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片想いのこじらせ方

片想いのこじらせ方 5

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休日に、北見は由利奈(ユリナ)との待ち合わせ場所へと電車に乗り込む。

一緒に映画を観て、食事をする予定だ。
デートの後は家まで送るが、独り暮らしを始めてからは月に一度程度は泊まる。

仕事がずっと立て込んでいて、会うのも久しぶりだ。

待ち合わせのオープンカフェに付けば、ワンピースを着た由利奈が雑誌を読んで待っていた。

「ごめん、待たせた?」
「ううん」

付き合ってそろそろ一年と数か月。
友人に人数合わせとかで連れて行かれた合コンで、帰りに連絡先を聞かれメールのやり取り。
友達付き合いからスタートして、告白されて始まった。

アイスコーヒーを頼んで由利奈を見ればまだ雑誌を読んでいるから、北見も携帯と取り出してネットで映画の時間を検索していた。

「ごめんね。これ、中途半端だったから」
雑誌を閉じて、由利奈が鞄にしまった。

「いいよ。映画の時間まで後、小一時間あるけどどうする?」
「じゃ、映画館の傍の雑貨屋さんに行ってみる。あそこ可愛いのたくさんあるのよね」

*

雑貨屋に入ったのが映画の開演の三十分前。
由利奈は必死になって見ているが、北見は所在なく由利奈の傍に突っ立ているだけだ。

「ね、見てこれ? 可愛い~」

何を見ても「可愛い」と声を上げて見せてくるが、北見には何が可愛いのかがよく分からない。
適当に相槌を打ちながら時計を見ると、もう開演の五分前になってしまった。

「由利奈、もう映画始まるよ」
「えー。もうちょっと……」

しつこく物色しているが、終わってから見ればいいのにとは言わない。
こういう時に文句を言えば倍になって返って来るか、喧嘩した時に「あの時は……」と始まるからだ。

喧嘩自体、由利奈が勝手に怒ってるような気がしないでもないが。

小さな雑貨店で図体のデカい男が所在無げに突っ立てることにやっと気づき、夢中になっている由利奈の傍から離れた。
店の外でボーっと繁華街の人波を眺めていると、名前を呼ばれる。

