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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 12

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佐倉が外回りから戻って、社のデスクにつくと高梁が書類を持ってきた。

「鉄鋼スラグか」
「高炉でとの指定です」

佐倉が書類に目を通す。

「コストの件は、宝器ホームに確認取ったか?」
「いえ……今から」
「先に、確認取ってから持って来い!!」
「はい」

高梁が慌てて自分のデスクに戻り、電話をかけ始めた。

ちょっとした確認を怠ると、後で大きなミスに繋がる。
佐倉は仕事に関しては、神経質だった。
それを部下達が煙たがっているのも知っている。

佐倉は名刺を取り出し、会社名と名前と肩書と日付とパソコンに打ち込む。
それを終えてから、電話をかけた。


「リーシング部の向井主任をお願いします」
『少々お待ち下さい』


『はい。お電話代わりました。向井です』

週明けから着工する内装の工事の件での確認を取り合う。
商業ビルの一角でも、とにかく規約が多くて細かな点も指摘され続けた。

年も同じで、肩書も同じ。
合併してから、地方に赴任して戻って来た処だと聞いている。

こっちは営業だから愛想だって出すが、向こうは無表情で何を考えているか詠めない。

「では、月曜日現場の方に顔を出して確認後、連絡をさせて頂きます」
『よろしくお願いします』

電話を切ろうとしたら、名前を呼ばれた。

「はい?」

何か抜けがあったのだろうか。

『Mビルは特に煩いんです。見事に期日に合わせて頂きました』
「もちろん、それが仕事ですから」
『それから申し訳ないんですが。また来週から地方に赴任でしばらく顔を出せないんです』
「あ……そうなんですか」

確か戻ったばかりだったはず。

『引き継ぎの山本を、現場に行かせますので』
「了解しました」
『完成しましたら、私の方も社用で戻った時に拝見します』

遠くからでも、見てるってことか。
わーーかってるよ。このご時世、信用が命だ。

「よろしくお願いします」

電話を切り、ふぅ……と息をつく。

仕事の出来る相手とは言葉の裏を詠む応戦だ。
心を割って話すなんてことは、最初からする訳もない。
ベラベラと喋らない分、ココぞという点だけを的確について来る。

ポーカーフェイスが一番やり難いのだ。

それにしても、向井の言う通りMビルの煩さは噂以上だった。
けど、そこに切りこんで小さな仕事でも取って来なければ、この業界を生き残れない。

*

接待での付き合いの後、クラブを出て電車に乗り込む。

明日は休みだ……。
二駅乗って、沿線を乗り換える。
かなり飲んでフラフラしている自覚はあるから、空いてる座席を見つけて座った。

ちょっと風邪気味だったせいか、いつもより酒が回ってる……。

営業接待も、昔程では無くなったと上司は言う。
元々酒に強い方ではなかったが、強くならないと仕事にはならない。

新人の頃は何度もトイレで吐きながら、戻ってはまた飲んだ。
その内、吐かなくはなったが基本的に酒豪とまで行ける訳もない。
あれは、やはり体質だろう。

あ~……喉乾いた。
水、買ってくれば良かった。

そんなことを思いながら、電車の揺れが心地よくてウトウトとしてしまう。
寝るな……乗り過ごす。

今よりもっと若い頃は、乗り過ごしてしまうことも何度もあった。
電車で折り返せる時は良いのだが、終電間近だとそれも出来ず。
薄給の中から、タクシーを使って帰るのが凄く痛かったよな……。

時計を見ると、十一時半。

今日の向こうの部長……。
話好きだったから午前様も覚悟していたが、電車のある内に帰れたのはついてたな。

眠い……。

ヤバイ……。


「佐倉さん」

声がして顔を上げると、目の前には北見が居た。

え……?


