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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 10

 ←北見と佐倉☆恋になるにはまだ遠い?☆ゆにせら様 →片想いのこじらせ方 11
仕事を終え、営業一課で揃って近所の居酒屋へ行く。

課長の滝下がえらくご機嫌なのは、大口の契約を連続で取れたからだ。
今期の予定予算も、このままだとクリアできる。

「Sビルに入り込めたことによって、鹿島とも縁が出来ますね」
「一時はどうなるかと思ってたけど、今じゃ右肩上がりだからな」

高梁の言葉に、上機嫌なままで課長が答える。

「いえ、あそこは厳しいですから。気を抜いたら、速攻で切られます」

佐倉がシビアに言えば深く頷いた。

業界で「あそこはダメだ」と言われたら、信用はガタ落ちだ。

「鹿島も久しぶりに札を取ったからな」
「えぇ、プレゼンが斬新だったらしいですよ」

新しい大口契約が取れると、とにかく嬉しくて酒が進む。

「いつもこんな酒だったらイイのになぁ」

滝下もビールの泡を口につけて、嬉しそうだ。

予算をクリア出来ないと、次にそれがどっと上乗せのようになって押し寄せてくる。
建築業界のどこもが頭打ち。

営業とは、まず数字で人を見る。
そう……人間性よりも、数字が優先されるのが現実。
その後のアフターも勿論大事だが、とにかく数字だ。


「佐倉、大野との商談はお前に任せる」
「はい」

そりゃそうだろう、俺が取ってきたんだ。

大野建設は昨年合併した会社だ。
元々、商業ビルにたくさんのテナントを抱えていて、リーシング部門では頭一つ抜き出ている。
新しく建設するよりも、リーシングに力を入れながら大きくして行った会社だ。

店舗の撤退と共に、必ず工事が入る。
その度に受注を貰えるかどうかは、これからだ。

商業ビルの工事は規制が厳しい。
全ての水準が高く、ちょっとした内装替えでも厳しくチェックが入るのだ。

その根源は、当然のことながら死人を出さないこと。
火災や地震にそなえて、細心の注意を払わないといけない。

契約が取れたからと言って、始まるのは今からだ。

*

居酒屋を出て、店の前で解散。

佐倉はそのまま駅とは反対方向に向かった。

「主任!!何処行くんですか? 一緒に帰りましょうよ」
少し酔った高梁が後ろから声をかけてくる。

「悪い!会社に忘れ物した」
「え~。俺もついて行きます」
「は? いいって!!お前は帰れ!!」

強く言えば、しょんぼりした顔をしたが構わず手を挙げた。

「お疲れ様です!!」

後から声がしたから、前を向いたまま又手を挙げた。


会社のビルを見上げながら歩くと、やっぱり……電気がついている。

佐倉は携帯を取り出してかけてみた。

『はい、北見です』
「残業中?」
『そうなんですよ』
「何人残ってる?」
『いや、さっき井波が帰ったんで。今は俺だけです』

そうか……。

「腹、減ってない?」
『あ~。でも、キリの良いとこでコンビニに走りますんで』
「了解」
『え?』

北見の声を無視して、電話を切った。

*

警備室の人にも缶コーヒーを差し入れして、そのままシステム課のある階で降りる。

シーンとした空間に電気のついているのは手前のシステム課と、その向こうの設備設計だけだ。

システム課の前に立ち覗くと、居た。

「よう」

声をかけると、ビクッとする北見。

「……ビックリした」

胸を撫で下ろすような仕草をする北見に近づいて、コンビニの袋をひょいと上げて見せる。

「差し入れ」

佐倉の言葉に、北見が首を小さく振って笑みを浮かべる。

「助かります」
「いや、俺の取ってきた仕事だからさ」
「そうですよ。納期、我儘過ぎます」

言葉では怒っていても、表情は笑ってる。

クライアントの我儘はいつの時代にも、どんな仕事にもある。
要は可能か不可能か。

一度我儘を聞いてしまえば、それが後になって悪影響になる場合もある。
その反対に、義理硬く感謝してくれる時もある。

その相手の性質を見極めるくらいにならないと、佐倉は我儘は聞かない。
なぜなら、仕事は独りでするものじゃないからだ。
安請け合いして勝手な約束を取り付ければ、会社に比重がかかる。
出来ない時は、信用問題にも大きく関る。

