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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 26

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以前来たことのある、少し洒落た居酒屋。
全室個室で手羽先が売りの店だ。
時間的にピークは過ぎていたので、空席があった。

酒と食事を頼んで、無言のまま食べて飲む。

由利奈を見れば、ポーカーフェイスでサラダを口に運んでいる。

あぁ、そうか……。

「由利奈、俺から何か言うのを待ってる?」

いつもは由利奈が色んなことを話てくれるから、俺はいつも聞き役だった。

「功英は……私と結婚したいと思ってるの?」
「結婚を視野には入れて付き合ってたつもりだよ」
「……過去形ね」

そう言われて、思わず小さな溜息が出る。
電話でも、いつもお互いにこういう感じで今日まで来た。


「由利奈。これじゃ、また同じだ」
「……そうね。あげ足取るようなことばかり言ってる自分に、そろそろ嫌気がさしてるの」

そうか。
由利奈も、同じように自己嫌悪してたのか。

「ちゃんと話、しよう」
「……功英は結婚を視野に入れていても、養子はそこに入れられないのね」

由利奈の責めるような、それでいて少し怯えているような目に北見は息を吸いこんだ。

「結論で言えば、俺が養子にならないと結婚出来ないってことになるんだろ?」
「そうよ」

あっさりと、即答されてしまった。

だからイコール……時間の無駄、になる訳だ。

「どうしてダメなの? 苗字が変わるのが嫌? 仕事先で何か言われる? だったら、通称で通せばいい。友達にからかわれる? ……家族が反対してるの?」

たくさん理由を考えたんだろう。
それをを聞きたがっている。

理由なんか、俺だって考えたよ。
けどそんなものはいくら考えたって、同じ場所をグルグルしてるだけだったんだ。

答えなんか、一つだよ……。

北見は顔を上げ、由利奈を見据える。

「俺自身が、嫌なんだ」

今度は断言するようにハッキリと言った。

本当は嫌という感情にだって、複雑なモノが絡んでいる。
でも、どういう言い方をしても一番近いのが嫌だという気持ちだ。

「……どうして後になって? 私には、それが腑に落ちない」

唇を戦慄かせる由利奈を見ても、北見は冷静だった。

由利奈にとっては、親との顔合わせの後の話の流れのことを言ってるのだ。
あの時、俺は強く否定しなかったから。

「でも、それは由利奈の方の希望だ」
「けど! 親に話してって言ったら、頷いたじゃない」

……そこだろうと思っていた。
両親に養子の件を聞いてくれと言われた時、俺は確かに頷いたんだ。

感情的にはなっているが、この間のようには泣き出さない。
由利奈だって、大人の女だ。

「それは俺が悪い。気持ちがまだ曖昧で、ただ流されてた」
「冷静になってきて、嫌だと思ったのね?」
「そう」
「どうしてよ」

どうして?なぜ?
何度聞かれても、今のこの気持ちが「いいよ」とは言えない。

「……私を好きじゃなかったんだわ」

由利奈が寂しそうに言った。

「好きだよ」
「違うわ」
「俺の気持ちまで否定することはないだろ」
「父は母を愛してたから、養子に来たって言ってたわ」

ダメだ……。
これじゃ、また同じことの繰り返しだ。

形なんかどうでも良いから、一緒に生きる方を選ぶ。
それが相手を「好き」だということの証明なのか?

愛情という目に見えないモノを天秤にかけてでも、俺は佐倉の言う「自分の欲求」を取ろうとしている。

選択出来ない側の由利奈と、出来る側の俺。
好きなら、出来る側の俺が譲歩するべき……ってことになるんだろうな。

「俺は、君のお父さんじゃない」

由利奈がキッと睨みつけて来た。

いつもならここで「ごめん」と口を突いて出るが、北見は言わなかった。

「感情的になるのやめよう」

北見が静かに言えば、由利奈がため息を吐いた。

「そうね……。私だって、好きなだけで結婚出来るなんて思う程子供じゃないのに。……何言ってるんだろ」

目を伏せて苦笑いをして、息をスッと吸い込む。

「じゃ……改めて言うわ。私の結婚の条件を呑んでくれないなら、あなたとは一緒になれない」

由利奈が顔を上げて、キッパリと言った。

「別れるってことか」
「……えぇ」

北見は俯いて、言葉を探す。

別れたくない……と言えば、条件を呑むことになるだろう。
由利奈の言うように、本気で好きなら呑めるだろうということだ。

由利奈が北見を見据える。
顎を引き、静かに自分を見る目はとても冷静だ。

あなたは、選ぶことが出来るのだ……と。
私にはそれが出来ないのだから、あなた次第だと言う目。

「功英……。男と女は同じ時間が流れてる訳じゃないの。学生の時とは違う。もっと年を取っていけば、また考えも変わるかもしれなくても。二十六歳の私は今、人生の岐路に立ってる」

