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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 56

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青木に連れて行かれたのは、エビの専門店。

「佐倉さん、エビは?」
「好きだけど。店の前に来てから聞くか?」
「本当だ。俺、ほんと浮足だってんな」

頭を掻く姿に、佐倉がプッと笑う。
まるで女を口説いてるようだ……と思った処で気づいた。
青木にとっては、恋愛対象は常に男なんだったと。

「ここはオマール海老が人気なんだけど、他もとにかく美味い!!」

少々興奮した様子で、店の扉を開けた。

「らっしゃーーーい!!」

威勢の良い声で迎えられ、店内を見れば店員もシェフも全員が男だ。

案内された席は、個室。

「うわ……男二人で個室?」

思わず佐倉が言えば、店員がニッと笑う。

「普通です」
「あ……そう」
「はい」

本当かよ?

佐倉の顔を見て、今度は青木が笑った。

「まずは、ビールでいい?」
「あ、いいよ」
「ビール二つ」
「かしこまりましたぁー!!」

店員が頭を下げて、扉を閉める。

「何か……店の創りは上品なのに。威勢がいいお兄ちゃんばかりだな」
「そのギャップが受けてるんだ。で、エビも全部産地直送で美味いのなんの」
「なるほど」

ビールが運ばれてきて、青木が慣れた様子でオーダーをしていく。

楽だなぁ……。

なんて。

女の立場みたいなモノを味わってるような気がして、自分で呆れるけど。

店員が去ってから、二人でビールで乾杯をした。

「まさか、佐倉さんと二人でデート出来るとは……運は俺に味方してくれたかな」
「デートじゃない」

タバコを取りだし火をつけて、煙の向こうに見えるのは……北見の顔。
あいつ……ちょっと怒った顔してたな。

まぁ、キツい納期を告げた相手が、他社の得意先と食事。
自分達はデスクでコンビニのおにぎりか、良くて牛丼だもんな。

けどさ、分かってるはず。
あいつだって、企業の中の一員だ。

お前の処に持って行くまでが俺の仕事だ。
そして、お前からまた俺にバトンが渡って来る。

「佐倉さん?」
「あ……」

煙草を吸いながら考えに浸っていた自分に気づき、苦笑いで誤魔化す。

「今度休日に付き合ってくれないかな」
「なんで?」
「なんでって……。そこまで驚かなくても」

青木が失笑するように言って、ビールを飲む。

「友達と普通に休みに遊びに行くとか、あるだろ?」

あるよ……。
ここ最近は無いけどな。

「忙しいから、休みの日くらいグダグダしたいのもわかる。俺もそうだし。でも、たまにはスーツじゃなく私服で飯食いにいったり、いや……家でゆっくり飯作って食べて飲んで。そういう休みも満喫しようよ」

したよ……もう随分と前になるけど、北見とな。

「生憎、ほんと仕事で疲れて出かける気力ない」

嘘だ。
北見だったら、疲れなんか関係なく行く。

「じゃ、週末の仕事帰りにでも来てくれたら。俺の家、佐倉さんの会社から近いし」
「遅い時間からか?」
「夕食食べて、飲んで。何だったら、そのまま泊まればいい。昼近くまで寝て、起きてからブランチ」
「……なんでいきなり泊まりなんだよ」
「あー……警戒するか。やっぱり」

当たり前だろ。
あんたは男を抱く男だ。
そして、俺は男に抱かれる男。

別に身持ちが硬い訳じゃない。
男とのSEXは好きだよ。

でも仕事が絡む相手で、ましてや恋愛を前に持ってくるあんたとは寝ない。

「何もしないよ」

は?誰が大人しく、させるか。

「俺は女じゃない。そんな風に言うな」
「気を悪くしたなら、すまない。寝る部屋は、ちゃんと別にあるんだって。実際、友達が来た時はそこで寝てる」

黙っている佐倉に、青木が小さく溜息を吐いた。

「友達でって言っておいて、ちょっと押し過ぎたか……。勇み足だったかなぁ」
「下心が透けて見えてんだよ」
「そりゃ、男だもん。隙見せたら、行くよ」

だよなぁ……。
それが、男だ。

「まだ友達にもなってない」
「斬ってくるなぁ……。でもそれは佐倉さんが悪い。気軽に飲みに誘っても、断られてばかりだ」
「だからっ。俺は大きな仕事抱えてたんだよ。あんただって、同じ営業しててそれなりに部下がいりゃわかるだろ」

