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恋のカタマリ

恋のカタマリ-107

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「いらっしゃいませ」
「あの、この花なんですけど……」

店に入るなり、足元にある花を指さす男。

「はい」
傍に行って、花の説明をしているとその間も顔ばかりみられる。

不審に思って目を真っ直ぐに合わせた。

「やっぱり、どこか違いますね」
「……は?」

一瞬にして血の気が下がる。

「肌の色や、瞳の黒さだけじゃなくて。整ってるというだけでもない。何だろう……凛としてる雰囲気が、やっぱり違うんだな」

こいつ……。
花を口実に店に入ってきただけだ。

「お花を購入する気が無いのでしたら……」
「いえ、買います。その束になってるので」

大して興味もなさそうに、花の寿命が短くなった特売の籠の中を指さした。

買うと言ってる限りは、客だ。

「どれにされますか?」
「あ、どれでも」
「色は?」
「じゃ、その黄色いので」
「承知致しました」

花をカウンターに持って行って包んでいると当然のように傍に来る。

「いやいや……本当に、お美しい。男にしておくのが勿体ない程だ」
「女性に間違われたことはありませんけど」
「えぇ、あなたはやはりお父さんに似てる」
「四百九十円になります」

男がポケットから千円札を取り出した。
受け取ると、ポケットの中から小銭を出し、勿体ぶった様子で一つずつカウンターに置く。

「本当に、綺麗だ。その短髪は、わざと?」

一体どういう意味だと、拓篤が眉をしかめる。

「いや、前に見た時はもう少し伸びてたから」

大学の卒業式前に、髪を切った。
いつから、俺を見ていた?

……怖い。

拓篤は慄く心を隠して顔を上げ、花を持って出口へと向かった。

「有難う御座います」

後をついてきた男が、花束を受け取る前に名刺を渡された。

週刊ディスクローズの棚秦満(タナハタミツル)。

やっぱり……最初に家に来た男だ。
今まで姿を見せなかったのは、情報を嗅ぎまわってたってことか。

「お兄さんがこれだけなら、妹さんもさぞかしでしょうね」

妹のことを言われて、拓篤の顔色が変わったのを棚秦が見逃す訳もない。

もう見たんじゃないのか?
そう言いたい気持ちを抑え、冷めた目で棚秦を見据える。

「妹は、もう多治見ではありませんので。関係ない」
「そうはいかないでしょう?お父さんの娘には違いない」
「仕事中ですので、お帰り下さい」

このまま相手にしていたら、ズカズカと入り込まれてしまう。
店の中で、個人的なことを根掘り葉掘り聞かれて答える義務もない。

けど、妹に害が及ぶのだけは避けたい。
ただでさえ、母が体調を崩しているのだ。

「少し、お話を伺いたいだけですよ」
「お帰り下さい」

「拓篤」

向こうから声がしたと思ったら、水埜が控室から出てきた。

「どした?」
「いえ……」

「逃げられると、追いかけたくなる。それが人間のサガですし、俺達の仕事なんですよ」

棚秦が小さく言って、そのまま店から離れて行った。

水埜が傍に来て、拓篤の持っている名刺を覗く。

「何……また、記者?」

眉根を寄せ訝しむ顔に、隠してはおけないと思う。

「はい」

拓篤が答えれば、水埜が名刺を持ってパソコンの前に行く。

検索をかけて調べてるようだ。

「……良くないよ、拓篤」
「ですよね」
「ろくな雑誌じゃない分、信憑性が薄いのは読む方も分かってるとは思うけど」

拓篤が頷く。
それでもどんなことを書かれるのか、怖い……。

「読む方は興味があれば、買う。一回の記事程度で済めばヨシと思うくらいの覚悟だけしておきなさい」
「はい」

*

拓篤は、仕事中に花のチェックをしながら考える。

……何でビクビク怖がって、逃げなきゃならないのか?
そういう風に思ってしまえば、そこからは腹立ちしか出てこない。

一回で済めばヨシ。

水埜が言った言葉で思うのは、一回は記事になるだろうということだ。
張り込んだり、調べたり。まるで刑事のようなことをしている奴が、手持無沙汰で引っ込む訳がない。

一度でもちゃんと対応すれば、気が済むだろうか?