「何でお前が……」
「いや、普通に会社の帰りですけど」

あぁ……そうか。
同じ沿線なんだよ。

「飲んでますね」
「あぁ……接待」

次の駅に着いて、隣の人が空いた横に移ってくれるのが見えた。

隣に北見が座る。
なんだろう……。
それだけで、ホッとしてしまう。

知っている奴が隣にいて、それも北見だ。

眠い……。
俺の方が先に降りるなら、起こしてくれって頼めるのになぁ……。
ウトウトとしながら必死で眠らないようにしても意識が飛び、また起きる。


しばらくしたら、手で頭を持たれた。
北見の手だ……。
そのまま自分の肩に頭を乗せてくれた。

え……。

「ふらふら揺れすぎて、危ない」

そう声がして、佐倉はもう体重をかけてもたれかかる。

「降りる時、起こして」
「いいですよ」

北見の体温が伝わる……。

優しい男の体温が何だか沁みるな……。

佐倉はそのまま意識を飛ばしてしまった。

*

佐倉は体を揺さぶられ、ボーッと目を覚ます。

「着きますよ。次、佐倉さんの降りる駅でしょ?」

耳元で声がして、ハッとする。

「あ……お前、自分の駅は?」
「いいです。あ、降りないと」

立ち上がった北見が、座席に沈み込んでいるような佐倉の両脇に手をやって引っ張った。

「降りなきゃ」

慌てるように言って、体ごと引っ張られるように駅に降りた。

「危なかった……」
「えと……。お前の駅は……」

また同じことを言えば、北見が笑う。

「放って帰れないでしょう。気持ち良さそうに寝てるのに」
「いや、起こせよ」
「起こしましたよ」
「……すまん」

くくっとまた笑って、北見が服の乱れを手で直してくれる。

甘やかされている気になって、胸がキュン……と鳴った。

「あの、タクシー代払うよ」
「いいですよ。三つ向こうなだけだし。まだ折り返しの終電があります」

何でもないことのように言われて、何でそんなに優しいのだと思う。

後輩だから……か。
そうだな。酔っぱらった先輩を放置しては帰れないか。
自分が同じ立場でも、同じことをした。

心では面倒がっても、顔には出さずに。

でも、北見は多分……そんな風に思ってないと感じる。


「それより、帰れますか?」
「え?」
「一人で自分の家へ」
「あ……うん」

こういう時、女だったら……。
帰れないと甘えて、部屋に引きずり込めるのに。
抱き付いて、押し倒して……なんて、な。

そんなバカなことが一瞬だけ浮かんだ。

「悪かったよ。今日晩飯食う暇なくて、隙っぱらで飲んだ。営業マン失格だ」
「佐倉さん、周りにも厳しいけど、自分に一番厳しいですよね。そういうとこ、好きですけど」


好きですけど。
……好きですけど。
…………好きですけど。

そこだけが、酔った頭にリフレイン。

そういう意味じゃないってことは、酔っていたって分かってる。



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~ Comment ~

北見くん!あんた天然のタラシですなぁ。そんなに優しくされたら誰でもぼーっとなっちゃうでしょ。
佐倉くん、酔った勢いで連れ込んじゃえー!
自分が好意を持っている相手の行動はイチイチ深読みしちゃうよね。偶然にしてもフラフラ状態の自分の前に現れるとは。
兄さんのことで男同士もアリだって、身近にもいるんだって認識した北見君の今後の心境の変化に期待しまーす!

分かります。。。

Kiriさま、こんにちは。
仕事に神経質になる。すごく分かります。小さなミスが大きな過失に繋がることもある。
だからこそ仕事での駆引きにも気を配るし、終業後はグッタリ。。。します。
今日はお疲れの佐倉さんがプライベートで見た電車での北見くんとシンクロさせて大人な考えと(笑)とろ火のような燻り具合にキュンキュンしました( 〃▽〃)
あまり展開は予想しないよう次を楽しみにしているのですが、どちらに転んでも(!)佐倉さんは布団の端を噛んで(そんな行動はしなさそうですが(笑))ウダウダしそうですね。
どうなるのでしょうね?ふふふ。。。

NoTitle

こんにちはー

好きですけど。
……好きですけど。
…………好きですけど。

ひゃ~ん( *´艸`)
もうなんだか私もニヤけてしまいます~~

頭もたれかけさせてくれて
ちょっとしたことでも何もかもがうれしー

この辺でやめとこうとか、意識すればする程
気持ちは盛り上がっていくんでしょうねー(^o^)


昨日の崎坂さん、私もカテキョの崎山さんだと咄嗟に思ったのですが
違った(笑)





NoTitle

kiri様。

向井さんは、どうして明良さん以外にはポーカーフェース?←いや、取引先にいきなり素はないから。
やはり、高校時代、女王様な明良さんにだけ甘かったの?(笑)
そして、向井さん。
あなたの周りは、いつの間にか、♂♂カプが集まるのねー。

Re: タイトルなし

おみち様

6人きょうだいの真ん中で、揉まれて育った男ですので。
対応力は、有るんです。でもって、優しいのね…。

佐倉が仕事に対して厳しいのも、実体験。その上で、営業接待の帰りに酔ってる姿見れば…。
放っておけないですよねー。後輩にしたって!遊びで飲んだ訳じゃないのも知ってるし^^
明日もこの続きですよー♪

有難う御座いました☆

Re: 分かります。。。

てらぴぃ 様

仕事の出来る方に共通してるのは、とにかく神経質!!普段は大雑把でも、仕事にはほんと細かい。鬱陶しいなー、煩いなー。って、まだ経験の浅い間は思ったりもしますが(苦笑
ある日分かるんですよね…その意味が。

このお話は、結構電車の描写が出ます♪リーマン=通勤 のイメージが最初に浮かんだので^^
電車通勤の方は、時々周りを見て下さい…。
リーマンの片方が寝こけて…もう片方に寄りかかってる図、あるかな…笑

