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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 25

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北見が週末の仕事を終え、待ち合わせの店に行けば由利奈はまだ来ていなかった。
由利奈の方も仕事の帰りだから、少し遅れるだろう。

一か月と少しの冷却期間。

あれから電話やメールで話をしただけで、進展は無い。
養子の件を断ってからも、その意思は変わりないことを示して来た。

結婚話を破棄してくれとまでは思っていない。
ただ、もう少し時間をくれという気持ちだったのだけど。

由利奈がどう思ってるのかハッキリと示してくれないと、居心地が悪い。
この一月の間モヤモヤとしながら……由利奈への気持ちが日々冷静になって行く自分が居る。



「ごめんね」

声がして顔を上げると由利奈が居た。

「いいよ、俺もさっき来た処」
「そう」

表情を変えず、飲み物を持って前に座った。

カバンは小さい。
……ということは、泊まるつもりはないということだ。

そのことを残念だとも思えない自分。

「何食べる?」
「お肉が食べたいな」
「焼肉? 鉄板焼き?」

由利奈がしばらく考える。

「この間、友達とステーキハウスに行ったの。値段の割に、美味しかった」

まだ給料だって大して貰えない、四年目のサラリーマンの懐具合を気遣ってくれる。
実家暮らしの由利奈と、独立している俺と。
社会に出て数年で、同じ年。稼ぐ額だってそう大きな差はない。

デート代も、何もかもを俺に負担させることも無かった。
たまに欲しがるモノも、値段が数千円までで済むもの。
買ってあげて喜ぶ顔を見れば、こっちだって嬉しくなった。

誕生日やクリスマスだけは、それなりに奮発したのだって喜んでくれるからだ。

我儘でも、ちゃんと話せば素直に謝ってくれる。

そういう処が、好きだった。

……過去形にしている自分に、苦い思いが走る。
今も好きな気持ちはあるのに。

「じゃ、そこにする?」
「うん」

会話はいつもと変わりない。
けど、互いの間にある目に見えない小さな歪み。

修復する努力をしないと、いけないのだろうか。
……出来るのか?

