俺の本音。

そんなこと言われた北見の顔を想像すると、可笑しくなってくる。


俺、北見のこと見てる……よな、多分。
富樫にも、しっかりバレてたし。
あの頃よりは、上手く隠してるつもりなんだけどな……。


もし、この想いがバレてしまっても。
北見なら、俺に気持ち悪いとは言わないだろう。

この間の北見との会話で、そう思った。

けど一緒に過ごす時間は無くなるよな。
それは、寂しい。

俺のペースで、俺のライン。

北見がこっちに向かって来なければ、大丈夫。


ペースを崩すな。
ラインを越えて来るな。

……って、勝手か?

だって、しょうがないじゃん。
お前のこと、好きになっちゃったし。

俺の勝手で好きでいさせてくれよ……北見。


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~ Comment ~

違うとこ。

Kiri様。

あーぅ。判った!私がモジモジしちゃうとこ…(^_-)-☆

さくらちゃんが女で片思いなら距離を詰めるってとこだ!

詰めないからイライラしてたんだ。そーかー。判ってて詰められないんだ。

あーっ!便秘解消くらいすっきりした(便秘したことないけど(//∇//))

富樫くんが向井君みたいにいい友達になってくれるといいなぁ。心のお助けキャラ…向井君。わりと好き!でした。

あと国信くんも好きだった。

当分モジモジしますね。明日も楽しみです。

寝ぼけて顔洗ったら小指が鼻の穴に刺さって、鼻が痛い潤でした。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

NoTitle

佐倉さーん

北見君連れてこのお店いってくださーい

Re: 違うとこ。

潤様

気づいてくれましたか?
こういうキャラは、今までに居ませんでした(このサイト内でのメインで)

隼や明良たちが嫌っていたタイプの、バイセクシャルそのものです(バイにも色々と…)

男とエチはするけど、恋愛はしない。ソコは完全に割り切ってる人。

女とも恋愛は出来ます!ちゃんとそれなりに「好き」なんです。
ただ、焦がれるような恋心まではいけないのが佐倉さん。それを見透かされ、結婚が流れた…。
結構いると思いますよ、こういうタイプ。彼女がそれを気にしない人なら大丈夫だったかと。

女だったら、行きますよ…。この人本来はネガでもないし、イケイケな方ですから。

ある意味究極の我儘キャラなのでした(笑)

>寝ぼけて顔洗ったら小指が鼻の穴に刺さって←これ、たまに聞く。あるんですねーww

有難う御座いました☆

Re: タイトルなし

鍵コメn様

はい、これが佐倉さんの「今」の本音です。

こっちに来るな。俺のペースで、俺のラインで、俺の勝手で好きでいさせろ。

ひゃ~ わがままー!爆

応援有難う御座います^^

Re: NoTitle

とおら様

やっぱり、考えますよね(笑
まぁ、今は行けないけどね。

もしくっ付いたら…いつかは、もしかして?かもしれないw

有難う御座いました☆

自分で色々考えて予防線も張ってすきでいるだけだから…って( 〃▽〃)

北見は様子見ながら…でも確実に気持ちも距離も近づいてるけど(笑)

頑張って…頑張って…爆発して抑えきれなくなる佐倉が凄く楽しみ(≧∇≦)

ってけっこう北見だったりして( ・∇・)

分かる気も。

ばらす気は無いんだから、それくらい(これくらい?)いいじゃないか。

こんな気分になったこと、私にもありました…、遠い昔。 笑

でも、相手がこちらに好意的関心があると、気付かれちゃうんですよね~🎵


北見君、とっくに気付いて気になってるし。
もやもやですし?


二人とも、
どこまで貯まった…溜まったら?分かるかな、肉欲(❗)付きの好き、になってる気持ちに。。
佐倉さんのほうが自分に認めさせるまで時間がかかりそうだ〰…、多分。

ひとまず、富樫さんとの過去に区切りをつけられた分、前進でしょうかね。

NoTitle

kiri様。
なーんとなく。
なんとなく、ですよ?!
サクラちゃんを読んでると、ジャイアン澪を思い出します。
冬吾とくっついた後の可愛い澪ではなく(苦笑)
ジャイアンな頃の澪を。
しかし、北見ーは冬吾と違ってサクラちゃんの言葉の端々の意味を理解できる訳はないので、、、
有る意味、大丈夫。追い詰められないかと(爆)
それどころか、サクラちゃんの想いとはウラハラに好きなように間合いを詰めて来やがる(笑)
さあ!逃げ切れるか?サクラちゃん。
北見ーは都合良く、眺めるだけの好き♡で、居させてくれるか?!


大丈夫。とにかく2人の進展を邪魔するのは、納期ですから。

頑張れー、仕事っ!

Re: タイトルなし

ラムまま様

これが、佐倉の本心なんですが(苦笑

今までのキャラと違いますよ…。
相手の幸せのために…とか、そんなもんでもない。
強がってる訳じゃなくて、ただの我儘な思い。だからこその、片想いなんです!

このペースを崩してくるのが、北見くん。
ソコはやっぱり好きだから、佐倉もグラグラしちゃうんだよねー(´艸`*)

有難う御座いました☆

Re: 分かる気も。

ますみ様

うん、それくらいいいのいいのww

普通は、片恋でも好きなら結ばれたいと思うもんです。でも、佐倉は違うんだなー。

前も言ったけど、このお話のキャラを友人に語った時「凄い分かる!!」と大共感もらいました。
それは彼女が会社の若い男の子に恋をしてたからです(彼女は既婚者)

見てるだけで嬉しい♪でも、それだけで充分!
たまに皆でご飯行って、こっそり見て喜んで心でキャ~♥
会社に行くのが楽しくてしょうがない!もし万が一間違いがあったら、全て壊れるから近づくことは絶対しない。例えになりますが男と女に置き換えると、そうなりますね。

でも普通にそういうことはありますよ。恋心って楽しいじゃないですか…見てるだけなら。
どっかのコンビニのバイトくんが可愛いとか。居酒屋の店長がカッコイイとか(笑)小さい恋♪

今日、コンビニのバイトくんがあまりにも受け受けしくて。
それもヤンチャ受けというドストライクだったもんで、違う意味でトキメイテしまったわ…。

ってことで、佐倉のスタンスは変わらないだろうな…。10年こじらせて筋金入りだし。
やっぱ、北見ですかねww

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

優様

あはは、そうかもですね。この自分勝手さ。
でも、これが片想いの良い処じゃないですかー(澪の場合は冬吾を巻き込み…w
恋愛になっちゃうと、好きなだけじゃいられない色ーーんなモノがくっ付いてきやがるんですよ?←

未来に結婚とか子供が見えるなら…突き進めるけど、♂♂でどっちもゲイじゃない。
こんなの「片想い」が良いと思ったって、何処がおかしいんでしょう…(なんてね

バリバリの企業戦士で、結婚や子供の話も仕事で接待なんかする営業にはつきもの。
ずっと独身だとね、色々言われまくりですよ…傍で見てて「放っといてやれよ」っていつも思うw
他の部署よりも、そういう点じゃシビアです。…その中にいる佐倉さん。

そう、結局は北見くんですね。彼がどう思うかで、また変わって来る。
佐倉は本当に「見てるだけ」の方が楽なの。
なのに、やっぱり北見が色々言うから「俺に、触れるのか?」と流れる…(なんでソコなの佐倉さん 笑

有難う御座いました☆
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