ジリジリ、ウダウダ、炙り出し…。いつの間にか距離が縮んで行ってます♪

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

ういちろ様

コレ、部下の高梁くんが言っても、リフレインしない(爆
北見だからですよねーーー。

そう。好意のある相手だと、つい探っちゃうもんなんです。。。
心がアゲサゲして、波打ちながら…佐倉くん「ここまで」って何回言うんだろう…(´艸`*)

北見って、ちょい天然。
言葉を口にするのは、言わないと伝わらないのを身をもって知ってる環境で育ったから。
黙ってても分かるだろ…というのでは、6人の中で埋もれて終わりますもんねw

あ。名前似てるもんね。私も一瞬思ったけど、そのままで行きました(;・∀・)←

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

優様

そう。それ、前にもコメントで出てたんですけどw
向井、完全なノンケなのに!周りは♂♂カプが…|д゚)

明良には、甘かったね…向井くん。
でも、明良に厳しいことをハッキリ言える珍しい人。
そんで、明良も向井の言うことはちゃんと耳傾けるんですよね。
この頃の明良って、向井は誰よりも会いたかった人だったんだよね…。(本人、超多忙w)

有難う御座いました☆

NoTitle

kiriさま

>好きですけど。
>……好きですけど。
>…………好きですけど


はい、私もういちろさまと同じ所で、がっつり喰いつきましたよ~(´艸`*)

そう、好きな人に気になる一言を言われちゃうと、それがリフレインするって、ありありですよねっ!!
相手の言葉ひとつで、「もしかして。いやいや、そんなはずはない」とか、自分の中で、期待したいけど違っていたらショックもあるしで、ぐ-るぐるしちゃいます~~~。


いや~ん、佐倉ちゃん可愛いっ←毎日言ってる(´▽`*)
でもって、北見くんの無自覚天然が炸裂---っ!!って、まだそんなにでもないのでしょうが💦
佐倉ちゃんが「ここまで」って気持ちを押さえてるのに、北見くんったら!!!
これからの、北見くんの天然度が、どのくらい上がっていきそうかも楽しみなおばちゃんです💖

kiriさま、進撃関西弁版に喰いついてくださって、ありがとうございます💕

巨人→でっかいおっさん
超大型巨人→めっさでっかいおっさん
戦闘→ぼてぐり
人類→関西人(ルビがじんるい)
ウォールロゼ等→ウォールウメダ、ナンバ、テンノウジ
訓練兵→NSC
憲兵団→新喜劇
ジャン→川藤幸三

もっと他にもあるけれど、こんな感じになってますよ~ww

Re: NoTitle

みゃお様

そう、頭では分かってるんですよね。
さすがに、そういう意味の「好き」じゃないってことは。
でも、好意持ち始めた相手なもんで……リフレイン(笑

そういう意味で「好き」と言われても、実際佐倉くんは困るんですけども。
男と恋愛なんて、積極的にはしたくないだろうし…。

寝ることは出来るんだけど、恋愛はパス!!
どっちかというとゲイ寄りのバイなんですが…、社会的なことは気になる人。

そこが今までのキャラとはちょっと違いますので。
相手を想って、迷惑になりたくないってのも有りますが、自己保身も強いです。
ま、普通はそうですよね…。

大阪弁の進撃。ちょっとネットで見たら…河内弁みたいな感じです(笑
普段、使わないよーってのがいっぱいなんですが、大阪ってこういう感じなんだな…と思いました。

「めっさ」とかより「めっちゃ」の方が使うし。ぼてぐり…って何だ?笑
ジャンが川藤さんて!!で、NSCに吹いたww面白ー♪

有難う御座いました

NoTitle

懐かしの゜見守り隊’に行けばいいのか’けしかけたい(隊)’を新設すればいいのか、微妙なところです~。

佐倉さんの自己保身、やはり過去の手痛い経験もあるのでしょう。
それに社会に身を置いているからデメリットも見えてくる。
北見ぐーるぐるから、他のグールグルに。。

北見君だって、行為が無かったら「服の乱れを手で直す」 なんてしないだろうしね。

ひとまず佐倉さんが家に帰り着けるまで、ですね。
千鳥足なら絶対付いてくだろうな、優しい後輩クンは(と勝手に決定ー)♫

Re: NoTitle

ますみ様

是非、見守り…の方でお願いします(笑
まだ始まったばかりなので、ジーっと見てて下さいw

佐倉自身が、北見と仲良くはしたいんだけど、恋愛したい?って聞かれたらNO!なんですよ。
まぁ、彼女持ちのノンケくん相手だし。
自分だって、いつかは普通の人生を歩みたいとは思ってるだろうしね(半分、諦めつつ
なんせ、同じ会社っていうのがなー。男女でも、躊躇するわ…。

北見は佐倉を好きです。もちろん、まだまだラブには遠いけどww

有難う御座いました☆
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