放置しておけば、どこまで穿られるかわからない。

妹や母、水埜。
ここはもう隠しようがないのだから、降参だ。

ただ、堂本のことだけは絶対に知られないようにしなければいけない。
例え自分が女であっても、同じように思うはずだ。
刑事が絡んでるなんて、更に話が膨らみそうだ。

そう思いながら葉を拾い集めゴミを捨てに行くと、その前にあの棚秦が居た。

しつこい……。
けど、逃げるのも癪に障る。

拓篤は睨むでもなく、棚秦を見つめた。

高宮に対峙した自分を思い出して。
あの頃の俺はまだ子供だった。
怖さの意味もよく分からない、ガキだった。

けど、向き合ったことは俺なりのプライドだった。

「あと一時間で仕事終わりますんで。そこの喫茶店で待ってて下さい」

拓篤が言えば棚秦がペコリと頭を下げ、何も言わず喫茶店の方へ向かって行った。

*

仕事が終わって拓篤が喫茶店に入ると、棚秦が待っていた。

「すいませんね」
口ではそういうが、悪いとは思っていない顔だ。

この男の、仕事……だから。

それを読む人がいるから、成り立つ仕事。

テーブルの上の灰皿には吸いがらがたくさんある。
たった一時間程度なのに、ジリジリと待っていたのだろう。

コーヒーが運ばれてきてから、拓篤はまっすぐに棚秦に向き直った。

「一度だけです」
「えぇ」

軽い返事に、拓篤が眉をしかめる。

「母が、体調を崩しました」
「それは、それは……」

頭を下げ、悪いと思ってるような顔をしてみせるが心からじゃないと思えた。

「じゃ、連絡は取ってるってことですよね」
不意打ちのような言葉に、拓篤が一瞬詰まった。

「週刊誌が来たと連絡がありました。その時に、どういう加減か聞いただけです。僕は、親を心配することも出来ないのでしょうか?」
「それは、そうですね。気を悪くされたなら申し訳ない……が、それは僕じゃなく、同業者です」

言葉の全部が言い慣れていて、何処にも誠意を感じない。
相手の出方次第によって、対応するマニュアルでもあるのだろうとしか思えない。

「僕にとっては、同じです」
「少しお話をしたいだけですって。そんな怖い顔しないで」

馴れ馴れしい口調が、勘に触る。

「この度は、お父さんお気の毒でし……」
「そういう言葉を、あなたから聞きたくない」

拓篤がピシャリと言えば、少し呆気に取られてから肩をすくめる。

「さすが……気位がお高い。世が世なら、僕なんか近づくことも出来ないんですからね」

バカだろ……今は平成だ。

心で悪態を付いて、拓篤がコーヒーを口にした。


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~ Comment ~

守る

kiri様。

たくちゃん。一人で家族もどうもっちゃんも守るんですね。

男だなぁ。かっこいい…(///ω///)♪

「ナックルズ」ってスキャンダル本がコンビニのエロ本近くに売ってますが、とんでもない事がいつも書いてあって私にとってはお笑い本です。

恥ずかしくなかったらぜひ、チラ見してください。

┬┴┬┴┤_・) ジィ…

たっ、たた拓っくん!
用心じゃ!用心じゃよ!
(なんか"くもじぃ"化しとるww)

しかし、拓篤を見る記者の目がなんかヤらしい。(¬ω¬*)
いやらしい記事になりそうな…ムム…


~本日の『流涎の館』会報

●QAF
いちゃこら~♪>http://queerasfcuk.tumblr.com/post/109985912533
身長差あるんですね~。○○差好きなのでちょっと萌えた♪
http://queerasfcuk.tumblr.com/post/110996188917
●ちゅー2選
舌が艶々>http://lecorpsdeshommes.tumblr.com/post/74874972619
美形は迫力が増すな~>http://lovehouse.tumblr.com/post/111538135316/lovehouse-lovehouse
●ツイで拾ってきたー
合コン用語>https://twitter.com/Uz_mal/status/570101715166306305
   合コン逝かなくても常にアラフォーな私ですよ(笑


