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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 30

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佐倉は駅に着き、帰りの道をトボトボと歩く。

あのバーに行くのは、もうやめた方がいいかな。
けど、気に入ってたんだよ。普通に、酒を飲む場所としても。

ふと疎外感を感じる時や人恋しい時に、一人でふらりと行ける店なんてそんなにない。
一番は客質が悪くないんだ。
だから酒を飲んで帰るだけでも、心地良い場所。

手放したくない場所なんだよな。

あー……何だよ。
よりにもよって、得意先の奴だなんて。

俺はこの仕事についてから仕事先の相手には、まず一線を引くことを優先してきた。
営業という仕事は、そうでないと務まらない。

弱味を見せたり、反対に相手の弱味を見たりすれば、個人的感情が絡んで来る。

俺から仕事を取ったら……何が残るのだという気持ち。
男には多いっていうけど、俺もその一人だな。

私生活は大したことを望まなくても、残り半分の人生には仕事があって……実際、充実感を得られてる。

佐倉は空を見上げて、星の一つ見えない曇った夜空に皮肉めいた笑みを浮かべた。
まるで自分みたいだと、そんな風に思う己自身に。

何だかな……ヤサグレる時はとことんだ。

そう思ってたのに。
あの北見……。

何が『先輩ですから』……だよ。

「ふざけんな。ばーか」

声に出してフッと笑って、自分の住むマンションが見えて来た。

電話なんかするか。
何で俺が「今、帰ったよ」なんて、一々連絡するんだ。

ただの……後輩のくせに。



部屋の鍵を開ける時に気付いた。

自分が思った以上に酔っていることに。

「ははっ……入らねぇ……」

目を擦って、もう一度鍵穴に差し込んだら一発で入った。

「やった♪」

子供みたいに声に出して、玄関を開ける。

自分の部屋に着いた途端、やっぱりホッとした。

そして次に来るのは寂しさ……。
部屋の電気を点けて、シンとした部屋を眺める。

もし、結婚していたら。
今頃は『おかえりなさい』と、迎えてくれる声と……少し怒ったような顔をした梓が居たんだよな。

……と、酔っ払って帰る度に思う。

何だ、今日は。
思考があっちこっちに飛び過ぎだ。


佐倉はソファーにドサリと座って、背に体重をかけて顔を上げる。
片手で顔を覆い、大きく息を吐いた。

一生懸命に仕事して、プライベートで時々ハメを外す。
ガスでも抜かなきゃ、腹の中パンパンになってどこかで爆発する。
そうやって、上手くバランスを取っていたはずなのに。

北見の存在が胸の中で少しずつ膨らんで来るのが、どうしていいやら……。



酔いが佐倉の思考を、彷徨わせる。

梓と、青木と……北見。
女と、男と……男。

彼女を失ったことを、まだ何処かで引きずっている。
仕事がやり難くならないかと思う保身。
そして、心配そうに自分を見おろす表情。

どれもこれもが、佐倉の胸に重い何かを圧し掛けてくる。

体を起して、キッチンで水を呑んだ。

風呂は明日でいいか。
どうせ休みだ……。

佐倉はふと、北見が電話しろと言ったことを思い出す。
何だかもうそれにさえ鬱陶しさを感じて、電源ごと切った。


『電話がかかってくるか……それを期待して待つ気持ち、わかる?』

付き合っていた頃、梓に言われた言葉が浮かんだ。

喧嘩した時、俺はいつも放置していた。
彼女が機嫌を直せばかけてくるだろうと軽く考えていた。
そう……軽く考えて、ただ仕事に没頭していただけ。

ただの一度も、俺から折れて謝ったこともない。
意地になっていた訳でもなく、放置していたら彼女から連絡が来る。

思えば……俺は、過去の恋愛も全てそうだった。



佐倉は携帯をテーブルに置いたまま、寝室に入ってスーツを脱ぐ。
下着一枚になって、ベッドの中に入った。

……バカバカしい。
俺と梓は、恋人だった。
喧嘩して、期待して電話を待つのは正当な思い。

北見は、会社の後輩。

それ以上でも、それ以下でもない。

……今日は、やさぐれ過ぎだから寝よう。

フラフラとする頭のまま、北見の顔を思い出し……そのまま寝てしまった。

*

北見は携帯を鳴らしてみるが、電源が入っていないとのアナウンス。

……帰ったよな。
駅から本当に五分程度だし。

酔っていたけど、酩酊までは行って無かった。
営業マンだし、酒にはある程度慣れてるはずだ。

佐倉は、もう三十路前のちゃんとした大人の男だ。
女じゃないのに、危なっかしい……なんて思うのは、考えすぎだとは思う。

帰ったら電話くれって言ったのに。

何だかムカついて、北見はもう一度携帯を鳴らしてみる。
けど、やはり同じだ。

「何だよ……もう。一言、着いたって言うだけだろ? 面倒臭がんなって」

声に出して、珍しく腹立ちの感情が出る。

考えたら、会社の先輩ってだけなんだけどさ……。

何だろう。
この胸のざわめきは。

北見は思いを巡らせる。


あの目……だ。
佐倉の、あの目。

時々、ジッと自分を見ているのは感じる。
多分、本人はそう意識してないとは思うけど。

そういう癖なのかもしれない。
営業って、人を食うような資質が要るんだとか聞いたことがある。
仕事の出来る営業マンは、相手に「食われてる」ことを悟らせないんだと。

……また、甘やかすなって言われた。

そんなつもりは無いんだけど。
何だか、放っておけないんだよ……あの人。

仕事も出来るし、プライベートでも別に頼りない訳じゃない。

でも、思っていたより隙があるんだよ。
よく酔っぱらってるし……。
仕事の時は完璧だから、そのギャップが大きい。

……放っておけないって、何だろう?
北見はうなじをポリポリと掻く。

俺は元々、そんなに世話焼きじゃないのに。
六人兄弟の真ん中で、それも姉と妹に挟まれている自分は、場の空気を流すか……それとも、拾って収める方に行くか。
知らずに判断してしまうことがある。

