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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 32

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佐倉は酒屋で買ったワインと焼酎を持って電車に乗り、三つ目で降りた。
北見に言われた側の改札に出て、携帯を鳴らす。

「あ、俺」
『駅に着きました?』
「うん。お前の言ってたパン屋がある」
『そこの道を真っ直ぐ歩いて来てください。途中で景山っていう大きな文具屋さんあるんで、そこを左に曲がってもらえば。俺も今から家出るんで』
「りょーかい」

電話を切って、綻んでしまう口元を手で覆う。

実際、北見の部屋に興味があるのだ。
呑みもだけど、行ってみたい好奇心が強い。

どんな部屋に住み、どんな暮らしをしているのか。
佐倉は少し浮かれた気持ちで、パン屋の方へ向かって歩き出した。

小さな公園を通り過ぎ、言われた通り文具店が見えてきて左に曲がる。

道幅は大きくないが、ずーっと向こうまで続いている。
とぼとぼと酒の袋を抱えながら歩いていると、向こうから北見らしい背の大きな男が現れた。

北見も気付いたのだろう、手を挙げたから佐倉も同じように片手を挙げる。

何だかくすぐったい気持になって、ずっとヤサグレていた自分を嘲笑するような気分だ。

単純なんだな……人間って。
皆、そうなのかな。

俺って、本気で惚れた相手と恋愛をしたことがないんだ。
……今、そう思った。

本気になった相手は、男だったからな。
俺の中には、男と恋愛するという選択肢が無いから仕方ないし、これからもそれは無い。

自分で言うのも何だが、それなりにモテた方だったと思う。
恋愛経験は女だけでも、欲望を吐き出す相手である男だってそれなり、に。



向こうから北見が歩いてくる姿だけで、胸がドキドキする。

それも俺自身を目がけて、だ。

……この、浮足立つような感情。


こっちに向かってくる北見を見ながら、佐倉はやっと認める気になった。


俺は、こいつが好きなんだな……と。

それと同時に、開き直る気持ちも芽生えた。

――またここから、俺の片想いが始まる。

*

「結構距離あるな」

並んで歩きながら佐倉が言えば、北見が「でしょう」と答える。

「駅から五分と十分じゃ、家賃が違いますよ」
「まぁ、そうなんだけど」
「俺は、自分だけの部屋ってのに憧れが強かったから。距離よりも、部屋でしたね」

そういや、俺の部屋と同じような創りだって言ってたな。

俺も、ワンルームよりそっちを重視した。一部屋は小さくても、分かれてる方を。
駅から五分……は、仕事で酒を飲む機会が多かったから近い方が良かったのだ。

話してる内にマンションに着き、エレベーターに乗り込み五階を押す。

「結構、キてんな」
「それ言わないで」

自分の住んでいるマンションよりは、少し古い。

「うちも、あんまり変わんないけど」
「佐倉さん家、結構散らかってますよね」
「あ……お前、よくも」

佐倉が睨むと、北見が吹き出す。

「風太くんがしたのかと思ってたら、次行った時もだったから」
「あんなもんだろ? 男の一人暮らしなんか」

エレベーターを降り、三軒目のドアの前に立って鍵を開けた。

玄関に入ると、シンプルな部屋に驚いた。

「うわ……物、少なっ」
「俺、物欲ってあまり無いんで」
「いや……それにしても、これは酷い」
「その言いざまの方が酷い」

靴を脱ぎ、北見が笑いながら佐倉から酒の袋を取り上げてキッチン前の小さなテーブルに置く。

「上がって下さい」

玄関に立ってまだ部屋を眺めている佐倉に、北見が眉を上げて言った。

「あ、うん」

靴を脱いで、部屋に入り目の前のソファーに座る。

そしてココで彼女とイチャついてたのかと、そんなことが過った。

「飯、何? 旨そうな匂いがしてんだけど」

意識を食べ物の方に向けようと、話を振った。

「結構作ったんで、全部食べて下さいよ」
「腹減ってるから、任せろ」
「言いましたね? じゃ、始めますか」
「おう」

*

テーブルの上に並んだのは、キノコと白身魚の山椒オイル焼き、エビとブロッコリーのサラダ、豚と白菜のあんかけ、肉のそぼろ豆腐。

「うわ……凄い」
「今日は料理デーにしようと思って、久しぶりに張り切って作ったんで」
「お前……料理男子?」
「いえ。出来るのは十品くらい」

佐倉が目を瞬かせて、プッと吹き出した。

「その内の半分を、作ったのか」
「その通り」

北見も笑いながら、白飯を茶碗によそう。
そしてオニオンスープも出してくれた。

佐倉が目を見張ったのは、そのオカズの量だ。

「しかし……一つの皿の量が多すぎないか?」
「うち大家族だったもんで、つい多くつくっちゃうんですよね」

笑いながらグラスに氷を入れて、焼酎を注ぐ。

「いや、食べるよ。うん……食べさせて頂きます」

佐倉が注いでもらった焼酎のグラスを上げて、北見と乾杯をする。

