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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 18

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兄からの電話を切って席に戻ると、北見が問いかけるような顔をしていたから笑いながら首を振った。

「兄貴だよ。週末からNYに出張なんだって。で、嫁さんもバリバリのキャリアウーマンってヤツでさ。どっちも週末、仕事」
「へぇ……夫婦で対等に仕事してるんですね」
「それはイイんだよ。ただな……こういう時、俺に頼ってくんの」

眉を上げて首を傾げるから、佐倉が顔をしかめる。

「甥っ子の子守で、俺の週末が潰れる」

はぁぁ……と、テーブルに両肘をついて顔を覆う佐倉に北見が吹き出した。

「子守ですか」
「嫁姑の仲もそう良くなくて、頼み難いんだろうけど。どっちにしても実家は遠いし、俺の方がずっと近いから便利に使われてんだ」
「いつもなんですか?」
「週末はいつもの保育園もやっていないから、たまにな」

佐倉は酒をお代わりして、煙草に火を点ける。

「いきなりテンション、ダダ下がり過ぎでしょ?」
「俺、子守苦手なんだよ」
「託児所は?」
「ダメ。義姉が信用してなくて。病気でも預けに来る人もいるらしくて、移されたんだって。あとTVでやってたろ? 事故があったの」
「あぁ……ニュースで見ました」



近しい間柄で、俺の性癖を知っているのはこの世で兄一人。

結婚が破談になった時、兄貴には本当の理由を言った。

年が五つ離れているせいか、兄は昔から俺に甘い。それを分かっていて、言った。
酒を飲みながらで、つい……もう女とは恋愛出来ないかもしれないと弱音を吐いた。

そして、本気で好きになったのは男だとも。
酔った勢いもあって、寝るのだって男の方が満足できるんだなんてことまで言ってしまった。

兄はその理由を知った上で、親戚や周りに格好悪いと嘆く母を宥め、弟の俺を庇ってくれた。
もちろん、母には俺が男も相手に出来ることは内緒だ。
そんなことを言ったら、卒倒するのは目に見えている。

いつか言う時がくれば言えばいいし、言わないままなら一緒に墓場まで口を噤んでおいてやると言ってくれた。
それにゲイでないのなら、いつか本気になれる女と巡り合う可能性だって無い訳じゃないと。

確かに……そうかもしれない。
楽観的にはなれないけど、兄貴の言う言葉に縋りたい気分だった。

別にそれで子供の面倒を見ろと言ってる訳じゃない。
俺が自分から、何かあったら頼ってくれって言ったから。

だって……嬉しかったんだよ。
俺をありのままで受け入れてくれたことが。
本当に、嬉しかったんだ。

海外出張が多い兄にすれば、向こうではオープンゲイも居て仕事仲間にも居るという。
だから「お前もか」という感じだったけど。

それでも。
俺の肩に乗った錘を、兄が少し引き受けてくれたような気がしたんだ。


「甥っこさん、いくつですか?」
「二歳」
「わ……可愛いけど、大変だ」
「だろ?」

北見も、同じ年ごろの甥っ子や姪っ子が居るそうだ。

「兄弟が多いと、集まるのも大変だな」
「実家で全員になると、もう大変です。両親と祖父母と、兄弟六人だけでパンパン」

佐倉がクスッと笑った。

「もうね、帰る度にこんなに家が小さかったかと思いますよ」
「そりゃ、皆成長したからな。それにお前の家族だったら、皆デカいんだろ?」
「そう!もう、酸欠」

その言い方が実感こもっていて、佐倉は声を出して笑った。

「今は長男と長女だけが結婚してるんですけど、その内全員になったら……家、壊れるかも」
「あはは……っ」

北見がいっぱい居る図を想像してしまって、また笑いが込み上げる。

「そんなに笑うとこですか」

そういう北見の顔も笑っていた。

「……いいな……いいよ、お前。俺、好きだ」

自分でポロリと言った言葉に、一瞬動揺する。
でも、そんな意味じゃない。
家族のイメージが、北見そのものに思えて良いと思ったんだ。

北見も変な意味に取ってはないようで、口元に笑みを浮かべたまま酒を飲んでいた。

ホッとして、笑いすぎて滲んだ涙を拭って佐倉も酒で喉を潤す。

「あ……お前の話が中途半端なままだった」

佐倉が思い出したように言えば、今度は北見が声に出して笑う。

「……いいです。なんだか、ちょっと気持ちが軽くなりました」
「いや、その話するために河岸変えたのに」

北見が微笑んだまま、首を左右に振る。

「実際、この話すると気持ちがどんよりしてくるんですよ。せっかくちょっと晴れたんで、このままがいいな」
「……そうか」
「また、どんよりしたら聞いて下さい」
「お……おぉ、好きなだけ吐き出せ」

