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恋のカタマリ

恋のカタマリ-126

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ベッドの軋む音で、拓篤は目が覚める。
ウトウトして眠ってしまったのだと、ベッドから降りる水埜を見て思う。

……俺。
水埜さんに縋ったんだっけ。

水埜の服まで捲って脱がせて、肌をくっつけたがった。
直接肌を感じたかったんだ。

抜いてもらって、自己嫌悪に陥る処か……。
どこかスッキリとしている。

「起こした?」
「いえ。……すいませんでした」
「今日の君は謝ってばかりだ」

水埜がベッドに戻ってきて、腰掛ける。

「寝なさい。今は何も考えなくていい」

水埜に髪を撫でられて、拓篤は素直に目を閉じる。

「おやすみ」

そう声がして、部屋を出て行く足音がした。

拓篤は疲れて……また、そのまま眠りに入り込んで行った。

その眠りの淵で、堂本は連絡をくれたのだろうかと過りながら。

*

次の日、目が覚めたのは朝の十時を回った頃。

どうりでカーテンから漏れる陽の入りが、いつもと違うはずだ。

スッキリとした目覚めに、寝ぼけながらも驚く。
朝まで一度も目が覚めなかったし、こんな時間まで寝入ってた自分に。

慌てて起き上がってリビングに出ると、水埜がコーヒーを飲んでいた。

「おはよう」
「おはようございます。すいません、寝坊して」
「日本に居る今はいいよ」

水埜は嫌味を言うタイプではない。
その代り、その言葉はストレートで辛辣だ。

「向こうに行ったら、自分の勉強もしなきゃいけないんだから。寝る時間無いくらい忙しくなるからね」
「はい」

いつもの水埜に昨日のアレは夢かとも思いたいが、現実なのは自分がよく分かっている。

「あの……昨日は」
「昨日は、何?」

水埜が拓篤を見つめる目は、何を考えているのか分からない。

「すいませんでし……」
「また謝ってばかりだね。あれは、心の中に溜まったモノを吐き出しただけだ。でも、二度と無いよ」

言葉を遮られ、キッパリとした顔で水埜に言われた。

「はい」
「僕に何かの同意を求めても無駄だよ。あれに意味があるかどうかは、君の問題」

意味があるかどうかは、俺の問題……。

「さすがの僕でも、君の弱りように放っておけなかった。それだけだ」

拓篤は俯いて、昨日の小夜子との電話を切った後の自分を思い出す。

「何があったのかなんて、僕は聞かないよ。前に、無駄はないって言ったよね?大事なのは、これから先のこと」

水埜の言葉に、拓篤は何故か救われる。

実際、水埜の手に触れられて排出しただけの行為。
たった数回で達して、意識を飛ばしてしまった……。

「拓篤。向こうじゃ、闘いなんだ。センチメンタルな気持ちなんか、今は必要ない」
「はい」
「闘う時は集中しなきゃ、負けるよ。弱い自分は棄てなさい」

弱い自分を棄てる……。

俺は、強くならなきゃいけない。

「水埜さん。一言だけ」
「何?」
「温めて頂いて、ありがとうございました。もう二度と、あんな風に弱ったりしないと約束します」

拓篤は姿勢を正して頭を深く下げ、シャワーを浴びにバスルームへと向かった。

*

堂本は長野に到着して、すぐに現地の県警に顔を出す。
連絡をしておいたので、既に担当の赤石が資料を用意してくれていた。

「かなり田舎の方まであります」

移動だけで時間は要するだろう。
リストは二十二件もあるのだ。

都筑は几帳面な性格で細かく記載していたが、それで全てかどうかは分からない。
会社自体潰れてしまっていて元の雇い主に聞き込みをしても、営業マンが各自担当していたという。
当時の資料も全て破棄されていて、これでみつからなければ、また振り出しだ。