あぁ……そうか。由利奈は、俺よりもずっと先を歩いてる。
そして俺は、そこに追いつこうとしていない。

「同じ年のあなたを好きになっちゃったの。これは理屈じゃないでしょ?」
「うん」

北見は深く頷いた。

「私の願いは、周りに祝福されて、安定した生活の中で子供を産んで育てる。……好きな人と」
「それは、俺が婿養子にならないと叶わないんだな」
「そうよ」

北見は、頼りなさ気で可愛いと思っていた由利奈を見直すような気持ちになった。

きっと家庭を切り盛りして良い奥さんになりそうだ。

でも、そこに一緒に居る自分を描くことが出来なかった。


北見は姿勢を正し、こっちを冷静に見る由利奈と目を合わせる。


「俺は、養子には行かない。だから、由利奈とは結婚出来ない」


その言葉に、由利奈が静かに目を閉じた。

***

「じゃ、俺望み無し?」

アスリートタイプの男が、拗ねたように佐倉に言った。

「君はタイプじゃない」

こういう場所ではハッキリと。

「ちぇっ。俺は、もろタイプだったのに」
「残念でした」

佐倉が微笑むと、項垂れたように向こうに行った。

その場限りなら、タイプを選ぶだろ。
俺はここに恋愛相手を探しに来てる訳じゃないんだ。

溜まったモノを吐き出せば、スッキリ出来る。
気持ち良いことは、好きだろ……誰だって。

男と恋愛出来るなら、とっくに経験してる。
何度か口説かれたけど、その気になったことなど一度だってない。

今日はもう、飲んで帰ろう。

佐倉が煙草を一本抜いて口にくわえると、横からライターが伸びてきた。

カチッ。

目の前で点いたライターに首を伸ばし、火をつけてから顔を見た。


あ……。

「こんばんは」

そこに居たのは……前に仕事を一緒にした相手だった。


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~ Comment ~

NoTitle

kiri様。

しかし、由利奈ちゃんは、なぜ養子でないとあかんの?
それこそ、今どき養子さんやなくて、マスオさんな家も沢山有るやないですか。
『婿養子でないと。』
そこは、由利奈ちゃん家の一方的な条件よね?!
それで、愛情を計られるのは、やはり北見くんには失礼だわ
ま、こーゆー時に正論ばかり言ってられないんですけどね(苦笑)
こればかりは、ご縁が無かった。と、諦めなしゃあないんですよね。



で、お仕事関係の方。。。。に、出くわしてしもたの?
佐倉さん (゜ロ゜)ギョェ
だ、大丈夫なのー???

Re: NoTitle

優様

今時でも、あるんですよ…姓を継いでいかないといけないお家が。これもマイノリティーの一つ。そして今時は、養子OKで拘らない人も結構いる。

まぁ、これはもう仕方無いことね。
北見がもうちょっと年を取っていたら、また違っていたかもしんない。

本来なら、由利奈ちゃんのような一人娘で条件のある娘さんは、お見合いが一番スンナリ行くんだと思います。多分、親にも言われたんだろうな…苦笑
彼女が「恋愛して好きになった人と」という思いがあったから。
これを我儘とぶった切るには、ちょっと可哀想かな…とも思ったり。
こりゃ、女の賭けみたいなとこあるかな。。。(コラ

>こればかりは、ご縁が無かった。←そう。結局はそういうことになるよね。

佐倉さん、どうなりますか…w

有難う御座いました☆

NoTitle

こんにちはー

わわわ
仕事関係のお方~~

もしタイプでも
後々めんどうなことおこるかもしれないから
ダメダメダメ~~(笑)


早くおうちに帰った方がよくないかな~

もしかしたら
きちゃみからTELあるかも~~
(うさメリさまの風太の癒しにツボりました( ̄∇ ̄*)



Re: NoTitle

ういちろ様

お仕事関係の方が最後に登場!

飲んで帰ろうと思った途端に…です。
もし、北見と同じようなタイプだったら、ヤバイ?(>_<)

しかし、2歳児の子守の時とは違って、大人になると大人の色々な事情が出てきますねぇ。

遊んで、食べて、おちっこして、泣いて、笑って、そして寝る。←大人から見たらww

風太。大人になっていくと面倒くしゃいよー。
ゆぢゅきも、きちゃみも、風太と一緒に遊んでる時とは違うお顔してる。。。

有難う御座いました☆

ダダッダッダダッ!

