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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 54

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契約が取れた日。
佐倉は、仕事の帰りにバーに向かう。

こういう時は、SEXをしたくなる。
難航していた契約が取れた時は、特に。

女を口説くように、相手を落とす。
まだ新人だった頃、誰かがそう言っていた。

人によってそれは様々だろうけど、俺は一理あると思っている。
相手との駆け引きの心理戦に勝ったような……そんな気持ちだ。

恋人の居ない男なら性欲が湧いてきた時、風俗なんかに行くのだろうか。
男にはどうしようもなく欲望が高まり、どうにか処理をしたくなる時がある。

もちろん自慰という手もあるが、そんなものじゃ治まりようのない昂ぶり。

俺は今、SEXがしたいのだ。
甘ったるいのは必要ない。欲望をただ、ぶつけ合うようなのがいい。
そこに行けば相手がいると思えば、微塵も躊躇いはない。

ただ一つ躊躇するとすれば、あのバーは青木がいるかもしれない……ということ。
だが、知らない場所に行ってまで相手を探すなんて危険なことはしない。

結局はいつものバーに行き、カウンターに座った。
一杯目に口をつけて間もなく、男が寄って来る。

顔を見て、その体の造形にも目を走らせ、佐倉は微笑んだ。

今日はツイてる。
一人目から、欲望を感じる相手だ。

まずは一杯酒を飲みつつ、軽い会話をしてから。

*

ホテルで一戦を交え、佐倉はベッドで煙草に火を点けた。

SEXの後の一服は、旨い。

「激しいね」
「溜まってたもんで」

スポーツのような感覚。
ただ気持ち良くて、スッキリして……哀愁も何もない。

「俺も、男は久しぶり」
「……だろうな。最初、経験あんのかと思ったよ」
「あんたがリードしてくれて、その内に思い出してきた」
「何年ぶり?」
「え……そんなに下手だった?」

ショックそうな顔に、佐倉がプッと笑う。

「違う、違う。そういう意味じゃない。……俺も、この二年くらいかな。また男とSEXするようになったのは」

ホッとしたような顔をして、指を折り出した。
おいおい……そんなに久しぶりか?

「五年ぶり……かな」
「ふ~ん」

あまり深い話はしないようにしてる。
下手に情が湧かないように。

「また会いたい……って言ってもいいもの?」
「ダメ」
「……やっぱりか~」

苦笑いしている顔は、まだ若い。
俺よりも年下だろう。

「恋人が欲しい訳じゃないし、セフレみたいなのも要らない」
「うん……」
「時々、無性にSEXしたくて堪らなくなるだろ? そういう時だけ」
「虚しいとか思う?」
「は?」

佐倉が呆れたような顔をすると、手をブルブルと振る。

「いや、今後の自分への参考に」
「ないよ。最初から、そんなもんだって思ってるし」
「そっか」
「じゃ、俺シャワー浴びて帰るわ」

佐倉は煙草を灰皿に押しつぶし、ベッドから出た。

*

電車に乗って揺られながら、窓の外を見る。

契約取って仕事の達成感と共に、腹の中に溜まったモノも吐き出して体も軽くなった。
逃げるように仕事に没頭していたから、性欲が一気に噴き出したような感じだ。

けど仕事の帰りと同じように、電車に揺られて帰る。
そんな自分がちょっと可笑しくて口元が緩む。

今日の男……。
大学時代に、俺にSEXを教えた先輩に似てたな。
俺が男に興味があるのを見抜いて、口説いて来た。

好奇心には勝てなかった。

好きだった富樫への想いを隠してたから、あの頃は無駄な罪悪感まで持っていた。

今じゃそんな気持ちにさえならない。

……あれから十年だ。
十年分、年を取った。

あの頃のような熱くて激しい想いではなく、静かに淡々と一人を想う。

片想いは、片想いだ。
それは相手のためじゃなく、自分のため。
嫌われないための、偽善。
自分を護って鎧を被り、好きな奴の好意を先輩として受け入れる。

こうやって時に性を開放して均整を保たないと、それも出来なくなる。

佐倉は携帯を取り出して、北見からのメッセージを読んだ。
ホテルで気づいたけど、読まずに放置しておいたのだ。

――主任の内示が出ました。一応は昇進です。祝って下さい。カレーでもOK

くっ……と、笑いが込み上げて声が漏れる。
何が「カレーでもOK」だよ。

そうか。内示が出たか……。
だから今日、倉科と昼飯食べに行ってたのか。

同じ肩書……。
そんなことが嬉しい。
バカみたいに、小さなことに嬉しさを見つける。

カレーなぁ……。
そういえば、長いこと作ってない。
あれ、余るんだよ。
まぁ、余ったら北見に半分持って帰らせればいいか。

自分の家で、俺の作ったカレーを食べる北見……。
佐倉は想像して、ニヤける口元を押さえる。

結構、萌えるな……。

―― カレーは、次の連休が取れた時に、作ってやるよ。その前に、昇進祝いに飯奢る。

文字を打って、送信した。

すぐに返事が来た。

―― 今、どこですか?