「功英!! コレ、やっぱり可愛い」

由利奈が手招きして、猫の形をした小ぶりなポーチを手に持って見せる。

「欲しいの?」
北見が聞けば、ニッコリとしてコクンと頷く。

ポケットから財布を取り出すと由利奈がレジに持って行く。
いつのまにか同じデザインのペンやハンカチや……何だか色んなモノが一緒にカゴに入っていた。

会計を済ませ、映画館に向かう。

「もう、始まってるよ」
「うん、別にいい」

もう良い席がなかったが、とりあえずチケットを買って指定された席へ向かった。

***

休日に実家に久しぶりに顔を出した帰りに電車に乗り込むと、向こうの車両に北見が見えた。
背が高いから頭がニョッキリと出ていて、すぐに分かる。

声をかけてやろうと歩き出した時、その隣に女がいるのが見えた。

あ……彼女とデートか。

声をかけ難く、結局は隣の車両からチラチラと北見を見る。

前の席の人が立ち上がって空いた席に彼女を座らせ、その前に立っている北見。

男だなぁ……と、当たり前のことを思う。
まぁ、自分も普通にしていたことだけど。

彼女が雑誌を読みながら時々北見に向かって顔を上げて話しかけているのを、優しい顔で聞いている横顔。

優しいんだな……お前。
つり革につかまって立っているだけなのに、佐倉には北見の優しさがジンワリと伝わってくるようだった。

俺は、多分……彼女にあんな顔してやれなかったと思う。

バイセクシャルって、どっちも愛せていい……なんてゲイには言われるけど。

そんなイイモノでもないんだよ。
それに俺は……本気で好きになった相手は、男だった。
完全なる片想いだったけど。


電車が北見の駅に近づく。

佐倉が見ていると、電車が止まったタイミングで北見が彼女の手を引いて電車を降りたのが見えた。

ドキッ……。

胸に来るのは、何なのだろう。

自然と手を引く北見の行動に、胸がときめいてしまった。

別にそう大したことをした訳じゃない。
ただ手を引いて一緒に電車を降りただけのことなのに。

俺は……あんな風にしたことが無い。
いつも彼女の先を歩いて、振り返ることもしなかった。

佐倉は扉が閉まった後も、北見の姿を走る電車の中から追う。

彼女と手を繋いで、一緒にホームを歩く北見を……振り返ってまで見ていた。

今から部屋に一緒に行ってSEX……するんだろうな。

俺も、してた。
仕事が多忙だから、会うのは月に一度か多くても二度。
その時は、ちゃんと彼氏としての役目を果たしていた。

いや、役目とか言ってるからダメになったんだ。

そんなのは相手を好きで大切な存在なら、自然と湧き上がってくるものだろう。

なんか、ダメダメだな……俺。

佐倉は北見の自然に接する姿に、男としてのコンプレックスを刺激されたようになってしまう。
自分が気負って女と付き合ってたことを、思い知らされるような気分だ。

今日、母親に結婚がダメになったことで延々と小言を言われた処だから、自己嫌悪に拍車がかかる。
忙しくて滅多に実家に帰るなんてこともないから、ここぞとばかりに。

母は結婚が何故ダメになったのかが、今も納得出来ていない。

結婚を破談にされて、何故平気な顔をしているのだとか。
男としてのプライドが無いのかとまでブツブツと言われ……。
少し険悪になった状態で、弾みで「もう結婚はしない」と言った時の母の顔。
父が窘めてくれたから、それ以上喧嘩にはならずに済んだけど。

来年には三十歳。
色々と決めていかなきゃいけないのだとの小言で、今ちょっと落ちてるんだよな。

けど、不思議と悲壮感は無いんだ。
世間一般と逸れた処で、それなりに上手くやっていく自信だってある。

結婚がダメになったことで、今もトラウマを引きづっているのは事実だ。
男としての自信を喪失したような状態の時に、母からの追い打ち。
これから先も女をちゃんと愛せないだろうという、恐れる気持ち……というのか。

北見の自然な姿を見たから、かな。

親との軋轢は、結構堪える。

佐倉は電車の窓ガラスに映る自分と目が合って、片手で顔を擦る。

なに暗い顔してんだ。

顔を上げて、もう一度自分の顔を見る。

それで、いい。
普通に生きてりゃ、誰だって落ちたり上がったりだ。
年中無休で元気でなどいられない。

頑張れ……弓槻。
落ちても、また上がればいい。
お前には仕事がある。

自分に向かって、そう心で呟いてみた。


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~ Comment ~

NoTitle

頑張れ。佐倉くん。胸がズキッときてしまいますね。北見くんだって、彼女との付き合いが本当にうまくいっているかと尋ねられれば、そうでもないかもよ。人間ってみんなそうですよね。他人の芝生は青く見えるっていうだけで、他の人が良いように思えてしまうんですよね。でも、そこそれぞれの事情があって、決してみんなが、いつもいつも幸せで、満ち足りている訳ではないんですよね。北見君の彼女・・・。そうです。大抵こんな感じが多いのかも女子って。男子の興味と女子の興味って全然違う事よくあります。だから私も、女性同士でショッピングする事が多いんでしょうね。気楽ですもの。佐倉くんと北見くんとの関係がどのようにして、近くなっていくのか楽しみです。ハイ本日も私の脳内は、妄想動画が順調に動いております(笑)。ありがとうございます。

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Re: NoTitle

のあ様

母親に、小言を言われた帰りに遭遇しちゃったからね…。
男が普通に彼女に接する優しさ。自分は出来ていたのかと、今更のように振り返ってみる。
何かが終わってから「何がダメだったのか」と、つい考える時がありますもん。

北見くんと彼女は、極普通のカップルです(笑)何処にでもいる、普通の彼氏と彼女。
彼は、優しいんですよ。というか、優しくしようとしてない自然体。
気負ってないというか…。そういう所が、佐倉くんにはちゃんと見えたんでしょうね。
その優しさにドキッとしちゃったけど(´艸`*)
彼氏としての北見を見ちゃったねー。仕事以外の面にも触れた…。どうなって行くでしょうかw

有難う御座いました☆

Re: ああ。

鍵コメj様

あはは。やっぱりw
普通の女の子を書いても、BLでは嫌がられるんですよね(笑)えぇ、分かってて書いてます(コラ
嫌がられるので普段はあまり書かないんですが。今回はあえて…本当に、普通の女の子の姿を書きました!

デートして、その間にかかるお金を出してあげる。
多分、今の同年代の子に聞いたら「え、普通でしょ?」って言うw
男は女の子にとにかく、甘い!(勿論、そういう人ばかりではないので一般論)
北見くんは、それが嫌だとも思ってないし、無理もしてない。ここが大事なところです…。
佐倉くんがそれを感じた。自然体の北見くんを…♥(//∇//)

>はあ、サクラちゃん…ツボだわ←笑

さ、どうなるんでしょう…。また彼女は出ますのでムカムカ!させちゃうかもですが、よろしくですww

有難う御座いました☆
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