そうだよ北見クン、キチンと言わねば。
なあなあにして期待させてしまったのは君なのだから。
お、お互い傷つくけどさ……(/_<。)

一方は別れ話、そしてもう一方は…
佐倉さんの前に現れた人は一体誰!?
以下、次号!(`・ω・´)キリッ

雑誌の連載は次号まで1週間とか1ヶ月とか待たなくちゃいけないけど、明日ですものね?
待ちますよ!待ちますとも~~~~!! クゥー! o(> <)o ジタジタ

ターミネーターみたいなタイトルになってしまうくらい気になります。
本当に気になります。
ラストの人、誰?ねえ、誰!? ←待ててないwww

Re: ダダッダッダダッ!

トーヤ様

>なあなあにして期待させてしまったのは君なのだから。←仰る通り。

彼女の言ってることは、最初から一貫してますので。何もブレておりません。
親に話してくれる?で頷けば、そりゃ期待しちゃうよ。。。

まぁ、先走ってしまったのがダメだったね…。
ある意味、とっても素直でストレートにグイグイ行き過ぎた。
最初に親を出してきてしまったのもマズかったかも。けど、親は適齢期の一人娘に色々言ってくるからなぁ~。女狐にはなれなかったってことね。まだ若いし!

>雑誌の連載は次号まで1週間とか1ヶ月とか待たなくちゃいけないけど、明日ですものね?
そうですともー。でも、気になるww

向井さんではないとだけ、言っておきましょう←

有難う御座いました☆

NoTitle

そうだった、向井さんてそう簡単に他人の煙草にライターで火、なんてしない人だった。。

思わずKiri様のリコメに反応してましたー。


流されていた北見君。 とうとうけじめをつけました。
流したかった由利奈ちゃん、ごめんね~~。  で、でも、まだ傷は浅い方だと思うよ。
親戚に紹介とか、その先に進んでからだったら、もっと色んな荒波が。。
恋と結婚は違うのだと噛みしめるのね・・・・。


佐倉さんは、・・あり? パートナー探し、という訳でもなさそうだけど。
うーわー、見つかった。 しかも社外の人間にっ!
気になって、お茶碗割らないように気をつけよう、明日の11時まで。。

神さま仏さま、お茶碗、コップ、お皿などなど、お守りください――(笑)。

Re: NoTitle

ますみ様

はい、向井では有りません。(今、地方勤務ですしw
もし彼なら、見かけても知らないフリする人…だと思いますしね。
ゲイバーでは無いですが、そういう人も居る店という設定。

北見と由利奈ちゃんは、ちゃんと好きあって付き合ってた。普通なら、このまま結婚してた可能性大。養子という条件と、タイミングを外しちゃったんだよね。

冬吾を好きだった旧家(農家)の美鈴ちゃんも、ちゃんと恋愛して結婚したいと言ってたよね。
自分の宿命的なモノは分かってても、ギリギリまでは頑張って掴みとりたいと思う気持ちは分かる。

佐倉さんは、ガス抜きに行っただけ。ダメなら飲んで帰るだけ。
なのに…顔見知りと会っちゃった(^^;

有難う御座いました☆

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Re: NoTitle

鍵コメe様

>まさに二人の気持ちが今のタイミングでは一致しなかった。
今回はそうでしたね。

もうちょっと年の差があったり、北見が一人暮らしを満喫した後なら、また違ったかもしれない。
親がかりで、養子を前に出されてしまえば、萎えちゃう気持ちも分かるし。
親に色々言われてる(であろう)彼女も、何処かで北見を責める気持ちにもなってたかも。

>属性隼は伊達じゃない。。。隼もモテましたものね♪
そう、明良が言ってましたね。自分より、隼の方がモテるタイプなのだと。
明良のような中性的なタイプは、ゲイの中では実はそうでもなく…バイやノンケという、女性を相手に出来る人が寄って来るんだって。
隼も途中からソコ気付いてて、勇次に言われて「知ってる」って言ってた(笑

>私なら先に顔見ちゃうだろうなー。 モテる人は一味ちがう!←笑

今日は「誰?」で、気になってる方が多いんですが…。
そんな思わせぶりな方では御座いません…スイマセン。どうしましょうー

>昨日優様がステキなコメを残しておられましたね!!
>C.C。コメで出てきてもウキウキしちゃいますねー。

表に出しておきましたww

有難う御座いました☆
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