その駆け引きが出来るかどうかが、営業の腕の見せ所だ。

現にこうやって、顧客の我儘を聞きいれたから北見が遅くまで残っている。

北見は納期を必ず守ってくれる。
仕事だから当たり前……のことを必ず全員がするとは限らないのだ。

「いただきます」

佐倉から受け取ったサンドイッチやらおにぎりやらを、北見がバクバクと食べ始めた。
よほど腹が減っていたのだろう。
その食べっぷりについ見惚れてしまう。

仕事は仕事。
普段なら、こんなことはしない。
皆、それぞれの仕事をこなす。
社会人とはそういうものだと、佐倉は思っている。

営業という仕事がら、社内では色々と揉める。
ハッキリと悪態だって突かれるし、嫌われているのも知っている。

社内で仕事をしている部署と、社外に関わり仕事を持ってくる自分達との相違が生まれるのは何もおかしなことじゃない。

だが、会社の連中の顔色を気にしていたら仕事なんか取れない。
かといって無視をして、クライアントの顔色だけを伺えばどこかで崩壊する。

だから極たまにだが、こうやって差し入れをするのも営業の仕事。

一緒に仕事をして信頼が生まれ、こうして我儘を通せる仲間がいて。
プライベートがどうであれ、自分の中の仕事という大事な部分を担ってくれている。

そして佐倉にとって北見には……それ以上の感情がある。
まだ淡い感情であって、今はそれを愉しんでも居る。

ここらへんで止めておければ、束の間の淡い気持ちで居られる。

結婚を前提にした相手が居るノンケ。

多くは望まない。

望まなければ、ずっとこうして仕事仲間として続いて行く。

第一、俺自身が男と恋愛など出来るなんて思わない。

「は~……。落ち着いた」

お茶をゴクゴクと飲んで、北見が一息ついた。

「まだかかる?」
「そうですね。終電ギリまでやって、残りは明日に」
「そっか。じゃ、俺は帰るわ」
「これ終わったら、ビール一杯ご馳走してください」
「差し入れ持ってきて、それかよ」

佐倉が笑えば、北見も声に出して笑った。

「いや、実際気分転換になりました。納期は、守ります」

今度は真面目な顔になった北見に、佐倉が頷いた。

「じゃ、邪魔しちゃ納期遅れるから」
「お疲れ様です」

後で声が聞こえ、振り返って手を上げる。

エレベーターを待つ間、ときめく自分の胸を押さえた。

ここまでだ……ここまで。
心で呟いてエレベーターに乗り込み、一階を押して背中を壁につけて目を覆った。


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~ Comment ~

今が一番、ほんわかいい時期かな?

kiriさま

>ここまでだ……ここまで。
>ここらへんで止めておければ、束の間の淡い気持ちで居られる。

ひゃああああ~ん、佐倉ちゃんのこの気持ち、すっごく良く分かります~~~( *´艸`)
これ以上自分の気持ちが進んじゃわないように、一生懸命に自分に必死で言い聞かせているのね。
これ以上に気持ちが膨らんで、自分でも押さえが効かなくなったら・・・。それが怖いものね・・・。

でも、ちょっとした触れ合いは欲しいし、北見くんにできる事があればしてあげたい佐倉ちゃんってば--っ!!!
会社に戻って差し入れしちゃって、胃袋を掴みに行っているな?
乙女な佐倉ちゃん、はぁ、可愛い、可愛すぎ~💖
仕事でバリバリな姿もいけてて、ますます好きになりそうです!!

ああ、十代だった頃の自分の気持ちが思い出されてきます~(/ω\)
好きって気持ちは日に日に膨らんでくるけど、自分を言い聞かせて押さえておかないと暴走しそうで怖かったなぁ。
彼女持ちの人で(しかも、モデル並に綺麗でスタイル良くて、大人の女性)、高校生の自分は、サークルで一緒に居れるだけで満足しようって思ってましたね。だって太刀打ちなんてできないし、彼女持ちは最初から対象外だったから・・・。
と思いつつ、2年間の片思いをこじらせた結果・・・・・・・・・・・。
彼が、彼女と別れちゃって告白してくれました~~~❤←これ、当時は驚愕して、信じられなかったですね~。
でも、そのあと数年で別れちゃったですが💦←若気の至りでした・・・
佐倉ちゃんと北見くんは、私のようにはならないでハピエンでね🎶

今日は、その彼とは違う(当たり前!!)旦那との結婚記念日ですっ!!💖(≧▽≦)
起きた時に「16年経ったねぇ~。これからもよろしく('◇')ゞ」と、チューして終わりです💦ww←毎年、特になにもしないので。

kiriさま、魔王の会社名も出てきたので、登場人物がこれからどう増えるかも、楽しみです~。うしし💕
先読みしないで、大人しく待ってます~(≧▽≦)

なんでしょうか^^

kiriさま、いつにもましてドキドキしながらお話読んでます。
いつどこで接触してくるのか笑、楽しみです。

お盆とか夏休みとか関係なく働きづめなので、
kiriさまのお話に潤いいただいています。
感謝感謝です。

Re: 今が一番、ほんわかいい時期かな?