― 電車の中

―― 飯、ちゃんと食いましたか?

― 昼飯が夕方になったから、そのままだ

―― 帰りに家に来れば、豆腐の肉そぼろの余りがありますよ

― またそれかよ。行かねーよ

文面を打ってる間、自分の口元がずっと緩んでいる。

気が付くと、北見の住む駅に着いていた。

― お前の駅に着いた

―― 来ますか?

― 何しに行くんだよ

―― 豆腐食べに

豆腐だけ食いに行くのかよ。
また、くっと笑う。

結局、自分の駅に着くまで下らないメッセージをやり取りしていた。

― 着いた。またな

―― じゃ、明日

微笑んだまま電車を降り、改札を抜けた辺りで携帯が鳴る。

表示は北見だ。

「何だ? 言い忘れか?」
『なんか調子良くやり取りしてたんで、その流れで』
「バーカ。俺は彼氏か?」

時々こうやって、茶化すくらいはさせろ。

今、機嫌いいんだよ、俺。

『あ~……それ、いいかも』

そう来るか。
慣れてきたな、この野郎。

「んじゃ、キスしてやるよ今度」
『それは……』

ほら、見ろ。
……俺も大抵自虐的だ。

「おい、退くな~」
『いや、ちょっと想像してしまいました。すいません』

……バカ。
想像すんなよ。
気持ち悪いとか思ってんじゃねぇぞ。

「想像すんな、バカ」
『佐倉さんが言ったんでしょ?』

北見も笑ってる。
そうそう、その調子。

結局、軽口を叩きながら家に着いた。

「着いたわ。風呂入って寝る」

もう、ホテルでシャワー浴びてきたけどな。

『じゃ、おやすみなさい』
「おやすみ」

佐倉はずっと頬が緩んだまま、鍵を開けて部屋に入った。


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約束が増えていくV(^-^)V

kiri様
一戦交えたのが青木さんじゃなくて良かったです。青木さんが来てたら佐倉氏が他の男の人と連れ立って外に出るのを黙って見てないですもんね。
帰りに北見くんとのメールのやり取りは甘い甘い恋人同士ですね(^w^)家来ます?なんて、必殺技のセリフですよ。佐倉氏、よく行かなかったなぁ~。次はカレーを作ってあげる約束か。増えていく約束事が幸せですね。
ここの所、何度目かの本の爆買い月間中。部屋の角に本の山が出来てます。ぎっくり腰も治り書店で注文した本をえっこらえっこらと持ち帰ってます。帰りについ「風太くんがいたら1冊ぐらいは持ってくれるかな?いや、風太くんがほしい本を買って帰るな」など想像してニヤけてます。

結構、萌えるな


ってかぁー!萌える萌えるぅ~。
いいですねえ、自分が作ったカレーを好きな人が食べて、余ったカレーを持ち帰ってまた食べるって。どっちが嫁なんだか。
いつもよりも5割増しでコトコト煮込んじゃったりして。
溜まったから欲望を吐き出すためにタイプの男と寝る、一晩限りの後腐れ無しなしの関係。
罪悪感など感じないのは北見くんの事は好きだけど、恋愛してる訳じゃないからなんですね。
でも北見くんとのメールのやり取りや電話での会話なんて「ラブラブ」にしか見えない!そりゃあニヤけるのも無理はない。
飲みに行くのと、ウチでカレーと一度に2回の約束をしちゃったんですね。あー楽しみですぅー!

初コメします

初めてコメントします。
実はコッソリ読んできたので、BLサイトにコメント残すのも初めてです(*^^*)

数ヶ月前にkiri様のサイトに出会って、毎日読み続けて、好きなお話は三周以上しちゃいました。
Kiri様のお話は、夢と現実がバランスよくて、ほんとにこんな人達がいるのかも!?って思えちゃうんですよね。萌え所もバッチリで。うふふ
今のお話も大好きです。今回のメールのやりとりも、甘酸っぱいですよね~。はあ~

そして、彼らの仕事に対する真剣さもなんだかすごく響いて、私も真剣に頑張ろうって思えてきています。
実は今、仕事がものすごい山場を迎えて挫けそうなのですが、私も納期…じゃないけど予定通り、ミスのないようにがんばるぞーって思えます。
毎日元気貰ってます!というのと、大好きです!を伝えたくての初コメでした。
更新楽しみにしています♪