「どうぞ。食べて下さい」
「いただきます」

箸を持ち、最初にサラダに口をつけた。
茹で卵も入っていて、マヨネーズであえた割にはあっさりとしている。

「旨い……」
「でしょ? 俺の得意料理」
「お前、良い婿になりそうだもんな」

佐倉がそう言えば、苦笑いを返した。

「とにかく先に食べましょう」

北見も手を合わせて、肉豆腐を口に入れた。
佐倉も競うように、肉豆腐に箸をつける。

「……こういう家庭料理ってさ、独身男の心を擽るよなぁ」
「俺、男ですけどね」
「お前、嫁に来い」

冗談めいて言ったみた。
これくらいは許せ。

「婿に行けなくなったら、佐倉さんの嫁に貰ってもらいますか」

軽く返されて、ホッとする。

「いやほんと……胃に染みるわ」
「佐倉さん、自炊しない人?」
「滅多にはな。一人じゃ、買い物しても腐らすんだよ。たま~にパスタくらいは作る。後は目玉焼きとか……残った野菜を炒めたり。あ、でも。暇な時は時間かけてカレーも作るぞ?」

自慢気に言えば、北見がクスクスと笑って聞いてくれる。

「じゃ、今度その時間かけたカレーっての食べさせて下さいよ」
「おっけー」

腹が減っていて、それも手作りの家庭料理に、白飯。
佐倉もいつになく、がっついて食べる。

「いいっすねぇ……その食べっぷり」

北見が佐倉の食べっぷりをみながら嬉しそうだ。

「ん?」
「いつも、チビチビと酒飲みなから焼き鳥たべてるから」
「見た目はどうでも中身はオッサンだからな」

北見が、はは……と声を出して笑った。


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~ Comment ~

あぁぁー!ドキドキですぅ。
好きだってはっきりと認めちゃった。これからは開き直って片想いを楽しんじゃってください。手を伸ばさなければずーっと続くのが片想いなんですもんね。佐倉さん。
北見くんの手料理もなかなかのもんですね。もう完全に胃袋つかまれちゃったね。
片想いが始まったら相手の行動ひとつひとつにドギマギして振り回されて、でも楽しくて切ない。
片想いも恋愛ですもんね。
北見くんの手料理たーくさん食べて良い休日を過ごしてね、佐倉さん。

嫁っ!!!? わお~(≧▽≦)

kiriさま

いや~ん!!!!!!!!! 💖(´艸`*)💖

>「お前、嫁に来い」
>「婿に行けなくなったら、佐倉さんの嫁に貰ってもらいますか」

「好き」を正面から認めた途端に、このセリフ言っちゃうの~~?!
そっか-、片想いが始まるのは今日からなのね・・・。
私の脳内では、佐倉ちゃんが自覚してなくても、すでに片想いは開始してました💦
ごめんなさい、kiriさまっ<(_ _)>

ってか、北見くんが嫁なのねww←確かに女子力高いし!!
あ、でも北見くん、すでに婿に行きそこなったから、佐倉ちゃんの嫁決定!!?
普段は嫁で、ベッドの中では婿になるの? 腐腐腐❤
Rはまだまだ遠いですけども、ね。
でも、そこに至るまでが楽しいっ。

それにしても、作れる10品中の半分のメニューがこれって、北見くん。
そんじょそこらの女子じゃ、太刀打ちできないわ-。
男の胃袋掴む料理=肉じゃがってあるけど、今じゃ麺つゆ1本でできちゃうしね。
うちの息子だったら、このサラダ1品で落されちゃうだろうなぁ(≧▽≦)

やさぐれていた佐倉ちゃんの気持ちがUPしたようで嬉しいです。
片想いって、見たくない部分を見ないでいられたら、それはそれで幸せですものね-。妄想も色々できちゃうし💖

ああっ、このじれじれ感がいいわぁ( *´艸`)
これからも、もっと焦れて萌えて悶えちゃいそうです~🎶
ひゃっほ~いぃ!!


こちょばゆい~たまらん!!
角を曲がって姿が見えて、ドキドキして…キャーたまらん!!←シツコイ(^o^;)…

そして北見さん、達也くんよりまさか料理上手ですか?!
レパートリー10品出来れば、応用メニュー末広がりでしょ…
はっ、達也くんはダーリンの好きなメニューが多くなるだけだったわ♪←自己完結ww…
kiriさま、深い。深いです。
今回のリーマン、淡々と…なんて言われてたけど、深くて難解です。すごく慎重に読んでます。
今回のお話は、読んでから呑みますww

今、声/は/し/て~のCDがすごく気になってるこの頃です(余談失礼しましたw)

Re: タイトルなし

おみち様

ドキドキして頂いて(。v_v。)

やっと「認め」ましたね…。
恋の始まりなんて、そこからがスタート。
男女なら、とっくに認めていることでも、佐倉の場合苦い経験があるので中々…。

片想いって、それはそれで楽しい部分もあるんですよねー。
気持ちが凹んだり上がったり…。
こっそり見てるだけなら大丈夫!しかし、北見くんはノンケなので邪気無し←これが問題w

有難う御座いました☆

やっと表面に。

認めましたっ、佐倉さん!  今日はお風呂で鼻歌だわ。なんにしようかな♪~

道聞いてドキドキ。迎えに来るのを見てそわそわ。
自分のためだけに電話出て、ご飯作ってくれて・・・、ッキャーー!