みゃお 様

片想いの切なさ…。
佐倉は、まだ「好き」とまでは行ってないにしろ、じんわりと…キてますねー。

皆さま、それぞれに経験のある方は懐かしんで下さい。

みゃおさんので思い出した。
友人が2つ上の野球部のキャプテンに片想いしてて、よく一緒に眺めるのに付き合わされた…。綺麗な彼女がいましたね。公認カプとして、学校でも皆知っていたし。
当時の2つ違いって、凄く大きくて、大人に見えたな~。
思えば、16歳と18歳なんですけどね。遠い…遠すぎるわ。

もう友人が一喜一憂している姿を「大変だな」と横目で見ていた自分。
当時は醒めた目で見てた(コラ)んですが、今思うと可愛い♪
私自身、初恋の彼が今も永遠ですので、もうそんな純粋な煌めきは過ぎ去ってたなぁ…(;´Д`)
今も友人にとっては、きっと煌めきの一ページだろうと思います。

結婚記念日、おめでとうございます!
ココに来る皆さまは、ほんと仲良しな御夫婦さんが多い♥

有難う御座いました☆

Re: なんでしょうか^^

chippen 様

書きながら、地味だ地味だ…と思ってたんですが。
意外と楽しんで下さってる方もいて、喜んでる書き手です。

ほんと、ゆっくりにしか進みませんがよろしくお願いしますねー。

お盆も頑張ってお仕事!少しでも潤いになれたら……♥

有難う御座いました☆

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NoTitle

後から声がしたから、前を向いたまま又手を挙げた。

後で声が聞こえ、振り返って手を上げる。 ・・・この、差(笑)。

部下とチームの違いもさることながら、これは絶っ対好意の大きさだよねー。だって佐倉さんきっと高梁クンには話してないよ、自分のプライベートなんて。

仕事は一人で出来ないしやれない。
そのことも解ってくる年代。そして人と繋がり信頼できる間柄になるのが大切なんだってことも。

親近感や信頼を得るには、会ってる時間より会う回数なんですって。
佐倉さん、無意識に実行??
北見君、感情表現ゆたかです。だからまた見たくなっちゃう。 ンフ❤

そして・・・。        あぁ、楽しみーっっ!


Re: NoTitle

鍵コメs様

お久しぶりです^^

今回も読んでくれてるんですねー。
そう「お疲れ様」の後の、佐倉の態度の違い(笑

>男も性の対象だけど恋愛対象と見てない佐倉ちゃんと
>男はどっちの対象でもない北見くん

はい。そんな2人がどうやって…ラブへとなっていくのか!!
めっちゃゆっくりです…(スイマセン)
でも、炙り出しのように…進みますので♪よろしくですー。

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

ますみ様

そうです…。佐倉くん、態度違い過ぎるよ?
部下が見てたら、泣くよ…。

隠してるつもりでも、結構表に出てしまう佐倉さんなのですww

ですね。仕事仲間に、そう易々とプラベを話したりはしない。
だからこそ、北見は嬉しかったんだとも思います。
特に男って、そういうことあんまり言わないし。

北見も警戒解くと、もう両手拡げるタイプのようですw
自分の周りにはいないタイプの佐倉さんを、テリトリーの近い場所に…フフ。

有難う御座いました☆

しまったーー!

後でゆっくり・・、と思っていたら寝落ち.。ガ――ン!!


せっかくkiri様が’鹿島’の名前を出してくださったのに~~ッ(ショック)。。
違うかもしれないけどそういう事に(強引。笑)!
ええもう、自社ビルまで行きましたよ。 外壁スリスリしてきましたとも。

「あそこはダメだ」 ・・・。 亨が過去言われて事でしたっけ。
あのあと文字通り血を吐きながら這いあがって来た。 今は心からの笑顔も見られるけど。
こちらは雲が多くて月が見られなかったです。  残念。
あ、アンケ、また行かないとっ。


この頃は、冬澪、まだ就活中かな?

Re: しまったーー!

ますみ様

鹿島の息子、やはり業界でも会社を立て直したことは知れ渡ってますね。
勿論、鹿島父も社員も一丸となって頑張った結果ですが。

一度失った信用を、取り戻すべく…タヌキの爺さんたちに頭を下げ続け+キッチリとした仕事
鹿島は厳しいと、この佐倉さんも認める仕事っぷり。
だからこっちも切られないように、気を抜かずヤル!ってことですね。

この頃は冬澪は、まだ就活に入ってるか…その前くらいかな?

有難う御座いました☆
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