ちょっと喧嘩越しになってしまったが、俺は悪くない。

「自分の仕事をしながら、部下の仕事のフォロー。だから、デスクワークは必然的に定時を終えてからになる。そして終電を気にしながら、会社を出る」

青木がそう言って、眉を上げる。

「みな、やってることだ」

あっさりと言う佐倉に、青木は頷いた。
自分だって、そう変わりないはず。

「だからこそ、時には休日に部屋で旨いもの食べてゆっくり過ごす。一人もいいけど、二人だともっと楽しい」

そうだな。
一人で休日に溜まった家事をしてダラダラ過ごすことも好きだけど、楽しいというのとは違う。

北見と過ごした休日。
……あれこそ、青木の言う楽しいことだった。
ずっと難航していた契約を取れたのも、プライベートの部分で楽しいと思えることがあったからかと思ったものだ。

「佐倉さん、仕事が生きがいになりすぎてる気がするな」
「……余計なお世話だ」

そこへ店員が、料理を運んできた。

「天使のエビのお造りです。こちらの方は、えびせんになってます」

大きなエビが殻がついたまま、ドン!と置かれた。

目を剥く佐倉に店員がニッコリ笑い、頭を下げて出て行った。

「デカ……」
「まぁ、食べて。ここの水槽でそのままとったやつだから、新鮮で臭みが無い」

青木が慣れた手つきで殻を剥く。


これ……動くんじゃないのか?
一部が鮮やかな色になってるってことは、少しだけ火を通してるんだよな。


けどさ。風太みたいに、エビ反りとか……。


手を付けずに躊躇している佐倉を見て、青木がクスッと笑う。


「大丈夫。出す直前に上からサッと湯をまわしかけてるから、動かないよ」

バカにされた気がして、佐倉もエビをつかむ。
青木の真似をして殻を剥いて、わさび醤油に少しだけつけて口に入れた。

「……甘い」
「だろ? 天使のエビってネーミングも頷ける」

海老独特の臭みもなく、弾力があり、身が詰まっている。

「お待たせしましたー!!」

そこからはい威勢よく、どんどん料理がテーブルに並んで行く。

サラダ、マリネ、焼き海老。
海老だけではなく、里芋のフライドポテトや野菜の漬物。

そして何よりも佐倉の舌を喜ばせたのは、海老ときのこの焦がしウニ醤油……というモノだった。

あまりの旨さに、佐倉は嬉しくなってきた。

北見を連れてきてやろう。
旨いと言って喜ぶ顔を浮かべ、佐倉の口元は綻んだ。


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~ Comment ~

NoTitle

kiri様
お久しぶりです
でもずっと読んでましたー

>北見を連れてきてやろう。

思うところ そこなんですねー
きちぁみもナポリタンで同じことを(#^^#)

今回のお話し じれじれってしてるかもだけど
距離感がすごくよく伝わってきて楽しいです
なんていうか   恋の駆け引き?
うまく書けなくてすみません
青木さんも必死
北見も落ち着かなくて
佐倉さんはしっかり思う相手わかって
でも自己防衛に走ってる

どういうふうに変わっていくんでしょー
毎回楽しみにしてます

なんだかんだ言いながらグイグイ来てるよねー青木氏。
佐倉さんは、やっぱ一線引いてるしキタミーへの気持ちがあるからグラグラはしないかなあ~とか思うけど、こうもグイグイこられると…心の中で「うぜぇ…」とか思って読んでました(笑)

でもひと波乱あった方が、キタミーも自覚するかもねぇ~(*´ω`*)ふふふ

明日も楽しみにしてます~♪

NoTitle

kiri様。

この前は北見ーが海鮮の旨い居酒屋にサクラちゃん連れて来よう♡
そして、今日はサクラちゃんが海老の旨い店に北見ー連れて来てやろう♡♡
でも、サクラちゃん?
今、目の前に居るのは青木さんやけど、、、
大丈夫?
違う人の事考えて、口元綻んでるの、見透かされでるのでは。。。