北見が目を伏せて、嬉しそうに微笑む。

「そう言ってもらえるだけで、味方って感じがするな……」

感慨深く、ぽぞりと呟く。

―― お前がどっちに転んだって、俺はお前の味方だよ。

俺は、お前に同僚や友情のラインを少しばかり超えた感情を持ってるけどな。

そこまで親しいダチでもないし、付き合いだって知れてる。
月に多くても二回程、仕事のキリが良い時に飯を食ってついでに酒を飲むだけの仲。
仕事が立て込むと、一月以上は飛ぶこともある。

お前よりもっと親しい同僚やダチだって他に居る。
けど……俺は、お前と居る時の空気がとても好きだ。
これを変に弄って壊したくないのが、本当なんだよ。

「俺はお前の味方だ」

佐倉がそう答えると、北見が目線を上げた。

ドキリ……。

「佐倉さんも、甥っ子に困ったら頼って下さい」
「はぁ?」
「俺、小さい子には慣れてるんで。佐倉さんよりは、ずっと」

そう言ってニッと笑う北見。

もっさかった髪も綺麗に整えられ、男前度が各段に上がった顔で。

北見よ……。
お前は、俺にとっては天性のタラシ。

佐倉は心で呟きながら、顔を片手で擦った。

「久々の、丸々の休日だったのに……。思い出させるな」

わざと言って覆った手を離したら、まだそのまま微笑んでる。

「今週は部屋でダラダラしてるんで、分からないことあったら聞いて下さい」
「デートは?」
「向こうも、しばらくは会いたくないそうです」

結婚してくれたら歯止めが効くという思いと、このままもう少し独身同士で気軽な関係で居たいという思い。


時計を見てそろそろ行くかという表情をすれば、北見も時計を確認した。

「ですね。終電ギリよりは、少し早めに」
「行くか」

佐倉が伝票を取ろうとすると、北見が横から取り上げた。

「ここは俺って約束でしょ?」

そう言って、さっさとレジの方へ歩いて行った。


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~ Comment ~

キャー(o≧∇≦)o

kiri様
甥っ子2歳!!!
大好物だぁ~!
お願い佐倉氏。北見くんを頼って。週末一緒にショッピングモールor遊園地or近所の公園で遊ばず。
イャ~ン妄想が妄想が頭を一杯にしていく。子供BL大好き過ぎてもうどうしましょう。北見くん甥っ子2歳のお世話して。彼女の事はこの際忘れて佐倉氏と甥っ子ちゃんとの3人の週末を楽しんで。すみません。はしゃぎすぎました。うふふ、毎日更新楽しみです。

佐倉さんも北見くんにも兄貴という良き理解者がいて頼もしいですね!
友人ではなく兄貴ってところがいいですねぇ。身近なところにゲイやバイセクを理解してる人がいるなんて。だってBLですもん!
佐倉さん、押さえてるつもりでも気持ち「だだ漏れ」ですよ(*≧∀≦*)
早く恋になだれ込んで欲しいものです。

Re: キャー(o≧∇≦)o

美夕 様

> 甥っ子2歳!!!
> 大好物だぁ~!
大好物ですか?腐フフ……ちょこっと出ますよ、小っこいのがww

> お願い佐倉氏。北見くんを頼って。←皆さんの願望ですね…( *´艸`)

その後の諸々の妄想(笑)何処まで行くんだーーww
私も子供BL好きです…。しかし、文字でどれだけ小さいのを描けるのか…難しい(>_<)

さて、佐倉さん…子守頑張って下さいww

有難う御座いました☆

Re: タイトルなし

おみち様

北見次兄は、経験者(片想い)
佐倉兄は「お前もか」ww海外出張が多いために、見慣れてる?

