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片想いのこじらせ方

序章

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プレゼンの会議が終わり自分の課に戻る時に、向こうから一際背の高い男が書類を眺めながら歩いて来た。

危ないなぁ……。
自分のデスクに着いてから目を通せよ。

心で呟きながら何となく見ていると、その男が顔を上げた。


わ……。


トクン……と、胸の鼓動が一つ。


佐倉は目を離せなくて、見つめながら歩く。


視線を感じたのか、その男がこっちを見た。
一瞬だけ目が合ったが、佐倉の方が先に逸らす。

そういう意味で見てしまった自分に、後ろ暗くて。

数秒後にすれ違い、佐倉は数歩だけ歩いてそれとなく振り返る。

男はまた書類に目を落とし、すれ違う人と軽くぶつかった。

ほら、見ろ。

フッと笑みを零し、佐倉はポケットに忍ばせたはずの煙草をチラリと確認する。
デスクに戻る前に、一服して行こう。
今日はこのまま社外には出ない。

佐倉は廊下の端にある喫煙ルームへと入って行った。


「お、佐倉」

先に居たのは、同期の土居だ。
同じ営業に配属されているが、一課と二課に分かれている。
特に親しい訳じゃないし、どっちかというと煙たい存在だ。

「プレゼン、どうだった?」
「なんとか」
「入った時からホープだもんな。そろそろエースに格上げか?」
「勝手に言ってろ」

土居は希望していた開発部ではなく、営業部に配属されたことを今も不満に思っているせいか、顔を見ると何かと愚痴ってくる。

「入社四年目で、もうプレゼンでの発言力ある。俺なんか、その場にも出ないってのに」

それは、お前が営業が嫌だと思いながら仕事をしてるからだろう……とは言わず、佐倉は苦笑いして煙草に火を点けた。

「仕事もプライベートも順調。……ったく、羨ましいね」
「やけに突っかかるな」

煙を吐きながら言えば、肩を竦めた。
また上から営業成績のことで、嫌味でも言われたんだろう。

「お前は営業が天職だよな」
「どうだろ」

仕事は好きだ。
営業部は会社の花形でもある。
そこに配属されて、張り切らずにいられようか。

「俺らみたいなフツメンより、お前みたいな見た目の方が得だよ」

始まった……。

「別にモデル級でもあるまいし。見た目だけで仕事なんか取れるか」

外見で仕事を取ってると思われるのは、どうしても聞き流せない。
そこまで抜き出てる訳でもないのに、何かに理由をみつけようとするな。

佐倉が静かに土居を見つめ、煙を吐き出す。

「……そうだな。すまん。お前に当たってどうすんだ」

片手で髪をワシワシと掻き、煙草を消し立ち上がる。
そのままニッと無理して笑みを作って喫煙室を出て行った。


俺達は、まだ二十五。

新卒で入ってから石の上にも三年……が、過ぎた。
同期ももう、半分近くに減っている。

最初の年にポロポロと辞め、ちょうど三年が経った春先にいっぺんに三人が辞めた。

苦痛を感じてまで続けることに意味があるのか。
辞めると、根性が足りないということなのか。
決心して、違う世界に踏み入れてみようか。
いや、やっぱりもう少し……。
いや、まだ今なら他で力を試せる。

グルグルと考え、それぞれに決断を決める節目という年だったのか。

生憎……。
俺は仕事に関しては、今はただ前を向いて頑張れる。

恋愛と仕事のどっちを取るかと、お決まりの言葉を投げかけられたら……何一つ迷いなく、仕事と答えるだろう。
実際、それで別れたこともある。

自分はそこまで出来るとは思ってはいない。
ストレスも当然あるし、怒鳴られもするし、落ち込むことも多い。

けど、仕事は「好き」だと言葉に出来る。
必死になって前を向いてぶつかっていける。
押したり引いたり、相手をその気にさせるための努力だって惜しまなくていい。
それで結果を導き出せるのなら。

佐倉は煙草を吸い、壁に頭を付けてもたれかかり、上に向かって煙を吐く。

けど……この先。

恋愛という面で満たされることがあるのだろうか。

……なんてな。

いつもはそう考えないことが過る原因も、分かってる。

最近付き合い始めた彼女が居るのに。
その彼女が傷つくようなことを思う自分が居るが、自己嫌悪まではいかない。

毎度のことだからだ。

好きは好き。
好意があるからこそ、彼氏と彼女となる。
そこの部分は、ちゃんとあるのだ。

彼女を大切にして、優しくして……。
デートをして、食事をして、抱いて。
一緒に過ごす時間を積み重ねて行けば、年齢的にもいずれ結婚へと流れて行くだろう。

頑張って仕事をして、家族を守る。
俺は男で、それが未来の展望だ。

……大丈夫だ。


そう思った時に、さっきすれ違った背の高い眼鏡をまた思い出す。


特別、人目を引くような容姿でもない。
心臓が鳴ったのは、自分のトラウマとも言うべき見た目だからだろう。

はは……っ

久しぶりに、胸がトクン……っと鳴った。

そんなのは、大学時代にあったっきりだ。

あれ、しんどかったなぁ……。
思い出して、胸がチリチリと痛くなる。

でも、見てる時間は嬉しかったんだよ。
そこに居るだけで……胸がときめいた。

片想いは、手を伸ばさなければ続くのだ。


男と恋愛が出来るとは思えない。
したい訳でも無い。

あいつは多分、新人だ。
それも多分、違うフロアの違う課。

関わることも、きっと少ないはず。

どんな奴かも知らない。
たまたま見た目に、胸が鳴っただけ。

だから……大丈夫だ。

佐倉は煙草を消し、片手で目を覆って、目が合った一瞬のあの男の残像を振り払うかのように首を振ってみた。



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