どこで当たるか、当たらないか。
長野だけでなく、あっちこっちの地方に散らばっているのだから。

堂本達は、地図を頼りにナビ付きの車を借りて周ることになった。
ちょうど地元でも時を同じくして事件が起き、人員が足りない。

都筑の写真を渡し、少ない人員でも商店街を中心に聞き込みをしてもらう手配だけをして、芦田と共に車に乗り込んだ。

*

シャワーを浴びて、部屋に戻ってすぐに携帯を見る。

あ……。やっぱり。
昨日、連絡くれてたんだ。
着信が夜と、朝に一件ずつ。
そしてメールは、電話の後にくれたようだ。

拓篤は堂本のメールを、開ける。

――出張だ。また、連絡する。

出張……。
何処へ出張かは書いてない。
仕事柄、いつも用心深いから。

……事件で走り回ってるんだ。

後数日で、日本から旅立つのに。

そして昨日の水埜の件が頭を巡る。


けどさ……堂本さん。
俺、気持ちは今静かなんだ。

昨日までのドロドロしたモノが、鎮まってる。

これって、あんたへの罪悪感へ移行しただけなのかな?
でも、そこまで悪いとも思えないんだ。

多分、そこに恋愛感情の欠片さえ無かったからなのか。
キスも何も無く、触れた水埜の手は、あまりにも事務的だった。
ただ俺を眠らせるためだけにした行為。



……俺、どうしちゃったんだろ?

あんたが恋しくて堪らないのに。
その熱情さえも、今は欲しくない。

恋心まで、俺は放り出したい気持ちなんだよ。

あんたの強い腕の中に縋りたくない。

だって、そうだろ?
こんな状態で、どうやって仕事と遠距離恋愛を両立できるって言うんだ。

震えて弱って、仕事の上の上司にまで縋って。
自分の弱さが露呈して、それに狼狽えて、開き直った。

仕事をしてるあんたが好きなのに。
向こうで弱気になったら、俺はまたあんたの代わりを探すのか?

甘える心を手にしたままじゃ、闘えない。

九歳の年の開きが、今は重い。
足元にも及ばない自分が……恥ずかしくて堪らない。

仕方ないよ、なんて慰めなんか欲しくない。

あんたに……男としての、嫉妬までしてるんだ。

きっと今も、事件を追いかけている。
顔を上げて、毅然とした態度で。

俺も、そうなりたい。

甘やかされて縋ってるだけじゃ、ダメだ。


俺は、押し潰される訳にはいかない。

千を優に超える血の重みで、眠れない日々。

この血は、俺で途絶えるだろうという確信めいた気持ち……。

それでも、揺れる気持ちが何処かにある。

いいのか、と。

守る物モノを失った俺には、甘える心を凍結する必要がある。
冷たい氷を溶かすには、俺が自己を確立しないといけない。

でなきゃ、俺は多治見拓篤でいられなくなる。


強くならなきゃいけない。


どうしても。
何をしてでも。




堂本さん……好きだよ。


でも……今の俺には、恋愛よりも大事なことなんだ。


何もかも、ゼロにして。


俺はフランスへ行きたい。


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ヲトナの階段のーぼるー♪

おお、拓篤の目が覚めた!
目が覚めたというより、憑き物が落ちて気持ちが安定したような。
本人も開き直ったと言ってますが、そうなのかな。
ま、開き直りってのは図太く強いですから、そのまま一年間、海外で自分磨きをしてくればいいさ!
本人次第だけどね。

堂本も水埜も、人生の礎を築いている大人。
そんな人達にいつまでも甘えて縋ってる自分は何なのだと、
これでは子供のままじゃないかと、一晩寝て思ったのかな。
や、以前から感じてはいただろうね。
海外行って一皮剥けて、そんな姿を堂本に見せることができたらいいね~。

堂本も気にはしていても仕事に集中する姿は立派です。
男っぷりがイイですね。拓篤の目標そのものだ。^^

しかし水埜さんてばドライだなー。
後始末(w)、ご苦労さんっした。∠(`・ω・´)