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Re: (◦ˉ ˘ ˉ◦)

鍵コメR様

あ、またやっちまいましたね(;・∀・)

後半の2人のメッセージのやり取り&会話。
腐腐…でしょ?笑

まだこの程度ですけども!どうなっていくのでしょう…w

有難う御座いました☆

Re: 約束が増えていくV(^-^)V

美夕様

さすがに青木は、本気モードで口説いてきますからね。
情が湧くようなのは、この人望んでないもん。

その帰りの北見との、ちょっと甘い(?)トーク。
上機嫌なもんで、口も軽やか(笑

色々と約束だけが増えて…一体、いつそれは消化出来るんだろう…(;'∀')

あはは。風太に1冊!!
「ぼきゅ、もちゅよ!!」って、いつの間にかグチャグチャにされそうですが(笑
BL本、私も積みあげてますわー。連休中に消化しようと思ってたけど大して…。
なのに、ネットで新刊出たら我慢できず。新人作家さんも次々に。
ネット作家さんのが書籍化など、クオリティー高い人も続々。読む速度が、追いつかない…(´A`*)・゚。

有難う御座いました☆

Re: タイトルなし

おみち 様

萌える箇所、一つでもあったら嬉しいです。
もうね、Rシーンよりこういった何気ない時の方が萌えたりもする(私が 笑)
カレーの中に、ハートをいっぱい詰め込んじゃえ!

そう。佐倉にとって「好き」と「恋愛」は別モノですから。
恋は恋。肉体的な欲望は、吐き出して終わり。基本的に最初からそーいうスタンスでココまで来ました。
もちろん、彼女が居る時は遊びませんので、そのライン引きはちゃんとしてるみたい。

ご機嫌なもので、北見とのやり取りもちょっと甘い…。単純だなーサクラちゃんw

有難う御座いました☆

Re: 初コメします

よつば様

はじめまして^^ようこそです♪
>BLサイトにコメント残すのも初めてです←嬉

わ、3周以上したお話もあるんですか(〃▽〃)

そう。私はBLファンタジーは、不得意…なんですよ。何度かチャレンジしたんですけど。
途中から、リアルを少々まぶしてしまう癖が。恥ずかしがりなのかな(オイ
それで、たまに怒られますけど(笑)今は、そういうお声も減りました。
多分、もうkiriはそんなもんだって思ってくれてる方が残って読み続けてくれてるのかな~と(ポジ

仕事はね…やっぱり生きて行く礎的に書いてます。それが土台にあってのラブ♥
仕事出来ないダメ男も書いてみたいけど、皆さんイライラしそうだし(爆
やっぱり基本的に、仕事は真摯に取り組む男達をなるべく…。

>大好きです!を伝えたくての初コメでした←伝わりました♪
よつばさんも、踏ん張ってお仕事の山場を乗り越えて下さい!!頑張れーー\(^o^)/

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

鍵コメe様

倉科主任が言ってましたよね。
オスになって捕まえに行く…と。

興奮するんでしょうね…。それで昂ぶって、トマラナイー!ww
で、スッキリしやがりました…。

北見も昇進してご機嫌だし。
佐倉も契約取って、スッキリしてご機嫌。

ご機嫌同士で、ちょっと調子乗った会話…。単純なもんなんですよ…笑

佐倉の危ういジャブを、北見も受け取って返す。キスにはさすがに、戸惑ってましたけど。
そこも「いいですよ。やりましょう!!」って言えるようにならなきゃ(ナゼ

有難う御座いました☆

北見君の嬉そーな報告に、やはり嬉しい佐倉さん。
で、気持ちも軽くメールも軽くやり取りしてました❤

カレー、いつでも佐倉さんのが食べられるように、北見君は覚えないほうがいいでしょうね〜〜(笑)。

あ、残ったカレー、2日め・3日めはカツや目玉焼きをトッピングすれば食べやすいよ🎵



また新しい方がいらしてる。
よつばさま、初めまして。私も途中参加のますみです。
今はコメ不定期ですが、それでもいつ来てもすぐ参加できるここ、大好きです。
よろしくお願いしますね。

Re: タイトルなし

ますみ様

好きな相手との、ちょっとしたやり取りに顔が綻ぶ。

恋って、良いもんですよね…やっぱり。
色々シンドイこともあるんだけど、こういう気持ちはまた特別♥

たかが、カレー。…といえど、お家によって様々。
北見は、佐倉の作ったカレーが食べてみたい(笑

あ、カレーにトッピング。目玉焼きか…。今度やってみよ♪

はい。こちらはいつでも!全開ですので…。
またチラリとでも、お顔出して下さいな^^
ネットさえ繋がれば、どこに居ても繋がってる…凄いですよねー!

有難う御座いました☆
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