「ここから近い?」
「結構遠いけど、歩こ」

やはり、いつもとは違う。
由利奈は、買い物以外で歩きまわるのは好まない。

多分、二人で狭い空間で向きあう距離が息苦しいのだろう。
前も喧嘩した時に、同じことを思った。
あの時は由利奈が勝手に怒って、意味が分からないまま謝ったんだっけ。

思えば、いつもそうだった。

何で怒ってるのか分からないくせに、面倒臭くなって謝る。
その場を収めるために、俺は平気で謝れる。
そこを責められて、さらに辟易して……結局、また謝るのだ。

そしてそれは、由利奈に限ったことじゃない。

俺はこの、事なかれ主義とでもいうべき部分を直さないといけないのだろうか。

―― 別に、気にならないから。
そういうのじゃダメってことか。

由利奈がコーヒーを飲み終わるのを待って、店を出た。

「どっち?」
「こっち……かな」

大丈夫か?と思いながらも、北見は何も言わない。
間違っていたら、また探せばいいと思うから。
時間が決まってる時はそうはいかないが、元々せっかちではない。

二人で無言で歩きながら横にいる由利奈を見れば、視線を感じたのか顔を斜め上に上げた。

目が合った瞬間……何だか、いたたまれなくなってきた。

「由利奈」
「……何?」

顔を前に向け、俯く。

まるで死刑宣告を待っているように思えて、胸が軋む。
何も別れ話までしようなんて思ってないのに。

でも……養子を断ることは、イコール結婚出来ないってことになるんだよな。

由利奈の家にとっては大きなこと。
それを俺は受け入れるという選択をしない。

どれだけ時間をかけても、互いにそこを譲れないのなら進まないってことだ。


「ご飯食べてから話す?」
「悪い話なら、先に言って」

少し怒ったように言う由利奈の手を強引に繋ぐ。

ハッとしてこっちを向く顔に、精いっぱい意識して微笑んで見せた。

「白か黒か、そのどっちかを決めた方がいい?」
「……狡いね、功英は」

狡い……か。

「いつも問いかけてきて、私に決めさせるの」
「……そうだな」
「ステーキハウスはやめる。個室のある店にしよ?」

結局は由利奈に決めさせて、俺は頷くだけだ。

佐倉さんが言っていた言葉が、ふと甦る。
引導を渡された……と言っていたっけ。

あぁ、凄くわかるな……。
気持ちのまだ残っている相手に、優しい男のままで居たいなんて格好つけて。

男って……狡いんだな。

「わかった」

***

佐倉は仕事帰りに、久しぶりにバーに寄る。

仕事が終わって、接待も何も無い金曜日。
真っ直ぐ家へ帰るのも勿体無くて北見を誘ってみたが、生憎今日は予定があるということだった。

多分、彼女だろう。

あれからも一度、家に来て飲んだ。

兄貴が免税で買ったマーテルのブルーコニャックを貰ったから。
子守の礼で貰った酒だから、分け合うようなつもりで誘った。

普段は口にしない酒に、二人で盛り上がって楽しかった。
ちょっと贅沢なチーズやスモークを会社帰りに買って、わざわざ皿に移して。

ささやかな贅沢だと笑い合って、風太の話をしてまた笑って。

仕事帰りだったから、ほんの二時間程度だったけど……楽しかった。
本当に、楽しかった。

普通に気の合う同僚。
それだったら、何の躊躇もなく誘えるんだよ。

面倒くさいよなぁ……と、自分でも思う。

だから、変な気を起さないように。

こうして時々は、体に溜まったモノを吐き出しに来る。

まだ、大丈夫。

……何が大丈夫なんだよ。

本気になる前に、いい加減やめたら?
少しずつでも、距離を置くか?
それとも、さっさと結婚してくれりゃいい。

はぁぁ……と、カウンターに肘をついて額を覆う。

「悩ましいね」

隣に座った男は、爽やかなスポーツマンタイプ。
髪をアスリートっぽく短髪にして、腕も胸も盛り上がってる。

「一緒にいい?」
「話すだけなら」
「警戒心強いなぁ」

そんなこと無いよ。
彼女と別れてから、わりと遊んでる。

「年、当てても怒らん?」

急に方言のようになった。

「怒らないよ」
「二十四」
「ブ―」

どれだけ若く見られんだよ、俺。
もう、三十目前だっつーの。

「じゃ、二十五? 六? 七?」

首を振って行く。

「分かった、二十三だ」

何で、戻って減ってんだよ。
自信たっぷりな顔でこっちを見る男が可笑しくて、吹き出してしまった。


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~ Comment ~

NoTitle

kiri様。
サクラさんは、自分が北見くんをもう好き好き大好きーなのは、わかってるんですよね。
でも、それはあくまでも自分が好きーなだけで、どーこー(恋人とか?げいカプとか?)はならないぞー!と、頑張ってるんですね。
こんなに心掴まれてるのに、頑丈な片想主義(笑)
> それとも、さっさと結婚してくれりゃいい。
まあまあ人任せな片想い(苦笑)
しかし、人任せでは、北見くんも負けませんよー
> 「白か黒か、そのどっちかを決めた方がいい?」
そう言いながらも由利奈ちゃんから言い出すの、待ってるよね?!
似た者同士な2人は恋愛体質ではないのか(爆笑)
今後の心の発展が楽しみです

Re: NoTitle

優様

> サクラさんは、自分が北見くんをもう好き好き大好きーなのは、わかってるんですよね。
いえ、佐倉はまだ認めておりませんよ…。そこが弓槻くんの頑固なとこです!

まだ「惹かれてる」という状態(と思ってます)
でも、片恋で良いのです。←コレは、本当にそうなの。
片想い=報われたい という定義からは外れます(今の処)

ヘテロにはココの気持ち、多分共感出来ないであろう…と思いながら、書いてんですが←コラ

>似た者同士な2人は恋愛体質ではないのか(爆笑)
北見も佐倉も、どっちも…恋愛に関しては、元々そうガツガツタイプじゃないんですよね。
それなりにモテて、そう不自由もしてない人には多い。