まぁ、今の時代は若い人の方が理解が広がってるそうですので。
偏見は「ダサい」んですってw中年以上の人はまだまだ…だそうですが。

恋もまだまだ先です…(汗)が、今しかないこの2人の空気を楽しんで下さい♪

有難う御座いました☆

NoTitle

男同志では、子供を望むことは出来ないけれど甥っ子やら姪っ子やらいっぱいいたら、それだけで遺伝子の未来は繋がっていく。寂しくなんかないですよね。って言ってもまだまだ二人は付き合ってるわけじゃないけどね(笑)。でもいいじゃないですか?子供は夫婦だけのものではない。この少子高齢化時代、みんなの大切な宝物だからね。一緒に過ごせることがし・あ・わ・せ♡ そして二人の絆も深まること間違いなし!! 北見君。子守のヘルプお願いしま~す。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

うん。

小学生以下の子供って、どうしてあんなに体力あるんだろー。
昭和の主腐、屋内だけでも相手してたら、バテます。。

佐倉兄、海外でお仕事されてるんだ。奥さま・・、お義姉さまもキャリア。
わー、それじゃあ嫁姑、なかなか打ち解けるの難しい。
え? でも昔保母してた所は土曜日最大18時まで預かってたけどナ。
今は事情が違うのか・・。

お兄さんにカムアウトして、理解してもらえて嬉しかった佐倉さん。
それはそれ、これはこれ・・、なんだけど。
振り回されてるんだろうな~~。
北見君も私も、多分同じ事想像してる(笑)。 気の毒な佐倉さんを。

じっとしててくれないし、ジッとしてる時は何かしでかしてる時。
喋るといつまででも喋る。平和なのは昼寝してる時だけで。


その分、仕事で憂さ晴らしするのかも。
ひえ~、翌週の部下さんたちにしわ寄せがーーーっ!♪
営業のドアの外、雷注意報出しておかないと。


けど、こんな愚痴もこぼせる距離。
また一歩、踏み込み。ささーっと逃げ。この♪’365ほのマ/ー/チ♪ 状態がまだ続くんですね。
今回はお二方の想像力を楽しみました。

佐倉さんのヘルプコール、あるかしら・・・。

Re: NoTitle

のあ様

そう、子供は社会の宝(*゚ー゚*)

昔は小さい子見ると「可愛いなぁ」と見てましたが、ここのとこはそれにプラス。
この子たちが日本の未来を支えて行くんだな…とか思ったりします。
それは、祖母が私にたまに言ってた言葉だと思い出して、結構衝撃(笑

さて、佐倉さん。北見くんのお言葉に甘えるのでしょうか?(´艸`*)

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

鍵コメe様

普段は部下を怒鳴りつける、厳しい佐倉さんが…。
チビにどんな目に合うのでしょう…(゚∀゚)
いや、そんな凄いことは無いんですけども、子供は王様ですからねぇ…。
2人兄弟の弟(それも結構、甘やかされ)より、6人兄弟のど真ん中で、荒波潜って来た方が力はある←何の力だ

明日は小っこいのが、登場します(笑

有難う御座いました☆

Re: うん。

ますみ様

そういえば…最近、小さいの見てないな…。
私も、甥っ子に会いたいわー。ちょうど2歳だった頃、見てるだけで目が疲れました…。
可愛いんだけど、ほんと大変ですね。

佐倉兄は、信史のように海外出張がちょこちょこあるようです。
義姉はキャリアを頑張って続けているようですが、これも大変!

わー、ますみさん保母さんだったんですか?
完全保育?とかいう所って、空きがないようですね…。
私の娘の時は土曜は半ドンでした。吉本新喜劇を楽しみに帰ってきてたな…w
今は働くお母さんが多いので、保育も延長とかあるようですが、ココはもう目を瞑って下さい(笑

>北見君も私も、多分同じ事想像してる(笑)
うん、多分想像して思わず手を差し伸べるような言葉が出たんだろうね…。
どう見たって、子守が得意そうに見えないしww
愚痴も聞いてもらってるし、こういう時こそ役に立ちたい的な?

とにかく、佐倉さん…。頑張ってね|д゚)

有難う御座いました☆
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