家族と離れて、そんな自分が見えてきた。

北見は携帯を眺め、ボーっとする。
そこで携帯が震えた。

佐倉かと思ってボタンを押すと、相手は由利奈だった。

その瞬間、ガッカリとする自分。
次に、嫌気がさしてきた。

足かけ二年も付き合った彼女と結婚まで考えて、別れたのに。
今も好きかと問われたら、好きだと言えるのに。

由利奈のメールの言葉は簡潔で、最後のおやすみ……という文字。

充分に話し合って……寝る前に、色々思い出してくれてたんだろうな。
そして最後に……とメールを。

ごめん、由利奈。

心で呟き、北見も最後の「お休み」の言葉を送った。


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~ Comment ~

♪回って回って回って回るうぅぅぅ~~

kiri様
佐倉氏ぐるぐる回ってますね(笑)大切なガス抜きのお店も、野暮な男に声かけられた途端行きづらくなりそうになるし。普通、外でそれもそういうお店で会っても、知り合いなら声を掛けちゃいかんでしょう。青木、ルール違反ですよ。でも会いたかったサクラちゃんと佐倉氏が同一人物で舞い上がったのかねぇ。佐倉氏はプライベートが営業に支障をきたすタイプなのね。ある意味ナイーブ。
そんな佐倉氏の事を今は、本能的に感じ取っている北見くん。「何だろう。
この胸のざわめきは。何だか、放っておけないんだよ……あの人。」うんうん、そうだね。何だろうね。佐倉氏から「家に着いたよ」の電話がなくて軽くイラつく北見くん。佐倉氏の事を意識してると気がつくまではまだ道のりは遠いけれども、ぐるぐるの佐倉氏にノンケの北見くん。毎日の日常が楽しみです。

Re: ♪回って回って回って回るうぅぅぅ~~

美夕様

佐倉さんは、もうグルグルキャラなんです(最初からの決定事項 笑

青木さんも、暗黙のルールくらいは分かってるんですけどね。
でも!我慢出来なかった様子…。そりゃ、声かけちゃいますよ…チャンスが目の前にあれば。
仕事でもし会って「見ましたよ」って言う方が、ドン引きされちゃう(苦笑
とりあえずは、お近づき…。自分はゲイだと宣言もして、佐倉をバイだと知った。心でガッツポーズ?w

いえ、仕事の時はプラベは一切表に出さない人ですよー。
ただ、ロボットではないから心情的にやり難い部分はあるでしょうね…。
それでも表向きは笑って平然とするのが、営業マン(青木も同じくw

北見君はまだまだラブとまでは行きませんが「気になる」のです。
それは…佐倉のグルグルがチラッと見えるからかな?
時々、佐倉の態度に「?」ってなってる北見くんが何度か…笑

有難う御座いました☆

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NoTitle

「やった♪」
・・。そーいう所が可愛いんですよー、佐倉さんっ。

北見君も素のアナタを知ってから、きになってしょーがない。
青木さんは、イレギュラーだったけど(苦笑)。

佐倉さん、構われて、心配されてウキューン!  
酔っ払って寝たけど、夢見ちゃうのかなあ・・・。 誰を?


一方の北見君。
由利奈ちゃんを過去に流すの、早すぎない?
それくらい佐倉さんが気になってるんだね。 電話かかってきたら「それッ」って感じで取るくらい(ププッ)。
じわり、と沁み込んできてます。 よい傾向❤

Re: NoTitle

鍵コメe様

うん、ジッと見ているのは気付かれてるんですよ…。
でも、北見は「営業マンの癖?」みたいに思ってます(笑

まだ「好き」だって認めてない状態でコレですから…。
大学の時は、相手に気付かれてしまって避けられた分、今回は佐倉さん気をつけてるハズなんですけどね。
それでも、やはり熱のある目で見ると「あれ?」って思っちゃうもんです。
プラス、態度も時々「?」な時あるんで、北見くん首傾げてますよ…佐倉さん。

北見が「気になる」のは、ラブでは無いです。さすがに、そこは違う(爆
まだこんな状態で、ノンケがいきなりそうなりますかいっ。デスヨネ

佐倉の目、態度…幾度となく「?」が重なってジンワリと…。
あれ?あれれ?と、何度だって思いなさい、北見くん(。・w・。 )

>佐倉さん。思いのほか先輩だからってのがお気に召さなかったようで(笑)
そうなの。アレがムカついて、拗ねちゃいました。子供か…君は。なんせ、属性が隼くんなので←

そうよ。お気に入りの場所は、そんなことで手放すことないよねー。
青木がいつも居る訳じゃなし。会ったら会ったで、普通にお話するくらいはイイんでない?
でも、口説かれるとウザ…な、佐倉さんでしたww

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

ますみ様

鍵が一発で入って、喜ぶ酔っ払い佐倉さんは風太くん並?ww

北見くんの好意は、ほんと先輩としてなんですけどね。
どこにもラブはまだありません。
腐脳で見ると…「あ、キタ?」って感じでしょうかーー(私もいつもBL読みながら思うww)

しかし、ノンケくんですので…。まだ、です。
でも「気になる」のは、凄く良い兆候!

由利奈ちゃんは、たまたまタイミング悪かった。
まだ別れたこと実感出来ないよねー。一緒に暮してたとかじゃないし、割と冷静に終わった分。

佐倉さんは、寂しがり。北見くんは、一人でいる空間を満喫中…。ココも、少々違いますね。

有難う御座いました☆
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