それがジワジワと変化していくのが、ポイントなのかな…。と、思って書いてます(笑

有難う御座いました☆

難しいよねぇ

kiri様
由利奈ちゃん、きっと良い子なんだと思う。北見くんの金銭的な負担を考えてるし。何でも男性に出させる女じゃないし。だだ失敗なのは交際する時に「養子に来てくれる」かを確認しなかった事だね。残念。北見くんの気持ちは「我儘でも、ちゃんと話せば素直に謝ってくれる。そういう処が、好きだった。……過去形にしている自分に、苦い思いが走る。」だわ。もう、無理だと思う。佐倉氏との穏やかて心休まる空間と時間を知ってしまったし、仕事以外でも2人の共通の話として風太くんがいてるし。由利奈ちゃんが印籠渡すのを待つだけかな?それは北見くんがずるいんじゃなくて、由利奈ちゃんが吹っ切れるチャンスだと思う。早く次の養子候補を探した方が幸せだよ。今日は由利奈ちゃんについて語ってみました(笑)

NoTitle

なんやとー?まだ、惹かれてる だけ。 やと???
それは、頑固というより、正確な状況認識が出来てないだけなんでは?
あ、したくない。のが近い???

そうかー。片想いではなく、『片恋』。。。。
ーーーー、そーゆー題名のヒットソング、ありましたよね?!
かの、人気バンド CCに (⌒▽⌒)
kiriさん!これで、CCが出て来ても、お話に違和感はありませんよっ!
北見兄かて仕事ミキサーなんやし。
どっちの人?ライブ得意?スタジオレコーディング得意?
どっちでも、いいよっ!

てか、kiriさん。これで、片恋 の歌詞をまた載せてくれるんですね?!
そろそろ、一曲全部の歌詞、書いてもらってもいいよっ♡
お待ちしておりますぅ ヘ( ̄ー ̄)ノニヤリズムッ♪

Re: 難しいよねぇ

美夕様

由利奈ちゃんは、悪い子じゃないですよ。本当に、普通の女の子です(イマドキの)
特別「出来た彼女」では有りませんけどもw
26歳にもなれば充分に大人ですから…相手の財布事情も分からない子なら、恋愛はまず続かない。
それでも、デート代は北見が大抵出してますけどね。たまには女子も出すゾ!同い年だもん。
本当に計算だけなら、もっと条件の良い相手を最初から選ぶだろうし。

>もう、無理だと思う。佐倉氏との穏やかて心休まる空間と時間を知ってしまったし←笑

最初に婿養子を出したら…引かれるからなぁ…。(身近に居たのでこの婿養子条件は大変
皆が、好きなだけで結婚できないもんね(> <。)
ちゃんと話し合いしましょう…。佐倉さんみたく、結納までイっちゃっうと周りを巻き込むし(汗

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

優様

> なんやとー?まだ、惹かれてる だけ。 やと???←笑

はい、よーく読み返して下さい。
佐倉は、一度だって「好き」だとはハッキリ言っておりませんよ?
周りが心の中をどれだけ覗こうが…。本人は、認めてない。

でもコレ、BLだからよね…。普通のお話なら「惹かれてる」となるんだけど(爆
♂♂の恋愛が前提(というより必須)だからこそ!

まぁ、その内…フフフ

え、歌詞?ンなもの、私が書ける訳ありませんーっ
ドウゾ…お譲りしますよ…陸朗、頑張れ←丸投げ|д゚)

有難う御座いました☆

NoTitle

適齢期は自分で決められる、の? 今の時代。
昔は~ 曰く、
鬼も18 番茶も出ばな(番茶だって一番茶は香りも味もいい)
クリスマスイヴのケーキ(25過ぎたら売れない)
だったもんな・・・。


今は結婚したい時が適齢期。。  羨ましいゾ~~。
とはいえ。
由利奈ちゃんにはここが正念場。 北見 功英という男を動かせるのか。
むむむ・・・。
ちゃんと’好き’なんだけどねェ。 度合いが違ってる事にやっと気付いた功英くん。
決めてしまったからには、はっきりね。


佐倉さんはちょっぴりやさぐれ(笑)。
でも、相手の勘違いに笑けましたっ。少しはお酒に酔えるかな?

Re: NoTitle

ますみ 様

そう、今の時代は適齢期も有る程度は「自分」で決めるようなとこありますねー。

でも、やはり周りが煩く色々言ってくるモノ。
特に一人娘だと、もう本当に大変みたいで…。

この25~30くらいの間が、一番シンドかったって友人は言ってましたw
今は独身の方も増えてますしね。

ヤサグレ…というか、ただ遊びに来て北見を思い出してる佐倉氏。
大人で独身、彼女無し。惹かれてるのは男…。たまにはガス抜きしなさいな…(〃▽〃)

有難う御座いました☆
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