では、明日~┏○))ペコ

Re: 守る

潤様

拓篤くん、まだ経験も浅いし(なんせ学生)キャパも狭い。

なのに、一人で頑張ろうとするから…。
でも、堂本は一番頼りたくない展開だよね、コレ。

え…エロ本コーナー(?)に行く勇気…を!?
よし!!コンビニに行った時は、さりげなくそのタイトルを探してみますww
(探すだけかいっ(・。・;)

有難う御座いました☆

Re: ┬┴┬┴┤_・) ジィ…

トーヤ様

危ないよね…。拓篤って、当たりが強い子だもの。
それも上から目線で行くから(苦笑

攻撃してきたら、どれだけ怯んだって向かって行っちゃうんだよね…。
堂本に前も言われてたのを、思い出せー!!

あ、ブライとジャス。
この2人は「本当に付き合ってる?ね?」
って虚構と現実の区別がつかなくなるくらいラブなシーン多いです(///ω///)

関ヶ原にめちゃウケましたww

有難う御座いました☆

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冷えピタ。

拓篤くんのおでこにはってあげたい。
冷静に~、冷静に。
あ、ブン屋さんにはお尻にホッカイロね(さっさと帰ってほしい)。

でもせっかく絡んできたけど、拓篤の八つ当たり相手にされるかもしれな・・、
いや、倍返しされるか?
なんかネチネチしつこい、揚げ足取りの上司みたい。 や~~ね!

人として、何かを忘れた、かもしれないブン屋さん(もう、浩太の’アレ’と同じで名前呼びたくない。。kiri様、ごめんなさい)、あまり刺激しない方がいいよ。


水埜さん、冷静。 この冷静さが拓篤の心の波立ちを少し静めてくれそう。
誰も頼れない、孤軍奮闘状態。心の支え、堂本さんと今は遠くても背中に護ってるお母さまと妹のためにも戦い抜いて、勝ち抜いて。

必ず未来は明るいから。

Re: NoTitle

鍵コメe様

ちょっとぶりに、酔っ払e様ですねww

「興味」を持ってしまえば、他に余程のネタが無い限り、食いつく。
何処まで書くかは、記者の手に委ねられてますからね。
水埜の言うように、一度書かれることはもう覚悟しないと…。
100%の嘘ではなく10を100にするようなことや、言葉の一部分だけをクローズアップさせる。
裁判になった時の逃げ道のノウハウも、知ってるでしょうからね…。

>これを乗り越えなければ拓篤の成長はないと。。。。。。
はい。こういう時、乙女展開だと堂本が助けに!なんでしょうけど。
生憎、私の頭にはソレはありません(汗
基本的に、余程でないと「出来るだけ自分でどーにかしろ」と思うので…。
大成の時も、拓篤自身が切り抜けた後に「拓篤を返せ」でしたもんね(笑
時には、乙女展開も書かないといけないな~と思うので書きますよ(*゚ー゚*)
内野の浩太救出…とか♥

有難う御座いました☆

Re: 冷えピタ。

ますみ様

今日は、まだ大丈夫かな…。
1時間の考える時間があったので。構えて向かったしね。
向こうは拓篤の佇まいに、まず感嘆していたしw

記者は怒らせる。なぜかというと、その方が本音が出るから?
カッとなった時に出る言葉とかね…。

記者は、この方だけではないということも注意しないと。
「僕にとっては同じです」と、一括りにしちゃってる…。

水埜はいつも冷静。拓篤が言ってたもんね…怒ったことがないって。
間違ったことをしたら、ジッと顔を見るだけ。
これから水埜の登場回数も増えて行きますw

有難う御座いました☆
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