豪勢な晩ご飯。
サラダなら対抗できるかも。
ポテトサラダですが、茹で卵・トマト・胡瓜・ハムを千切りやみじん切りにしてマヨネーズ和え。
あ、感心されたのが、
ひき肉・人参・玉ねぎ・ピーマンを千切り。エノキダケを適当な長さに切って炒め、
茹でて3~5cmに切った春雨を混ぜて醤油味。  
大皿にドンと出して、千切ったレタスに乗せて召し上がれ―・・。


北見君、佐倉さんだってアラサ―男子。お腹空いたら食べますって。
痩せの大食い系ですよ(?)
そしてその食べっぷりに喜ぶ。  じわ~~と来てますね。

Re: 嫁っ!!!? わお~(≧▽≦)

みゃお様

男同士って、どっちか家事出来る方が「嫁」的な(笑
ベッドの中とはまた別で…ww

佐倉さん、やっと「認め」ましたね。

タイトルに「片想い」って入ってるから、イコール=北見への…と思われてる方が多々だと今ごろ思ってます(汗

ここで気付いて下さった方もいらっしゃると思いますが、佐倉さん既に片想いをこじらせてます(苦笑

大学時代の人との苦い思いから既に…。
目も合わせてくれなくなって避けられたことって、結構キツいと思います。
酷い言葉を言われれば、それにも傷つきますがまだリアクションの取りようがありますもんね。

何も出来ないままで、それを受け入れるしかなかった想いが、彼を頑なにしてますので。

北見君は、きっと母のお手伝いもしてたような気がする。
ヤンチャな兄二人に、姉と妹に挟まれて…。
兄弟間でも、役割的なモノが自然と出来上がってて、北見の位置はそんな感じ。
でもそれを嫌だとも思わず、飄々と過ごしてきた人です。大らか~

さて。
佐倉の頑なさ…。属性、隼なだけに!簡単ではありません…。
もうこの際、このグルグルと眺めてあげてて下さいね~ww

有難う御座いました☆

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Re: タイトルなし

はるかぜ 様

恋の始まりは、ドキドキ…。
幾つになったって、初々しく可愛いものですねー。こそばいっ(笑

北見くん、一人暮らしを満喫してる人なので…。
時々はこうやって手の込んだモノを作ったりしてたかなーと思いまして。
男性の方が料理にハマり易いとか言いますよね。家事じゃなくて、趣味的に←

うん、お話は地味で単純なんだけど…佐倉が難解かもしんないww
プライドとかも高いんですよ。彼氏にはオススメ出来ないタイプ(爆

あ、そうそう。この間、袋に入れっぱなしのBL本の整理してて(嫌になったww
池/玲/文センセの「≠ノットイコール」見つけて…。コレ、オススメです。
タイムスリップモノですが、好き♥この先生の絵が素晴らしくて、エロい…(〃▽〃)
知ってたかな~。ってか、既に言ってたかも?記憶が…。

有難う御座いました☆

Re: やっと表面に。

ますみ様

認めましたねー。
好き…だと。

タイプだ。
気持ちが惹かれて行く。

……そこから、一つホップを踏みました。

でも!ステップを踏むつもりは有りません。
同じ職場ってのも、大概リスキーだもんね…。
佐倉さんは、仕事命。

わー、美味しソーーーー。誰か、作って…。
いつも行く中華に、そういうのがあるんです(レタス包み)美味しいの!!
数千円も出さなくても、お家でも出来るんですね!!
わーお腹すいてきた…。めっちゃ食べたい。

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

鍵コメe様

はい、やっとです…。
え、eさんはもうちょいかかると覚悟してくれてました?笑

タイトルで、既に佐倉は北見を好きで片想い…と思われてた方がほとんどだと思いますが、ココからです!!
北見への片想いもそう簡単に進みませんが。
そういう意味でこじれた訳ではないので…。

>言う気もなけりゃ、成就を願うわけでもない。
>伝わらないようにすれば、いい距離感でいられる。

その通りです。
隼も勇次とは、恋愛を強くは望んでなかった。ココは本気でそう思ってました。
壊れて失うのが怖い=この世で一番大事な人 失わないように、今も大事にしてます♪

佐倉の場合。バイで、リーマンですので…。自己保身も強いです。
手を伸ばせば、極普通の人生を歩めるんです。
そこらへんは純愛とは言えないかもですが、好きな気持ちは純粋なモノ。

ゲイとはまた違う葛藤…。でも、好きなモノは好き(//∇//)

有難う御座いました☆
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