~本日の『流涎の館』会報

●BLコミックが実写に!? みたいな写真
http://clinicallymoi.tumblr.com/post/113151913200
●神々しい…!>http://urx.nu/isxa
CG処理だよな~?
●ある意味危ない写真?>://allthoseboys.tumblr.com/post/113754997699
泡との組み合わせが連想(妄想?)次第で危ないモノにww

●そうか、アレって…>https://twitter.com/zerojirou/status/577101356000903169
●笑った>https://twitter.com/yuuuhnt2/status/577139382404038656
● ( д) ゚ ゚>https://twitter.com/sakamobi/status/577257104538513408
いろんな意味でショックなんだけど…


では、明日~┏○))ペコ

Re: タイトルなし

鍵コメY様

はじめまして~~!ようこそです♪
なのに、誤爆…・・・(・∀・i)タラー・・・

改稿中に、どこか押してしまったようです。
すいません!知らせて下さって、助かりました!!

また、お顔出して下さいね。
有難う御座いました☆

Re: ヲトナの階段のーぼるー♪

トーヤ様

やっぱり、睡眠は大事ね←

目覚め、スッキリ。それと共に、思考もまともになってきました。

水埜との件で「やってはいけない」ことをした自分。
この普通の精神状態なら「絶対にしない」ことをしたことが大きな気付きともなったかな?
自己嫌悪やら、罪悪感やら、色んなモノもたくさん押し寄せてきたけど。

そんなことよりも、目の前にはフランスでの闘いが待ってるという現実。

>堂本も水埜も、人生の礎を築いている大人
二人を見て、自分との違いを見せつけられたでしょうね。

「まだ若いんだから」なんて言葉は、ただの慰めでしょう。
追いつきたい!!と思うなら、頑張ろう…拓篤くん。

全てをクリアにして、フランスに向かう気持ちでいます。

>●神々しい…!←どこかの美術館にある絵画みたい
>●ある意味危ない写真?←温泉の隼のオチリみたい(勇次が噛……自重
>● ( д) ゚ ゚←冷めてるな…今時は。昭和男子達の幼少時代、こんな子達いたのかな…w

有難う御座いました☆

割れ鍋に/綴じ蓋

こんにちは。kiriさま、ファミリーのみなさま。

拓篤くん、ギアが入ったようですね~
恋愛よりもお仕事モード・・ん?どっかで聞いたような・・
まるで近平くんみたいじゃぁないかね?

お仕事優先で、恋愛をダメにしてきた堂本氏。
そんな彼と続けていくためには当然、求められるものがあるわけですよね。
相手にやっと合わせるんじゃなくて、自然にそうできる無理のない関係。

飛び立とうとする愛しいヒトを笑って見送りながら、後でひとり・・寂しいと呟くのが堂本と言う漢。両手をポッケに突っ込み、飛行機を見上げるその後ろ姿が浮かんでキター!勝手に妄想・・ん?・・これもどっかで見たな・・

お互い、相手の成長を妨げないのが大人の恋愛ですが、男女ならばなかなかこうはいかないもんです。
♪わがままはオトコの罪~それを許さないのはオンナの罪~古っ

谷崎/泉著「しあわせに/できる」を思い出しました。古い小説で全20巻を超えるシリーズですが、ワーカホリック的なリーマン同士のお話。
仕事に追われ、すれ違いや葛藤を経て固く結ばれていくんですよね~
好きだったなぁ・・BLドリーム!また読んでみよっと。

年齢・経験の差は歴然の近平と拓篤。でもいつか並んで歩けるように、成長を見守るのは近平の役目。拓篤は今できることを着実に。お互いを信じて。

それではまたきます~
今日の一言・・・4月からは忙しくなるので今のうちに楽しもう!







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あ。

鳴門の渦巻きが急に止まって、巻き込まれて今にも海にのみ込まれそうだった小舟がプカプカ海上に浮いてる・・。

というのが今の拓篤くんの心境?

