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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 38

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佐倉が建材関係の会合に出た帰り、同じ大学だった友人の坂巻と居酒屋に寄る。

会合と言っても大きなホールで開かれる。
同じ業者が皆参加して、住宅設備機器を取り扱う販売店、仕入先であるメーカー、建販商社、木材問屋などが集まる。
建材などについての発表などもあり、新しい情報や新規の開拓のために、組合に入った。

「どうよ?最近」
坂巻が、ビールを飲みながら聞いて来る。

「まぁ、一人で頑張ってた時とは違うな。部下持つと……」
「違うって」
「え?」

言葉の途中で違うと言われて、佐倉が坂巻を見る。

「仕事の話じゃなくて、プライベートだよ」

あぁ……そっちか。

「別に。寂しい一人者だ」
「いいなぁ~。俺も、一人になりたい」
「何言ってんだ。子供産まれた処だろ」
「……まぁ、子供は可愛いわ」

酒を眺めながら言う口元は綻んでいる。

「俺なんかな、仕事終えて帰って真っ暗な部屋に帰るんだぞ? 明るい部屋でお帰りって迎えてもらえることを、大事にしろや」
「お前に説教喰らうとはな」

ふっ……と笑って、酒を飲む。

「結婚しないのか?」
「あ? ……あぁ、目前でダメになった」

坂巻とはこうやって会合で時々会うが、いつもそのまま社に戻っていたからゆっくり話すのは久しぶりだ。
だから、彼女と別れたことは言ってなかった。

「あらら……何で?」
「まぁ、色々あるんだよ」

佐倉が言えば、坂巻はもうそれ以上は聞いてこなかった。

「あ、そうだ。富樫(トガシ)覚えてるか?」

突然の名前に、心臓がギュッと縮んだ。



……覚えてるよ。
俺が、大学時代に片想いしていた相手。
今も名前を聞くと、胸が痛むくらいだ。

「あいつと、この間たまたま会ったんだけどさ」
「え?」

思わず、大きな声を上げてしまった。
坂巻も驚いた顔をするから、笑って誤魔化す。

「元気……だった?」
「離婚したのは聞いたろ?」
「あぁ」

社内での不倫がバレた。
それも、嫁の親が重役をやってる会社だ。
結局会社も辞めたって聞いたが、それ以上は知らない。

「今は、友人と一緒にバーやってるらしい」

嘘……。
富樫が、水商売?

「そうなんだ……」
「お前とも同じ業界だからたまに顔合わせるって言ったら、今度店に連れて来てくれって言われたよ」

……誰が行くかよ。

自分の古傷、わざわざ引っ掻くようなことするか。
向こうはただ避けただけのつもりなんだろうけど、俺は相当傷ついた。
気持ちを言うつもりなんかなかったのに、目も合わせてもらえなくなって……しばらくは、大学に行くのも辛かったんだ。