でも、美味しい物を食べて思わず『連れて来てやろう』と思うのは、好きな人やんね。
結局、ソコやんな。
男とわざわざ恋愛めいたことするとしても、青木さんと別にしたいわけではないし。
それは、青木さんには伝わるかしら?
サクラちゃんは、好きな人は男の北見ーやけど、男と恋愛したいわけじゃ、ないんやで、てね。

Re: NoTitle

とおら様

お久しぶりです^^

そう。やっぱりね、何処に居たって好きな人は特別なもんです。
ちょっと怒ってたように見えたのも、気になってるんでしょう…多分。

北見も、ナポリタンで同じことを思ってましたねー。
ま、こっちは懐いてるダケなんですけどね…まだ。
ほのかに、何かが芽生え始めてる…かもしれませんがww

うん、今回は距離感を念頭に置いて書いてます。
ジワジワ…と近づいて行くのを普通の日常で。
それぞれの思いは、どうあれ…淡々と進みますので、よろしくですー!

有難う御座いました☆

Re: タイトルなし

ちぃこ様

>なんだかんだ言いながらグイグイ来てるよねー青木氏。
はい。そりゃ行きますよ。男はその過程が何よりも、楽しい時間…と声を揃えていいますw

嫌われているのなら、もちろんダメダメですが。
まずは「親しくなる」段階から、ちゃんとステップ踏む努力!ココが楽しい♥

色んな話をして、人と関わって……考えがまた変化して行く。
特に青木は、佐倉には結構重要な人でもある。
♂同士なんて考えたことも無かった佐倉には…( *´艸`)

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

優様

いいんです。そんな繊細なこと考えて、青木も口説いてない(笑
難航な相手ほど、オスの本能で萌えるのです…。
そういう部分は、佐倉も男だから理解出来るでしょうし。

デートではない。これは、一緒に食事をしているだけ…。
だから北見を連れてきてやりたいと思うことに、罪悪感なんか有りませんw
青木も、ぜーんぶ分かってますよ。佐倉が他に「気になる相手」がいるのはちゃんと知ってる。
プラス、男とは恋愛する気のないバイセク(ゲイからは嫌われるタイプ)とも…。

それでも攻撃してくる。
ココがね、内野が「好きだと口にして口説ける幸せ」に通じるんではないかと。

今までは目線で見るだけだった「好み」の佐倉さんですよー。
好意を隠さなくていい…。表に出していいんですよ!佐倉なんか、必死で隠してるのに(>_<)
結果はどうであれ、青木が浮かれる気持が切なくて可愛いです。

有難う御座いました☆

えび反り

kiri様
「けどさ。風太みたいに、エビ反りとか……」って佐倉氏これから食べるエビを風太くんに例えるとは…風太くんに食いつく私はどれだけ子供好きなんでしょうか。佐倉氏にとっては青木さんが何を言ってもすべてが北見くんに繋がるのよね。青木さんは報われないけれども、佐倉氏との会話を楽しんでるのかな?
北見くんは親しくしている先輩を取られた気分かなぁ。

Re: えび反り

美夕様

エビ反りが苦手なのは、風太のせい…?笑

青木と一緒に居るから、余計に北見を思い出すのです。いつも、こんなにはさすがに考えないw
経験のある方もいるんではないかなー。
好きな人がいる時に、他の好意をぶつけられると…余計に、想い人に気持ちが行ってしまうことって。

>青木さんは報われないけれども、佐倉氏との会話を楽しんでるのかな←笑
さすがに、報われないけどOK!とは思ってないww微塵でも可能性を見ているから、行くんです…。
今は青木だって、この人じゃないとダメ!ってとこまでは佐倉に惚れこんではいない。
だって、まだ知らないことイッパイ!佐倉が警戒を解いてくれるのを、待ってるのです…。

有難う御座いました☆
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