とにかく熱を吐き出せた。今回は体に心が連動して、のようでしたがすっきりできましたネ。
そうそう、後悔はあとでやること。 あとの後悔、先に立たず。でも、知りえた事は大切に・・・。
師匠・水埜さんの言う通り心機一転です。

それが出来る環境がある。その先にきっとみんなと再会できる場所もある、はず。
学生の本分が勉強であるように、いまの拓篤くんには仕事のスキルを手に入れることが人生の土台作り何だと思う。
大成はもう基礎ができつつある。追いつけ・追い越せーー!


戻ってきたら堂本ったんに惚れ直してもらおう!!


あ・・、パスポートと見比べられて怪しまれないくらいには、顔の痣がうすくなってると・・。 ですよね? kiri様。

Re: 割れ鍋に/綴じ蓋

ミケリ様

> 拓篤くん、ギアが入ったようですね~
やっと、入りました!!まるで、ショック療法のような水埜との件。
とことん落ち込んでしまえば、後は何かの切っ掛けで這い上がるのみですから。

何でも良かった…と言えば、語弊がありますけど。
水埜だから縋ったのは、やはり大人の部分がそうさせたのね。無意識にでもw
思春期だったら、大成に行ってたかもしれない。

>相手にやっと合わせるんじゃなくて、自然にそうできる無理のない関係。
うん、まさにソレだと思います。

普通に見れば年が離れてるんだから、そういうもんだよ…と思うんですけど。
拓篤はもう、自分の根っこの部分が覆されるくらいのショックを受けて弱り切った後なので。
堂本や、水埜の前に、あまりにも小さい自分が堪らなく嫌なんでしょう。

そう…これが、男同士。恋愛してても、どこかでライバル的な処が出てくる。

>谷崎/泉著「しあわせに/できる」←コレね、BLにハマり出した頃、大人買いしたんですよー。
でも、1巻だけ読んで後はもうBLコミックの方に走っちゃった…。
挿絵が好きだな~と思って買ったのに。今も、実家の押入れにあるかもしれない…。

>でもいつか並んで歩けるように、成長を見守るのは近平の役目←仰る通り!

有難う御座いました☆

Re: NoTitle

鍵コメe様

バタバタしてる間に、お話がこんなことに…ww
イラストも見ました?素敵だったですか~♪(私が描いた訳ではないけど)
あ、大成が隼に見えましたね?最初は隼をイメージしながら、伝えておりましたものw

>大好きな堂本さんの存在も今は拓篤の心を揺さぶっちゃうから。
>平静な起伏のない心でいたいんだろうなぁと思うと。。あぁ拓篤ぁ。
そう、ほんとソレ。後ろ髪引かれたままで闘えないでしょ?

>拓篤は今フランスに行くという絶好のチャンスがある。
これは拓篤の人生にとっても、初めての大きなチャンスなんです。
絶対に成長して帰ってこないと…。そのために「0」にするつもり。

若さって、残酷ね…。

ま、堂本はそんなもの、とっくに覚悟してる男ですけど。
それでも、辛いし寂しいよね(>_<)

有難う御座いました☆

Re: あ。

ますみ様

水埜と堂本への、ちょっとした罪悪感も、水埜のピシャリとした言葉で目が覚めた。

「君の問題」と突き放されてしまえば、本当にその通りなんですよね。
どんな同情の言葉よりも、この一言が拓篤には刺さったと思います。

弱さを棄てないと、異国の地では闘えない。同行するのが、これまた水埜ww
洋平に甘やかされる明良とは、違うww明良はしっかり土台出来上がった後だしね。
水埜は社長であり、甘えてなどいられない人ですから。

>いまの拓篤くんには仕事のスキルを手に入れることが人生の土台作り何だと思う。
そうです。恋愛よりも大事なモノが出来てしまった。
どっちも上手く出来るなら問題はないのですが…。

37が再会して遠恋になりましたよね。
今の拓篤と同じ年ですが、あっちは大波超えた後で、期限も決まっていた…。

うん、出発時には痣もほぼ薄まってると思います…。
青たんは黒になったら、あとは結構早いらしいので。

有難う御座いました☆
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