勝手に好きになって、勝手に傷ついただけなんだけどな。

「お前、結構懐いてたろ?」
「懐いてたって……年、同じだろ。それに二人で遊んだこともないよ」
「そうだったっけ」

そうだよ。
少しでも近くに居たくて、ウロウロはしてたけどな。

「目立つお前と、地味なあいつとの組み合わせが謎だったなぁ」

くっと笑う坂巻に、人の気も知らないで……と思う。

「だから。二人だけで会ったこともないって」
「……ムキになるなよ。お前ともたまに会うって言ったらさ、懐かしがってたから」

ふざけんな。
あからさまに避けられた方は、懐かしいなんて思えない。

「俺は別に懐かしくもない」
「冷てーな」

得体の知れないモノを見るような目は、今も思い出す度に……心臓が痛くなる。

何でノコノコ行かなきゃなんないんだ。

「あいつ、イイ奴だったからさ」

そうだな……。優しい男だったよ。
だから俺にハッキリと言えず。

……で、避けるしか出来なかったんだろうけど。
そっちの方が傷つくってんだよ。

「何で過去形なんだよ」

佐倉がふっと笑うと、坂巻も「確かにそうだ」と笑う。

「それよか、野中。グアムで結婚したって?」
「そうだよ。二人だけでな」

学生時代の旧友に会うと、誰が結婚したとか離婚したとか、子供が出来た……出世した、なんて話題が必ず出る。
噂話というより、近況報告のような感じだ。

そこで思うのだ。
自分が、今何処にいるのか……なんて。

「まぁ、お前も頑張れ」
「何で、慰め口調なんだよっ」
「いやいや、モテるからって選り好みしてたらダメだよ?」
「モテてねぇよ」

学生時代とは、もう違う。

*

坂巻と駅で別れ、家路に着く。

乗り換えて、自分の家への沿線に乗り込むとホッとする。
帰っても誰も居なくたって、自分の家だ。

空いてる座席に座って、思い出すのは富樫のこと。

気軽に「連れて来てくれ」だなんて言われたことに、また傷ついてる自分が居た。
自分だけがいつまでも、過去の傷に囚われているのだと思うと。

社交辞令だ。
そんなことで一々傷つくなよ。

けど、学生時代の傷は結構引きづるもんだな……。

仕事でどやされ、どれだけ嫌な思いしても……それとは違う傷。
落ち込みもするし、自分の不甲斐なさに凹みもするけど、そういう場所とは違う処にある。

こういう思いってのがトラウマって言うのかな……。

目を閉じたら思い出す。

突然、避けられて……戸惑ったことを。
最初は勘違いかと思っていたことも。

けど。
つい目で追っていた時に、富樫がこっちを見た瞬間の顔。

怯えたような、迷惑そうな……そんな色が浮かんだ目を、俺はハッキリと見た。
そこからはもう、意識してこっちを見ないことも気づいた。
前日まで笑ってくれていた富樫が、俺を怖がるようになった。

富樫の最後の残像は、あの……怯えた顔。
俺は、富樫に……好きな男に怖がられてるのがショックだったんだ。

佐倉は顔を覆って、息を吐く。

北見には、あんな顔……されたくない。


佐倉は電車を降りる前に携帯をチラリと覗いてみれば、高梁からメッセージが来ていた。

――飲み会、来週の金曜日の予定です。出来る限りの努力にて、空けて頂けますように。

……あぁ、すっかり忘れてた。

何が、出来る限りの努力にて……だよ。
俺も行く……なんて言ったけど、本当に行く気なんかない。

何で気を使って喋ったり、値踏みされなきゃなんない。
社会に出てから、こういうノリの飲み会に顔を出したのは、片手にも満たない。
それも、付き合いで仕方なくだ。

北見が女とくっ付こうが、俺がどうこう出来る訳じゃなし。

――俺は行かないから、他で調整取ってくれ

自分でもあんまりだと思う返信をして、佐倉はそのまま電車を降りた。


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Re: NoTitle

鍵コメe様

ふふ。高梁くん「お気に入り」に登録しておいてください。
登場回数はそう多くはないんですけども、たま~に出ます。冷たくされても、主任が大好き!笑

そんな高梁くん、由利奈ちゃんじゃないけどタイミング悪っ!
そりゃね…過去の一番痛い部分を思い出してる最中に、能天気なメール。
行く気あっても失せるわ。(行く気無く、呟いただけですが
でも、主任の機嫌によっては…もしかしたら?の可能性もあったかも!なのにねー。
冷たいメールに、ガーーーン!!orz←高梁

>こんなこじれた片思いの記憶が残ったままなんて。←そうなんです。
何度も言いますが、北見への片想いがこじれたわけではないのです。

佐倉の中の「好き」は、ちょっと普通の恋愛で見ると「?」かもしれません。
普通は「結ばれたい」と思いますからね。強がってるとか色々思われるかもですが、違いますw
まだ結婚願望もちゃんと有るんですよ(そこかしこに、出てます)
なのでそこのとこ、よろしくお願いします。。。ヤヤコシイの書くな…私(汗

>道のりは果てしなく遠い。。。。。 ←はい、その通り!
腐女子アンテナで、ついつい何でも結び付けがちですが…申し訳ないm(__)m

>待ちますとも!ゆっくり!一緒に歩みますともー!←そう言って頂けるのが何より嬉しいです…。

有難う御座いました☆

NoTitle

またも昭和の歌が。。
kiri様のリコメで、 ♪君の行く道は~ 果てしなく遠い~ ♪ なんて出てきてしまいました(確か、わかものたち、というタイトル)。

佐倉さん、この頃お酒が苦そう。 でもって、一人で帰る部屋がさらに侘しそうです。
この際ですから、「俺も寂しいから慰めろ」 とか北見君にメール! ・・・は、しないだろうな。


それにしても富樫さん。
足を踏んだ方はその事を忘れても、踏まれた方はずーーーっと覚えてるんですよ。 言い方違うけど(苦笑)。
そして、かの有名な 源義経・弁慶一行が関所を通る時にお芝居をした時のお宅人さんと同じ名前なのに、何を血迷って(?)いるんでしょーか。

そっとしておいてあげなさいよーー!
いっそのこと、外国行ってくれてたら良かったのに(プンプン)。


佐倉さんに、これ以上頭痛の種を増やさないで・・。

Re: NoTitle

ますみ様

そうです。ノンケ男が相手となれば、そう簡単にくっつくのはおかしい…。
なので、道のりは遠いです。

まず、男を恋愛対象として「見る」ことから始めないと…。
少しずつ惹かれて行く過程が大事なんですよ。

腐女子の習性故(笑)全部そっちに結び付けがちですし、それはそれで有り!(私もそうww
なんですけどね。
ここはいっちょ、ゆっくり進めさせていただきたく…。で、長くなりました。
いいじゃないですか~。アラサーリーマンの胸の内。
とくとご覧下さいな。

富樫くんも、何か言いたいことがあるのかもですね。本当に社交辞令かもしれないし。
まだ20歳そこそこだった頃…。大人になったからこそ、分かることもある。

有難う御座いました☆
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